追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と喪失

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夢を見ていた。

ぶくぶくと、あわあわと。
泡のように漂う意識の中で、誰かと会話をしていた気がする。

言葉ではなかった。
音ではなかった。
けれど確かに、そこに"想い"はあった。

――さようなら。

そんな意味の意思だったと。
そんな気がする。



目が覚めた。

冷たい石床の感触。
漂う鉄の匂い。

「……ミナ?」

震える声で、名前を呼ぶ。

返事はなかった。

周囲には、無数の魔物たちが倒れていた。
どれも、完全に沈黙している。
それも異常なほど静かに、まるで魂ごと消えてしまったかのように。

「……ミナ?」

もう一度呼ぶ。
それでも、返事はない。

焦りに駆られ、起き上がり自分の身体を確認する。
さっきまで刻まれていたはずの傷が、すべて。
痕跡すら消えていた。

悪い予感がする。
凄く悪い予感がする。

ミナは、意識を失う直前に何と言っていただろう。

「だいじょうぶだよ」

何が大丈夫なのだろう。
何をもって大丈夫と言ったのだろう。

(……ミナ……)

あの子は、人間の身体を模倣できると言っていた。
触れる事で姿を変えることが出来ると。

ならば。

血に触れたなら、血そのものになれるということではないのか。

「……なんで、そんな……」

無意識のまま、傍らに落ちていた剣を拾う。
その重さは、さっきまでとは比べ物にならないほど軽かった。
傷は癒え、力は戻った。
だが。

もっと大切なものを、私は失ってしまった。

きっと。
多分。
永遠に。

「ミナ」

静かに呟き、剣を握りしめた。

身体は生きている。
だが、心の奥にぽっかりと、埋めようのない空洞が開いていた。

それでも。

進まなければならない。

ミナが守ったこの命で、私は、まだ果たすべき戦いがある。

ふらりと立ち上がり、
血塗られた通路の奥へ、一歩を踏み出した。
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