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日常のひと時
俺の友達が朝から不貞腐れてる件について
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温かくて柔らかな光がカーテン越しに俺の顔を撫でる。本当なら圭吾かりこのどっちかが、俺の腹の上に飛び乗ってくるから朝から死にそうになるんだが、あいつらが戻ってくるまでは自力で起きないと。
ピピ ピピ
俺の眼はまだまだ夜だと勘違いしている。スマホに手を伸ばして、スクリーンの適当なところを触ったらアラームが止まった。
「いてっ」
昨晩までは俺の隣で並んで寝ていたはずの蓮の頭が何故か俺の足の方に会って、右足で俺の顔を蹴り飛ばすような格好。本人はまだまだ夢の中。
佳奈美さんは、眠いのに頑張って夜中の間にスマホを蓮の枕元から取り戻そうとしたのか、蓮の枕の方に手を伸ばした姿でうつ伏せになって寝ている。
峻兄さんは、夜の間中ずっと佳奈美さんと蓮の間で壁の役割を果たしたのか、腕を組んだまま二人の間で仰向けの姿で寝ている。
「ウルフ…」
バットのささやき声が俺の後ろから聞こえた。
「助けてくれ…」
見ると、エメラルドがワシ姿のバットを枕にして寝ている。本来の枕はどうしてか寝室の隅に追いやられてる。
「苦しいけど…動けない」
俺は重たい身体を起き上がらせると、まずは寝室の隅にあるエメラルドの枕を左手に持った。そして右手でエメラルドを起こさないようにそっとエメラルドの頭を持ち上げた。
「バット、今のうちに抜けろ」
バットとエメラルドの間に空間が出来た。
「助かった」
バットがワシ姿のまま起き上がって、エメラルドの枕地獄から脱した。俺は左手に持った枕をエメラルドの頭の下にセットして、そっとエメラルドの頭をそれに乗せた。エメラルドの寝息がする。これにて俺の第一ミッションクリア。
バットは人間に戻って、台所で珍しく朝ごはんの用意をしている。お皿もちゃんと、全員分用意して。俺が洗面所でうがいをしていた時、バットが味噌汁を濾している音がシャカシャカと台所から聞こえてきた。
「バット、お前わざわざ朝までエメラルドの枕にならなくても良かったんじゃないか?」
圭吾とりこが使っていた食器は、乾燥棚に置かれている。太陽の光に反射して、柔らかな白い光を発している。
「エメラルドの奴、夜中に俺の身体を撫でながら、何回も圭吾、圭吾って呼んでた。俺だよって言うのは、少し可哀そうかなって思ってさ」
バットの作った味噌汁は思ったよりも味が薄い。
「味噌が切れかけてた。今日、彗星と一裕がやってくるまでに買い出しに行かないと」
ガチャ…
峻兄さんが寝ぐせを片手で治しながら、台所にやってきた。
「お前ら、もう起きてたんか。朝ごはん、悪かったな」
峻兄さんが寝室に、皆を起こしに戻った。蓮はうがいを済ませて、味噌汁と白米を盛り付けると、俺の隣に腰かけたんだが、今日も若干不機嫌な気がする。
もしかして…?
