『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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静かなる暴走

静かなる暴走の根源は?

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俺とバットと一裕は、吸血鬼だったのに人間になった。

佳奈美さんは、人間だったのに吸血鬼になった。

彗星は、女だったのに、男になった。


『峻、急ごう!何かが起こってる!班には分かれずに全員で楓に会いに行こう。また誰かに何かが起こるかもしれない』


桜大はそう言うと、峻兄さんのリュックサックの中に飛び込んだ。リュックサックの中で、ピンク色の火の玉が煌々と光っている。


『峻、連れてけ!』


峻兄さんは鞄の中から桜大が叫ぶやいなや、リュックサックを勢い良く片手で掴み上げた。

「今からどちらへ?」

男になってもなお、彗星の振る舞いは、元王女として相応しい上品さを保っていた。

「翠ちゃん、今から楓に会いに行くよ。峻兄さんが連れて行ってくれる」

一裕は、自分の身体に異変が起きてしまって動揺している彗星を落ち着かせるように彗星の頭を優しく撫でた。一裕は彗星に優しい笑顔を向けている。一裕が彗星のことを、種族を越えて如何に愛しているかは一目瞭然だ。

「峻兄さん、あの世とこの世の繋ぎ目ってどこにあるんですか?」

峻兄さんはリュックサックを背中に背負って玄関で靴紐を結びながら答えた。

「京都だよ」

京都。
俺達が住んでいる県の2つ隣。

峻兄さんはまさか、日帰りで京都に行くつもりだろうか。峻兄さんは着替えも用意せずに、俺達に早く準備して出ろと促した。

「それなら私にお任せください。運転手をお呼びしますわ。高速道路を使えばすぐですもの」

彗星はそう言うと、塾の鞄からスマホを取り出して家に電話を掛けた。

「ええ…皆で小旅行に行くことになりました。勿論、部屋は佳奈美さんと一緒ですわ。一裕さんとはまだです」

彗星は電話を切ると、運転手が後半時間弱で迎えに来ると俺達に伝えた。佳奈美さんは、何とか完全には吸血鬼にならずに済んでいる。爪が長く伸びて、目の色の一部が変色している以外は。

「待って…みんな…おかしくない?」

彗星も俺達の異変に気が付いたようだ。彗星は佳奈美さんの爪と瞳、エメラルドの瞳、そして俺とバットの順番に見ていった。

「何が…起こってるの?」

『君が楓のお母さん?急ぐよ!誰かが何かに変わってしまう前に!』

峻兄さんは俺達に、各自鞄に貴重品と水分補給できる物を持って来いと言った。



「翠お嬢様、ご友人方、大変お待たせ致しました」

翠の家から、俺達が全員余裕を持って乗れるくらいに大きい車が迎えに来てくれた。

彗星は俺達を先に乗せた。
運転手さんの後ろの席に峻兄さん。
その後ろの席に、俺とバット、そして一裕。
その更に後ろに蓮、エメラルド、サファイヤ。
最後に佳奈美さんと彗星。

「目的地はどちらでございましょう」
車が発進すると、運転手さんは安全運転で田舎道を走りながら彗星に尋ねた。
「えっと…」
「六道珍皇寺でお願いします」
峻兄さんの鞄の中で、桜大はひっそりと息を潜めている。流石に火の玉が当たり前のように話し出せば、運転手さんも運転に集中できなくなる。そうなれば、俺達は本当にあの世に行きかねない。


六道珍皇寺。
俺はスマホでそのお寺を検索してみた。

修学旅行先に訪れるほど有名なお寺ではないようだが、お盆には先祖の霊をこの世に迎え入れる行事を行うらしい。

営業時間は比較的遅い時間までやってる。今から向かったとして、どうだろう。9時には着くだろうか。ギリギリ間に合うな。

「ふう~…」
俺はスマホの画面を伏せて、窓の外を見た。

制服を着て自転車で走っている学校帰りの生徒たち。

今日の夕飯を買ったと思われる買い物袋を肩から下げて、ゆったりとした足取りで歩くお婆さん。

車と同じ方向に飛ぶカラス。

車と反対の方向に飛ぶカラス。

こいつらは何も知らない。

そして俺達にも分からない。

人智を超えた存在とされる、エメラルド、彗星、サファイヤでさえ分からない。



俺達の知らない場所で



俺達の知らない何かが



暴走し始めている。

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