『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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壮大な迷子探し

迷子探しを狼男が手伝ってくれるそうです〜私の好きな人が、カマキリになりました?!〜

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バットと彗星さんはお互いに叫び疲れたようでぐったりしている。ウルフがパチンと指を鳴らした。
「あれ…寝てた?」
一裕がもぞもぞと起き上がる。彗星さんの姿を見ると、一瞬誰か忘れたような顔をしたが、すぐに翠ちゃーんと抱きついてイチャイチャし始めた。
「かず…ひろ…さん…」
彗星さんは再び人間の姿に戻った。
彗星さん自身がそれに困惑していた。だけど、すぐに悟ったような表情で私たちに言った。
「私もあなた方の仲間入りですわ。よろしくお願いいたしますわね」
自分に抱きつく一裕の頭を愛おしそうに撫でる。
「どういうことや」
バットが食卓に置かれたマグロの刺身を数切れかまとめて口に放り込んだ。
「地球上で、我々が自分の意志に関わらず、地球人の姿になること。それは、宇宙人失格ということですの。地球人を…愛してしまったから…」

彗星さんにじゃれつく一裕に、吸血鬼の面影はなかった。
「かず」
一裕が蓮くんのほうを振り返る。彼女がいて羨ましいだろと言わんばかりに彗星さんを抱き寄せた。
「かず、お前。口を開けろ」
「なんで」
「なんでもいい」
一裕は訳も分からないまま口を開けた。一裕の犬歯は依然として吸血鬼のようだった。

「吸血鬼って、地球人に分類されるのか?」
蓮くんが隣でバクバクといくら丼を口にかきこむバットとウルフに尋ねる。
「わっかんねー」
口をパンパンに膨らませたバットが答える。
「言っておくけど、やたらと地球と宇宙を切り分けようとしているの、お前らだけだからな」
そう言ってバットはイチゴを口に放り込んだ。
「地球に住んでいたら、地球人ということなのか」
蓮くんはめげずに尋ねる。
「無教養な俺らに聞いても意味ねーぞ」
「いや、お前らの話を聞いてて思ったけど、」
ウルフが緑茶を一口飲んだ。
「お前ら曰く、いくつも世界があるなら、いくつも宇宙があってもおかしくないと思うんだ」
バットがスイカの種をお皿の中に吐き出す。
「ウルフ、それってどう意味だよ」
バットがもう一つ種を吐き出した。

「楓が、迷子になっている可能性はないか?自分って、どの地球に生まれれば良いんだっだっけって…」

「翠ちゃーん、俺、ほんっと大好き」
一裕は私たちに構わず、彗星さんを愛でる。
「私…」
一裕を赤ちゃんみたいにあやしながら、彗星さんだけは私たちの会話に耳を澄ませていた。
「宇宙に友達がおりますの。宇宙との交信能力は失われていないはず。だから、私の方でも友人の力を借りて、私の息子が迷子になっていないか、探してくれるように頼みますわ」
蓮くんがハッと思い出したように息を飲んだ。

ブブ

蓮くんからメール。

『俺たちが読んだ小説の冒頭部分に出てきた、サガシテっていう言葉、楓のものかもしれない』

一裕は最後まで彗星さんを愛でていた。


蓮くんの家に着いたころには、いつの間にかもう、夜になっていた。
「力がみなぎるぜー!」
ワシとコウモリが暗い空を飛び回る。

キキッ

ウルフの泣き声が閑静な夜空を貫いた。

蓮くんがベッドにどさっと背中から飛び込んだ。
「頭がごちゃごちゃやわ、俺」
圭吾くんとりこちゃんは私の寝室で寝かせてある。一裕は、名残惜しそうにスマホの待ち受け画面に映る彗星さんを眺めたまま寝てしまった。

満月が夜空を照らしている。バットが夜空をヒャッホーイとはしゃぎながら飛び回っていた。ウルフは電柱にぶら下がってそんなバットの様子をぼんやりと眺めていた。

ウルフの目が光った。こっちに飛んでくる。

「おい、お前ら、変な奴来たぞ」

ガサガサ

蓮くんの家から10メートルくらい先には雑木林がある。何かがこっちに向かってくる。

バサバサッ

カラスが逃げるように雑木林から飛んでいく。バットもウルフの隣にやってきた。
「俺の知らない香りがする」
バットが蓮くんのベットの上で人間の姿に戻った。蓮くんが下敷きになる。
「うげっ」
「あ、ごめん」
バットは蓮くんの寝室から出て、雑木林のある方の窓を開けた。

その時。



窓の向こうには人間の姿をした狼がいた。

その近くには圭吾くんたちが寝ている。

食べられる…!

