『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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仮面を被った人外

吸血鬼が公園で遊んでました……え?!

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最寄り駅についた。夕焼けがきれい。

今日、本当に色んなことがあったけど、空だけはいつもきれいだ。

「蓮お兄さん、佳奈美お姉さん、どうやって僕たちがいた世界にやってきたの。あの、瓦礫の空間に。そこから一裕お兄さんを連れて行ってあげられるかもしれない」

ガコン

一裕が自販機で何かを買ったようだ。自販機の取り出し口からトマトジュースを取り出した。
「圭吾くん」
トマトジュースの蓋をあけながら一裕が圭吾くんに声をかけた。
「こうやってか」
一裕はそうやってトマトジュースを口の周りに塗って見せた。それが妙に似合って見えた。

一裕の口の周りのトマトジュースが数滴地面に滴り落ちた。圭吾くんがトマトジュースの雫を目で追うように視線を落とす。
「ううん、本当の血はもっと苦いにおいがする」
圭吾くんを笑わせるつもりだった一裕は、圭吾くんの真実を述べた言葉に戸惑って、何をすればいいのかも分からないまま、残りのトマトジュースを口の中に流し込んだ。一裕の喉ぼとけが拍動しているように見えた。トイレに行っていた蓮くんが戻ってきて、顔を圭吾くんの耳に近づけた。
「どうや、あいつ。今日のところは家に帰してもよさそうか。それか、もう連れてくか。お前がいたドラゴンの国に」
圭吾くんが顔を上げて一裕がいる方を見る。一裕は全部飲み切らないまま、トマトジュースを数メートル先のゴミ箱に投げた。

ガコン

ゴミ箱の金属部分とぶつかる音が、誰もいない閑静な駅に響く。
「早く、連れて行ってあげないと」
圭吾くんが一裕の後ろ姿に歩み寄る。後ろから手をつなごうとしたのか、一度右手を一裕の左手に近づけたが、そのまま下ろした。
「一裕お兄さん、ついてきて」
圭吾くんが背中を一裕に向けるようにして一裕の前に立った。
「どこに行けばいい」
一裕の問いに答えず、圭吾くんはそのまま歩き出した。
「佳奈美お姉さん、蓮お兄さん、途中まででいいから案内してくれる?」

りこちゃんが後ろから走り寄っていって、圭吾くんと手をつなぐ。蓮くんが先頭に立つ。私が最後尾。その間に、前から順番に圭吾くんとりこちゃん、そして一裕。どこに連れていかれるのか分からない一裕は、不安な面持ちでひたすら蓮くんにどこに連れていくのか尋ねている。蓮くんは何も答えない。蓮くんたち影が一裕に重なり、一裕の影が私に重なる。

あの山まで、あと10分くらい。カラスがギャーギャーと叫ぶように鳴きながら飛んでいく。

「あれ、俺と同じ香りが」

ちょうど私たちがあの公園に差し掛かった時、知らない声が聞こえた。声変わりしたばかりくらいの男の子の声。声の主は中学校と思われる制服姿のまま鉄棒に腰かけていた。髪の毛が少しだけ夕焼けに染まって見える。

「そこにいる人」

声の主は鉄棒に座ったまま、妙に長い人差し指を一裕に向けた。



「吸血鬼だったりしない?」



「なんか、違うところから来た人たちが他にもいるみたいだけど」
謎の少年が鉄棒からひょいッと飛び降りて、足音も立てずに私たちに近づいてくる。
「この子達」
少年が右人差し指で圭吾くんを、左人差し指でりこちゃんを指さす。
「迷子になっちゃったのかな」
蓮くんが圭吾くんとりこちゃんを庇うように二人の前に立った。
「ごめん、君は誰」
「あ、俺?」
少年が蓮くんの首元に顔を近づける。
「うわ、まずそう」
少年が臭いものを嗅いだように蓮くんから顔を背けた。

