追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と強者の生き方

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一方その頃。

凪咲はひとり、ダンジョンの深層を歩いていた。

抜き身の剣を手に。
静かに、何の気配も発さず、ただ進む。

その歩みは、水の底を踏むように、重く、緩やかだった。

彼女とすれ違う魔物たちは。
誰一人気づく間もなく、斬られ、崩れ落ちていった。

もはや構えも、鞘もない。
居合術は使わない。
ただ斬る。
本能のまま、剣のまま。

その顔には、何の表情も浮かんでいなかった。
まるで、かつて師匠の腕を斬った、あの頃の彼女のように。

無垢で、空白で、ただ。
ひとり。

(ひとりになった)

(ひとりになってしまった)

(……いや、違う、ミナと会う前も、私はずっと)

(ひとりだったんだ)

(だから、だいじょうぶ)

(……へいき)

(うん、へいき、だよ)

その言葉は誰にも届かない。
自分自身にも、もう届いていない。
徐々にその内面は、人の心からかけ離れていく。

突如、目の前に異様な影が現れた。

常軌を逸した大きさ。
複雑に捻じれた関節。
目が六つ、腕が八つ。
悪魔。

異界、魔界より現れし存在。
このダンジョンの最深部に、密かにコミュニティを築く異種族。

魔界の物理法則は、この世界とは異なる。
剣は弾かれ、斬撃はねじ曲がる。
肉体を裂いたところで、意味はない。

この世界では、攻撃魔法だけが悪魔に通じる。
だが、それすらも、ここには存在しなかった。

それでも。

「きれるよ」

たった一言。

次の瞬間、悪魔の身体が縦に裂けた。
だが、それでは死なない。
悪魔の肉体は霧のように収束し、両手を広げて自らを癒そうとする。

それを見て、少女は踏み込んだ。

縦に、十回。
横に、十回。

何度も、何度も、音もなく。
衝撃のあまり手にした剣は既に半ばから折れていた。
悪魔は声を上げる間もなく、身体を細切れにされ、四方に散る。

「きれたよ」

凪咲は小さく呟いた。

誰にも届かない声。
誰にも褒められない一撃。

響くのは、剣の風切り音と、自身の呼吸だけ。
静寂のダンジョンに、その足音だけが残る。

そう彼女は、もうひとりだった。
本当の意味でひとりだった。
だから。

居合術を使う必要も、心を抑える理由も、もう、どこにもなかった。
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