『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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静かなる暴走

生命の灯火

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男が俺達を連れて行ったのは、意外にも小学校のような建物だった。俺はもっと、おどろおどろしい、廃屋のような場所に連れて行かれるのかと思っていた。さっき、俺達に纏わりついていたような火の玉が大量に、その建物の入り口から出てきた。

『生きてる人!』
『ねえねえ、何歳?』

火の玉は、またしても俺たちの周りをキャハハと元気に笑いながら飛び回る。

『ほらほら、戻れ』

男は火の玉たちを建物に戻らせると、火の玉が出てきたのとは別の入り口に俺達を案内した。

「ここは…?」

建物の中には、受付の机がズラリと横に大量に並んでいた。子どもが時々不安な面持ちで入ってくるたび、奥からスタッフみたいな人が出てきては優しく声を掛けて、机に座らせると、子供たちの話を聞いている。

男はそこを通り過ぎて、俺達を別室に案内した。

『生者反応あり。命の灯火を回収してください』

別室の入り口に小さなモニターがあって、それに俺達の姿が映った。

『ご説明します』

モニターにズラリと並んだ説明文のようなものを男が手で指し示した。

『我々は、亡くなった魂の転生受付を行っております。申し遅れました。私は、不慮の事故や病死等で亡くなった子供たちの転生受付をしております、中村尊と申します』

中村尊は、さっき俺達が通ってきた通路を手で示した。

『中村さーん』

『あ…申し訳ありません。子供が来てしまったようで。受付をして参りますね。こちらの部屋で、少々お待ちいただけますか』

中村尊は、俺達を別室に入れると、通路でウロウロしている子供に駆け寄った。目線を合わせて話しかけている。

『君はどうしたのかな?』

中村尊が話しかけている女の子の身体の全身に、痣が痛々しく付いている。
『ママは…?』
女の子は不安そうに辺りを見回す。

この子はいったい…どうやって…。

今、目の前で普通に話している少女が、既に亡くなっていると言うのか?

『ママに会いたい』

女の子が顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚き始めたのを見て、蓮は苦しそうに眉をひそめた。

『そっか…痛くない?』

中村尊が女の子の傷跡をそっと撫でると、女の子は小さく頷いた。

『君はね、何も悪くないよ。ここにお友達が沢山いるから。暫くここで遊んでようか。ママも…必ず来るからさ。待ってよか?』

中村尊が女の子の心臓の辺りに手を触れると、女の子は火の玉に姿を変えた。りこのよりは、若干色の薄い水色の火の玉。

『お友達~?』

俺達がいる部屋の近くの扉が勝手に開いたと思ったら、大量の火の玉が勢い良く飛び出してきた。

『こらあ、お前らはまたそうやって飛び出す。大人しくしてろ!』

中村尊は、女の子だった火の玉を大量の火の玉の群れの中に混ぜた。

『やんちゃな奴らばっかりだけど、仲良くしてくれる?』

火の玉はピカッと光ると、大量の火の玉に囲まれながら忙しなく部屋を出ていった。

『お待たせしました』

男が小走りでこちらに向かってきた。

『ええ…命の灯火の件ですね』

部屋の中のモニターには、真っ赤な炎がチロチロと燃える映像が流れている。

『貴方がたは生者です。つまり、貴方がたの魂は、命の灯火が点いています』

男は部屋の扉をゆっくりと閉めて、説明を続けた。

『先ほど、間違ってあの世に足を踏み入れないよう注意するようにとお伝えしましたが、貴方がたの命の灯火をいったんお預かりすることも出来ます』

モニターに、命の灯火の回収方法が示された。男がガラスのようなもので出来た容器を、俺達生者の数の分だけ机の上に用意した。

『こちらの容器にですね、息を少し吹き込んで頂くと、容器の中で貴方がたの命の灯火を保管できます。これはお勧めですね。万が一あの世に入ってしまっても、容器に命の灯火が残っていますから、それを閻魔様の許可の下で再燃焼させて生き返ることが可能なので』

峻兄さんは、じっとその容器を眺めている。

「あの、何か代償ってありますか?命が縮むとか…」

『いえ、命が縮むことはございませんので、ご安心下さい。ただ、貴方がたが寿命を迎えたり、縁起の悪い話で申し訳ありませんが、事故や他殺などでこちらに来た場合、次に生まれ変わるまでの時間が他の魂の倍にはなります』

中村尊が言うには、本来、命の灯火を燃やすのは新しい命が生まれる時にするものだから、同じ命を生者の世界に戻すのは、あくまで例外的措置なのだそう。

『どうなさいます?』

俺達の前に、透明な容器が並んでいる。

俺達が、ここに命の灯火を入れると、生まれ変わるまでの時間が倍になる。

「あの…生まれ変わるまでの時間って、大人が死んだ場合はどうしてるんですか。子供は遊んでるみたいですが…」

俺は、どうしてもそれが確かめたかった。

俺達はよく、そんなことをしていたら地獄に行くぞ、なんて軽い気持ちで言う。

俺は龍獅国で、大量に人を殺してきたから、この世界では何も罪を負っていないが、地獄に行ってしまう気がする。

地獄で過ごす時間が倍になるのは、ごめんだ。

『大人の場合は、生まれ変わるための補修を受けることになりますね。大人になると、誰だって一度は人を傷付けたりするものです。生命が如何に尊いものなのかを、時間を掛けて学びます。貴方はもしかすると、地獄を懸念されておいでのようですが、貴方が地獄に行く可能性は、まずないと言って良いでしょう』

中村尊は、峻兄さんがさっき俺たちの経験を話した時に、俺達が龍獅国で処刑されたことを知った。それでもなお、中村尊は、俺やバットが地獄に行くことはないと言い張った。

『貴方がたは、確かに、兵士として数え切れないほどの命を奪ってきたのでしょう。ですが、貴方は、国を守って戦って命を散らした名もなき兵士を罪人だと思いますか?』

「…いや」

『それに貴方は、今はごく普通の高校生として生活をしているのでしょう?地獄というものは、自分の愚かさや醜さに気付いていない魂を矯正するための場所。貴方も、今後、一度や二度、人の気持ちを傷付けることはあるでしょう。その時に、たとえ死ぬ直前であっても良いのです。貴方がそれを悔い改めれば、貴方を地獄に招待することはしません』


俺は…罪人じゃない。


その言葉は、俺が心の何処かでずっと求め続けてきたものだった。

次に生まれ変わる時に、より良い人間になれる時間が増えるなら…


「預けます。命の灯火を」
俺は容器に息を吹き込んだ。容器の中で、真っ赤な炎がチロチロと燃えている。
「俺も」
「私も」
俺に続いて、他の皆が容器に各々の命の灯火を燃やした。
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