「ああ、いや、怖がらないで」
狼が窓から入ってきた。蓮くんとウルフが私の前に立つ。
「彗星に呼ばれたんだよ、お前らの手助けをしてやれって」
狼の銀色の髪が滑らかに月の光を反射していた。緑色の瞳。狼はスルスルッと人間の姿に戻った。
「血が騒いじゃった。悪い。俺は彗星の友人で、あそこからやってきた」
狼だった男は、夜空に光るたった一つの緑色の星を指さした。あんな星、あったっけ。
「あんた…誰だ」
蓮くんが私を壁の方にやって、自分はその前に腕を広げて立っていた。
「ああ、悪いな。名前はないんだ」
「やっやこしいなあ、もう!」
バットが男の前でワシに戻って見せた。
「あら、吸血鬼ではないか」
「俺はバット、俺の後ろにいるのがウルフ」
ウルフもコウモリの姿に戻った。男がポリポリと頭を搔いている。
「ええっとな、ワシがバットで?コウモリがウルフで?」
「お前に名前やるよ」
ウルフが男の周りを一周した。
「お前は今日からエメラルドだ。お前の目の色に因んでな」
「…ウルフ、お前の名前と交換した方がしっくり来ないか?」
「うるせー」
ウルフが羽でエメラルドの顔を叩いた。

エメラルドが私たちに害を与えない存在だと判断したのか、蓮くんはエメラルドを部屋に招き入れた。蓮くんのベッドの横で、彗星さんの名前を寝言でニヤニヤしながら寝ている一裕がいる。
「ここで話をするつもりか、蓮」
ウルフが人間に戻った。一裕が起きないようにチラチラと様子を伺いながらバットが蓮くんの耳に口を近づけた。
「吸血鬼って寝ている間も周囲の音が聞こえるんだ」
蓮くんは立ち上がった。どこか、話せる別の場所を探しているのだろう。
「トイレか庭の納屋くらいしかないですけど、全員そこに入る訳がないし…」
エメラルドが狼の姿に戻った。さっきは人の形をしていたけれど、今回は本当の狼のようだ。
「俺の巣はどうだ?近くの雑木林ならさすがに聞こえないだろ」
バットとウルフがそれぞれワシとコウモリの姿に戻る。
「あれ、でもお前、あの星から来たんじゃなかったか」
ワシがくちばしで夜空に浮かぶ緑の星を指した。
「別荘だよ、別荘」
エメラルドが入ってきた窓から飛び降りた。
「おいでよ」
庭からエメラルドが私たちを呼んでいる。
「でも、子供達は」
圭吾くんとりこちゃんを、いくら一裕がいるとはいえ、置いていくわけにはいかない。
「俺たちが連れてく」
振り向くと、大きくなったワシとコウモリの姿が。
「背中に乗せたら大丈夫」
バットがりこちゃんを、ウルフが圭吾くんを、起きないようにそっと背中に乗せた。子供達は深く眠っている。
「さあ、行こう」
エメラルドを先頭に私たちは雑木林に向かう。月の光がエメラルドの全身を照らして、なんだかエメラルドが神々しく見える。バットとウルフは子供達を落とさないようにゆっくりと慎重に飛んでいく。
「あ、」
私たちが雑木林に手前まで来た時、バットが何かを見つけた。
「行き手に警察がいる」

隠れられる場所はない。いまさら引き返すことも出来ない。このまま見つかったら絶対に補導されるし、エメラルドももしかしたら保健所に連れていかれるかも。

「あれを使え、ウルフ」
「分かってる」
エメラルドの口元がニヤッと笑った。どうやら警察はいなくなったようだ。慌ただしくどこかへ去っていくのが向こうからかすかに聞こえた。
「ウルフ、何をしたの?」
雑木林に飛んでいくウルフの背中に私は尋ねた。
「コウモリって超音波が使えるだろ。だから、トランシーバーに影響を与えることが出来るんだ。警察、トランシーバーが壊れたと思って慌てて引き返していった」

「ここだよ」
エメラルドが案内してくれたのは、大きな木。葉っぱが生い茂っている。木の葉の隙間から月の光がエメラルドの背中を照らした。
「入るのか、ここに?」
大きな木は、根っこだけが雷に打たれたみたいに大きく裂けていた。だけど、子どもたちを背中に乗せたバットとウルフ、蓮くんと私、エメラルドの全員が入れそうにない。
「まあ、来いよ」
エメラルドが穴から入っていく。
「蓮くん、エメラルドを信じよう」
私は蓮くんの手を引いて穴に片足を入れた。

グワン

根っこの穴が急に大きくなった。
「うわっ」
気づいたら地面の中で四つん這いになっていた。土のにおいがする。蓮くんが私に覆いかぶさっている。
「佳奈美、ごめん!」
蓮くんが私から離れると、ごつんと鈍い音を立てて土の中に埋まっていた大きな石に頭をぶつけた。
「ああ、やっぱり、人間サイズだと狭すぎたかな」
暗い土の中、エメラルドの瞳が緑色に光っている。
「少し、小さくなってもらうね」
エメラルドがパチッと瞬きをした。

ギュン

エメラルドの巣が一気に広くなった。
「佳奈美、見てみろよ」
蓮くんの戸惑う声がする。
「蓮くん、なに?」
私は蓮くんの声がした方を振り向いた。岩に頭をぶつけないように慎重に、首を回した先に…

カマキリがいる。

は?
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