『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

文字の大きさ
79 / 213
日常のひと時

友達に無理やりデートをさせてやろうと思います

しおりを挟む

子供の一人が羽に手を触れようとした瞬間、バットが窓からバカでかい声で叫んだ。子供が素早く手を引っ込めて、バットを見上げた。

「鳥の羽は汚いぞ!下手したら死ぬからな!」

子供たちが雑木林の方へ逃げるように走っていく。雑木林を抜けて、街に出るとゲーセンがあるから、おそらくそこが目当てだろう。バットが窓を閉めて、グラノーラを食べようとテーブルに身体を向けた。

「何が起きたんだ?」

食器棚からプラスチックのコップが五つくらい落ちて、床に転がっているのを峻兄さんが拾っている。

リビングの方では、本棚から漫画や参考書が何冊も落ちて、床に倒れているのを蓮と佳奈美さんで拾っている。

「バット、気を付けろ。心臓に悪い」
エメラルドが耳を塞いでいる。
「でも、俺、間違ったことは言ってないし…」

バットは昔から声がデカい。俺はもう慣れたけど、王国にいた頃には声がデカすぎるのを利用されて、数千人の兵士の前で連絡事項を伝える役割を与えられていた。今思えば、バットと距離の近かった最前列にいた兵士たちの鼓膜が心配だ。

『おはようございます。朝の6時半になりました。ニュースをお伝えします。一昨日、○○病院に搬送された妊婦が死亡しました。検査の結果、鳥から検出される菌が原因だと推定され…』

バットがテレビを消して、グラノーラに牛乳を注いだ。
「心配するな。俺は元々の身体は人間だ。怖い菌は持ってない。でも、簡単に鳥の羽を触ろうとするもんじゃないってことを、早いうちに教えとかないと」

やっぱり、圭吾たちがいないと、アパートが広いな。台所には俺も入れて6人。

…ん?

6人?

俺はメンバーの名前を頭に思い浮かべながら、台所にいるメンバーを順番に指さしていった。

あれ?

昨晩までいたのに、サファイヤの奴、どこに行った?

「おーい、同居人が亡くなったよ」

水槽からサファイヤの声がする。

見に行ってみると、水面に金魚がお腹を上にして浮かんでいた。サファイヤが今度はメダカになって、金魚に寄り添うようにして水面近くを泳いでいる。
「ああ…俺が小学校の時に夏祭りで金魚すくいをした時から生きてたんだ。とうとう最後の一匹が寿命を迎えたか」
峻兄さんが両手で優しく金魚の身体を掬った。
「…じゃあな」

峻兄さんは金魚の身体を、ベランダの鉢植えの土に埋めた。

エメラルド曰く、彗星は塾の夏期講習に行かないといけないから、夜の五時くらいにアパートに着くらしい。塾が一裕の家と同じ方面にあるから、その時一裕もついでに乗せてくると言っているそうだ。


佳奈美さんと蓮が家に帰るまで、タイムリミットは後10日。圭吾たちがいつ戻ってくるのかは見当も付かない。だけど、俺たちにはまだまだ解決すべき問題が沢山ある。一日一つずつ解決していって、間に合うかどうか…。


俺とバットは両親に、本当のことを伝えてしばらく家に帰らない許可を貰った。学校には、俺たちがインフルエンザに罹ってなかなか治らないという設定で連絡を入れてくれることになった。厳格な親父が許してくれるか不安だったが、杞憂だった。俺が親父に電話をしてその旨を伝えた時、俺の親父はこう言った。


「保身のために嘘を付くな。人を傷つけるから。だが、時には嘘を付け。嘘は時に誰かを救うから」


「なあなあ、昼飯の材料もいるし、久しぶりに皆でショッピングモールに出かけようぜ」

時計の針は8時を指している。彗星と一裕がいないのでは、王国に行ってもあまり意味がないし…。彗星と一裕が来てからは大忙しになりそうだし…。

今のうちに…。

「おい、蓮」
蓮はリビングでソファに身を預けながら、最近ハマりだしたという漫画を読んでいた。
「ウルフ?どうした」
蓮は漫画を閉じると、自分の太ももの上に置いた。佳奈美さんはベランダの花に水をやっている。

「蓮、お前にミッションをやる。佳奈美さんとデートに行け」

蓮が顔をトマトみたいに真っ赤にして俺の口を塞ごうと俺に飛び掛かってきたけど、俺が華麗に避けると、蓮は床に倒れ込んだ。佳奈美さんはりこが好きだった歌を歌いながら、朝顔に水をやっている。
「今から皆でショッピングモールに行く。食材なら俺たちが買っておいてやる。欲しいのがあるなら伝えろ。今、期間限定で美術館が主催したイベントがあるんだ。『カップルにおススメ!』ってキャッチコピーが付いてたからな。行ってこい」

嫌だとは言わせないぞ、蓮。

俺の思惑通り、蓮は顔を赤らめながらも、ベランダにいる佳奈美さんに見惚れて首を縦に振った。

今夜から、忙しくなる。今のうちに、恋を楽しんでおけ、蓮。

俺たちが王国で味わえなかった恋を、思う存分経験して来い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...