「蓮、何があった?」
蓮は普段そんなことしないくせに、やたら大きな口を開けて、味噌汁と白米を一緒に食い始めた。
「何でもない。佳奈美のスマホのアラームが鳴り続けても、起きる気配がしなかったから俺が代わりに止めただけだ」
蓮は不機嫌でないふりをしているが、間違いない。
「佳奈美さん」
「ん?」
佳奈美さんは冷蔵庫から取り出したフルーツヨーグルトをデザートに食べている。
「俺、午前中に買い出しに行きたいから一応気温とか見ておいてくれない?サングラスが要るかどうか決めないと」
これは、半分ホントで半分噓。
買い出しには行こうかなと思っているが、俺だってスマホはあるんだから自分ので調べれば良いだけの話。
だけど、嘘も方便さ。
「ごめん、俺のスマホのバッテリーが切れちゃってさ。今充電中なんだ」
これも、半分嘘で半分ホント。
確かに充電中ではあるが、俺はいつも50%を下回った段階で充電しないと気が済まない質の人間だ。
「あ、良いよ。ちょっと待っててね」
佳奈美さん、すまねえな。
俺は佳奈美さんがスマホの画面を点ける瞬間、佳奈美さんの横に立って待ち受け画像を確認してやった。
俺、こいつ知ってるわ。
なんかの化粧品のコマーシャルに出てたやつだ。昨晩は見えにくかったから気が付かなかったけど、こいつ、多少蓮に似ている気もするんだけど。
画面の中のそいつは、ストローの刺さったフラペチーノを飲みながら、俺を見て笑顔を見せている。カッコつけすぎていない、自然な笑顔。男の俺でも良いやつだなって思う。
「これね、彼氏風壁紙って言ってね。他にもね、こんなのとか…」
佳奈美さんは、今日の気温を調べるというミッションを完全に忘れて、俺に色々なスクショで保存したような写真を見せ始めた。蓮、どんな顔をしているんだろう。俺は気になって、顔は佳奈美さんのスマホに向けながら、目を蓮のいるところに向けた。
…蓮、俺をそんなに怖い目で睨まないでくれ。
「佳奈美さん、この人さ、少し蓮に似てないか?」
「うーん、そうかもね。だから好きになっちゃった。…蓮くんには内緒でお願い」
俺は蓮に再び視線を向けたが、味噌汁のお椀で顔が見えなかったのが残念だ。
「おい、エメラルド」
「なんだ」
蓮が空になったお椀を左手に持って、シンクに入れがてら右手でエメラルドの頭部を指さしている。エメラルドは、小さな容器のヨーグルトを最後まで丁寧にスプーンで掬っては食べている。エメラルドの側頭部に、鳥の羽が上手い具合に刺さっている。どこかの先住民族みたいだ。
「ああ、ごめん。それ、俺の」
バットはエメラルドの髪の毛から自分の羽毛を引っこ抜くと、台所の窓を開けて雑木林の方に投げた。
羽は、最初は順調に風に乗って雑木林の方に向かっていったが、運悪く風が途切れて雑木林手前のあぜ道に落ちた。
鳥の羽はただでさえ、子供が一度は手に持ってみたいものの一つ。ましてや、グレーにワイン色の混ざった羽となればなおさらだ。
半袖半ズボンの男子たち3人くらいが向こうから走ってくるのが見える。明らかにバットの羽目当て。
「触るなー!!」
うるせ。
温かくて柔らかな光がカーテン越しに俺の顔を撫でる。本当なら圭吾かりこのどっちかが、俺の腹の上に飛び乗ってくるから朝から死にそうになるんだが、あいつらが戻ってくるまでは自力で起きないと。
ピピ ピピ
俺の眼はまだまだ夜だと勘違いしている。スマホに手を伸ばして、スクリーンの適当なところを触ったらアラームが止まった。
「いてっ」
昨晩までは俺の隣で並んで寝ていたはずの蓮の頭が何故か俺の足の方に会って、右足で俺の顔を蹴り飛ばすような格好。本人はまだまだ夢の中。
佳奈美さんは、眠いのに頑張って夜中の間にスマホを蓮の枕元から取り戻そうとしたのか、蓮の枕の方に手を伸ばした姿でうつ伏せになって寝ている。
峻兄さんは、夜の間中ずっと佳奈美さんと蓮の間で壁の役割を果たしたのか、腕を組んだまま二人の間で仰向けの姿で寝ている。
「ウルフ…」
バットのささやき声が俺の後ろから聞こえた。
「助けてくれ…」
見ると、エメラルドがワシ姿のバットを枕にして寝ている。本来の枕はどうしてか寝室の隅に追いやられてる。
「苦しいけど…動けない」
俺は重たい身体を起き上がらせると、まずは寝室の隅にあるエメラルドの枕を左手に持った。そして右手でエメラルドを起こさないようにそっとエメラルドの頭を持ち上げた。
「バット、今のうちに抜けろ」
バットとエメラルドの間に空間が出来た。
「助かった」
バットがワシ姿のまま起き上がって、エメラルドの枕地獄から脱した。俺は左手に持った枕をエメラルドの頭の下にセットして、そっとエメラルドの頭をそれに乗せた。エメラルドの寝息がする。これにて俺の第一ミッションクリア。
バットは人間に戻って、台所で珍しく朝ごはんの用意をしている。お皿もちゃんと、全員分用意して。俺が洗面所でうがいをしていた時、バットが味噌汁を濾している音がシャカシャカと台所から聞こえてきた。
「バット、お前わざわざ朝までエメラルドの枕にならなくても良かったんじゃないか?」
圭吾とりこが使っていた食器は、乾燥棚に置かれている。太陽の光に反射して、柔らかな白い光を発している。
「エメラルドの奴、夜中に俺の身体を撫でながら、何回も圭吾、圭吾って呼んでた。俺だよって言うのは、少し可哀そうかなって思ってさ」
バットの作った味噌汁は思ったよりも味が薄い。
「味噌が切れかけてた。今日、彗星と一裕がやってくるまでに買い出しに行かないと」
ガチャ…
峻兄さんが寝ぐせを片手で治しながら、台所にやってきた。
「お前ら、もう起きてたんか。朝ごはん、悪かったな」
峻兄さんが寝室に、皆を起こしに戻った。蓮はうがいを済ませて、味噌汁と白米を盛り付けると、俺の隣に腰かけたんだが、今日も若干不機嫌な気がする。
もしかして…?
