『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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静かなる暴走

転生受付所の霊魂たち

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『では、こちらはいったんお預かりしますね』

中村尊はそう言って、容器を持って部屋を出た。中村尊は、スタッフ室の奥にある、大きな金庫を開けて、容器を丁寧にしまうと、金庫を静かに閉めた。

『さて…ええ…楓くんのことですかね』

中村尊は、スタッフ室の中の棚から、一冊の太いファイルを持って部屋に戻って来た。

「あの、楓のことも気になるんですけど、他にも気になることがあって…」

俺は中村尊に頼んで、蓮たちのポケットに入っている圭吾とりこを部屋から出してもらった。圭吾達は他の火の玉たちと遊びに、扉を開けて出ていった。

「圭吾の死因が流産なのはわかってるんですけど、りこのは…」

中村尊は、太いファイルのインデックスを順番にめくっていった。

『ええと、窒息ですね。牛スジを噛み切れなかったようです』

なるほど…。

長男は事故死。次男は流産。長女は窒息。

桜大の両親は、どれだけ苦しかっただろうか。

『他に何かご質問は』

俺は中村尊の姿を隅々まで観察した。

「そもそも、あなたは…」
『あ、僕ですか』

中村尊は、持ってきたファイルを閉じて、机の隅に置いた。

『私はですね、6年前に16歳で電車にはねられた者です。塾の帰りに貧血を起こしてしまって、駅のホームに落ちてしまったんですが、運悪く電車が来てしまって…』

中村尊は、苦笑いをしながら頭をポリポリとかいた。

『いやあ、自分が人身事故を起こすとは思ってませんでしたね。あの時の駅員の人には、迷惑をかけたなって』

佳奈美さんが小さく遠慮がちに手を挙げた。

「ええと…幽霊、なんですか?何か、普通に生きてる人と同じ感覚で話しているのが不思議で」

中村尊は、頷きつつも首を横に振るという、不思議な動作をしてみせた。

『私は幽霊ではなく、閻魔様の見習いの見習いの見習いの…という、閻魔になるための修行を積んでいる途中ですね。あ、すみません。子どもの受付をしてきますね。少々お待ちを』

部屋に別のスタッフが迎えに来た。俺よりは年下くらいの若い女性。この人も、事故かなんかで命を落としたのだろうか。

『2歳の子が一家心中に巻き込まれた?』
『はい』

中村尊は、自分がどこにいるのか分からずポカンと立っている男の子のところへ駆け寄っていった。


中村尊が男の子の手を引いて、子供用の低い机に座らせた。一緒に何かのお絵描きを楽しみつつ、男の子の様子を伺いながら生前のことと死因を確認している。
『パパは?ママは?いな~い』
男の子は、もはや理科室に置いてあるような人体模型のような見た目になっていたが、本人は全く気付かない様子で、中村尊の前で恐竜の絵を描いて楽しんでいる。

『パパが山にお出掛けに行くよって言って~…』

男の子は、自分が亡くなっていることにさえ気付いていないのだろうか。

中村尊は、男の子の描く絵を眺めながら、何度も頷いて話を聞いている。


コンコン


中村尊を部屋に呼びに来た、女性スタッフが扉をノックした。

『失礼します』

女性は一礼して部屋に入ると、中村尊が座っていた席の隣に腰を下ろした。

『中村が子供の対応をしている間、皆様の応対をさせて頂きます、平池と申します。よろしくお願い致します』

女性は首から下げた名前カードを俺達に見せながら、もう一度ペコリと頭を下げた。


俺よりも年下くらいか。
暗い青色に染めた、肩まである長い髪。
スッと横に長く走った一重の目。黒い瞳がチラリと顔を覗かせている。


『…私の死因、気になってますか?』

しまった。平池のことをジロジロと見過ぎてしまった。平池は俺の顔を見て、ニコッと優しい笑顔を向けた。

『10年前に、当時付き合っていた彼氏に別れを告げたら、腹部をナイフで刺されまして。享年15歳ですわ、嫌んなっちゃう』

平池はそう言って、嫌な過去を忘れるようにブンブンと頭を何度か横に振った。

『中村から話は伺っております。楓くんとの面会要請と、皆様の身体に生じた異変についてのご相談でよろしかったですか?』

平池は、机に置かれた、中村が持ってきたファイルを自分の前に持ってきて、俺達に尋ねた。

「あ、あと…」

平池の向かいに座っている蓮が小さく手を挙げた。

「灰色の世界って何か分かりますか。俺達が初めて、りこや圭吾や楓に会った世界なんですけど…」
平池はそれを聞くと、ピクリと眉を動かした。

『灰色の世界、ですか…?』


ガチャ


扉が開いて、中村が一礼して入ってきた。

『皆様、席を外してしまい申し訳ありませんでした。これ以後は、別のスタッフに交代することになりましたので』

中村はそう言って、俺の向かいの席に腰を下ろした。

『先輩、応対ありがとうございました。』
『あらやだ、年齢的には君の方が先輩なんだから先輩だなんて呼ばないで』

平池は笑いながら、中村の肩をペチンと叩いた。

中村は6年前に16歳で亡くなった。
平池は10年前に15歳で亡くなった。

2人とも、本当は峻兄さんよりも年上になるはずだったんだなぁ。

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