「ただの吸血鬼だよ」

少年が蓮くんの後ろにいる圭吾くんに目をやる。ちらっとりこちゃんを見て、また圭吾くんに視線を戻す。

「女の子の方は違うみたいだけど、君、女の子の格好をした男の子は、僕と同じ故郷に人間でしょ」

圭吾くんがりこちゃんの手をギュッと握る。さっきからおろおろしている一裕に少年が近づいてくる。

「君は…あれー、おかしいな。この世界の香りに俺と同じ香りも混ざってる。…あ、良いにおいがする」

少年が私に近づいてくる。そして顔を私の首に近づける。私が思わず仰け反ったのと同時に蓮くんが手を伸ばして少年を止める。

「やっぱり、若い女性の香りは格別だね」

「俺は蓮だ。…君は…?」
少年がくるりと背中を向けて、最初にいた鉄棒のところに歩いていく。鉄棒のところまで行くと、逆上がりを途中までやったような状態でブランブランとぶら下がっている。

「通称モスキート。でも、本名はバット」

両足をピンと上に伸ばすと、少年はあと僅かで頭を打ちそうになるその瞬間、クルンと身体を立て直して、地面に立って見せた。最後に少年が鉄棒をぺろりと舐めて見せる。

「鉄の味、俺、大好き」

少年の口から、一裕のものよりもずっと長くて尖った犬歯がキラッと光った。

「なんで、あそこにいるはずの人間が、ここにいるの」
少年が鉄棒に付いた唾液に息をフッと吹きかけて、またこちらに歩いてくる。
「全く同じこと、俺、君に聞きたいんだけど。…名前なんて言うの?」
「圭吾」
「あ、そう」
バットは夕焼け空に向かって叫んだ。
「かーんたん、簡単。それはね」
バットが圭吾くんの方を見る。
「堕とされちゃったから」
「堕とされた?」
バットが蓮くんの前に、体が付くか付かないかのギリギリのところに立つ。そして、ひょいッと身体を横に90度曲げて、蓮くんの背中側にいる圭吾くんの顔を見て、歯茎をわざと見せるようにして笑う。
「君は知ってるでしょ、あの国で、吸血鬼がどんな立ち位置だったか」
圭吾くんがしばらくの間、バットの顔を見つめた。そして首をゆっくりと縦に振った。バットはそれを確認すると、ひょいッと身体を元に戻して住宅街に進んでいく。
「良かったらみんな、今から俺ん家おいでよ。色々おしゃべりしよ?」
バットが軽い足取りで飛び跳ねるように住宅街を歩いていく。
「一裕お兄さんが、吸血鬼になってしまうかもしれないんだ」
圭吾くんがバットの後ろ姿に叫んだ。圭吾くんの語尾だけが、山彦みたいに響き渡った。
「別にいいんじゃないの」
バットが脚を広げてその間から顔を覗かせる。
「だって、俺、普通に人間として暮らしていけてるもんね」
股から顔を覗かせたまま、バットがポケットから何かを取り出した。赤い塊。
「別にね、生きている人間の血じゃなくてもいいのよ、美味しいけどね。これ、代用品。家の冷蔵庫から持ってきた」
バットは赤い塊を少しちぎって、小さい方を股の間から私たちに投げた。一裕がそれを両手でキャッチする。それは、生のブタかなんかのレバーだった。バットが残りの大きい方を、ためらいもなく口に投げ入れた。ただのお菓子を食べているかのような顔で。

「…お邪魔してもいいですか」
バットから10メートルくらい離れたところから、蓮くんが叫んだ。
「どーぞー、こっちー」
バットはまた、ぴょんぴょんと跳ねるような足取りで住宅街を歩いていく。蓮くんが真っ先についていく。しばらく立ち止まっていた圭吾くんは、重たそうに足を前に進ませた。

「なんか、俺、もう、わかんなくなってきたよ」
一裕が色々愚痴をこぼしながら、蓮くんにぴたりとくっつくように歩いていく。私のスカートの裾が引っ張られた。りこちゃんが私を見上げている。
「あのお兄ちゃん、誰だろ」
「…私もわかんない」

私達二人は、しばらく男子陣の後ろ姿を見守っていた。
「行こか」
私はりこちゃんの手を引いて歩き出した。

バサッバサッ

大きなコウモリが私たちの上を飛んで行った。
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