「蓮、何があった?」
蓮は普段そんなことしないくせに、やたら大きな口を開けて、味噌汁と白米を一緒に食い始めた。
「何でもない。佳奈美のスマホのアラームが鳴り続けても、起きる気配がしなかったから俺が代わりに止めただけだ」
蓮は不機嫌でないふりをしているが、間違いない。
「佳奈美さん」
「ん?」
佳奈美さんは冷蔵庫から取り出したフルーツヨーグルトをデザートに食べている。
「俺、午前中に買い出しに行きたいから一応気温とか見ておいてくれない?サングラスが要るかどうか決めないと」
これは、半分ホントで半分噓。
買い出しには行こうかなと思っているが、俺だってスマホはあるんだから自分ので調べれば良いだけの話。
だけど、嘘も方便さ。
「ごめん、俺のスマホのバッテリーが切れちゃってさ。今充電中なんだ」
これも、半分嘘で半分ホント。
確かに充電中ではあるが、俺はいつも50%を下回った段階で充電しないと気が済まない質の人間だ。
「あ、良いよ。ちょっと待っててね」
佳奈美さん、すまねえな。
俺は佳奈美さんがスマホの画面を点ける瞬間、佳奈美さんの横に立って待ち受け画像を確認してやった。
俺、こいつ知ってるわ。
なんかの化粧品のコマーシャルに出てたやつだ。昨晩は見えにくかったから気が付かなかったけど、こいつ、多少蓮に似ている気もするんだけど。
画面の中のそいつは、ストローの刺さったフラペチーノを飲みながら、俺を見て笑顔を見せている。カッコつけすぎていない、自然な笑顔。男の俺でも良いやつだなって思う。
「これね、彼氏風壁紙って言ってね。他にもね、こんなのとか…」
佳奈美さんは、今日の気温を調べるというミッションを完全に忘れて、俺に色々なスクショで保存したような写真を見せ始めた。蓮、どんな顔をしているんだろう。俺は気になって、顔は佳奈美さんのスマホに向けながら、目を蓮のいるところに向けた。
…蓮、俺をそんなに怖い目で睨まないでくれ。
「佳奈美さん、この人さ、少し蓮に似てないか?」
「うーん、そうかもね。だから好きになっちゃった。…蓮くんには内緒でお願い」
俺は蓮に再び視線を向けたが、味噌汁のお椀で顔が見えなかったのが残念だ。
「おい、エメラルド」
「なんだ」
蓮が空になったお椀を左手に持って、シンクに入れがてら右手でエメラルドの頭部を指さしている。エメラルドは、小さな容器のヨーグルトを最後まで丁寧にスプーンで掬っては食べている。エメラルドの側頭部に、鳥の羽が上手い具合に刺さっている。どこかの先住民族みたいだ。
「ああ、ごめん。それ、俺の」
バットはエメラルドの髪の毛から自分の羽毛を引っこ抜くと、台所の窓を開けて雑木林の方に投げた。
羽は、最初は順調に風に乗って雑木林の方に向かっていったが、運悪く風が途切れて雑木林手前のあぜ道に落ちた。
鳥の羽はただでさえ、子供が一度は手に持ってみたいものの一つ。ましてや、グレーにワイン色の混ざった羽となればなおさらだ。
半袖半ズボンの男子たち3人くらいが向こうから走ってくるのが見える。明らかにバットの羽目当て。
「触るなー!!」
うるせ。
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