【1月3日完結!】冥刻の子守唄――許されないことをした俺は――

ラムネ

文字の大きさ
35 / 38
第六章 狂愛の少年

奇跡

しおりを挟む
「蛍…どこ?蛍…」
世央が病室の扉を開けて廊下に飛び出した頃、蛍の姿は既に見えなくなっていた。曲がり角がいくつもある。一番手前の角を曲がってみると、更に別の廊下が果てしなく遠くまで続いている。引き返してもう一つ奥の角を曲がると、便所と控室のような小さな部屋が。自分が生まれてこの方一度も訪れたことのない病院は、世央にとっては迷路のよう。

死んじゃいたい―――。

そう呟いた蛍の声が、今も世央の耳の中に木霊する。死ぬな。そう願う度に、蛍との懐かしい思い出の数々が硝子みたいに割れて散っていく。

「蛍…待って、蛍――!」
世央は天井付近の案内板を頼りに、病院の受付を目指した。もしかしたら蛍に会えるかもしれないという微かな期待を胸に抱いて。

蛍に声の届かない今の自分に、いったい何が出来る。引き留めることも出来ないのに、どうして蛍を全身で抱き締めたい。蛍が去っていく後ろ姿を黙って見ることしか出来ないのが、こんなにも辛いのは何故?答えは分かりきっていた。ずっとずっと、前から。自分がそれを認めたくなかっただけで、本当はずっと―――。

「蛍、蛍?」
廊下を曲がりくねりして、階段を駆け下りて、次第に一階にある受付センターに近付くにつれて、ザワザワとした雑音みたいな人々の話し声やアナウンスで賑やかになっていく。腰が曲がった老夫婦や、お腹が大きく膨らんだ妊婦さんと旦那さん。椅子に腰掛けたり、受付をしていたりする人々の中に、蛍の姿が見当たらない。
「帰った…?」

自分は永遠にこのままなのか。大切な人に想いも伝えられず、大切な人を傷付けて、自分はこの世を去ってしまうのか。
「クソが!!」
腸が煮えくり返るような怒りに、世央は叫んだ。嘗て自分が一瞬でも、死んで蛍の反応が見たいと願った過去の自分が腹立たしかった。世央を泣かせて何が楽しい。簡単に命を投げ捨ててしまってまで、自分は蛍の苦しみを願ったのか。それが赤の他人のしたことならばマシだったのに、元凶は何もかも自分自身。
「クソが!!ふざけんな!!」
やり場のない怒りに世央は身体を震わせていた。周囲の人々は、何事も起こっていないかのように世央の隣を通り過ぎていく。その様子を背後の物陰から、静かに伺っている人影。陽炎だった。陽炎は、チラリと駐車場が見える大きな窓に視線をやった。世央は気付いていないが、蛍は、病院前のバス停で駅に向かうバスが来るのを待っている途中だった。生きる目的を失った表情を浮かべ、ボンヤリとバス停のベンチに元気無く腰掛けている後ろ姿。陽炎は、蛍の頭上に浮かぶ数字を確かめるため目を細めた。


15:00。15:36。14:57。13:29。16:44。


蛍の頭上に浮かぶ数字は、増えたり減ったりを忙しなく繰り返していた。

陽炎は先日、メラが人間の女性に化けて蛍にコンタクトを取った時に、自分にとって大切な存在が亡くなっても自分は生きていくと本人が言っていたことを既に知らされていた。それを聞いて多少安心はしていたものの、それでも蛍のカウントダウンは止まらない。

生きるか死ぬか、迷っている。

実際に当事者になって初めて理解してしまう感情もあるのだろう。減ったり増えたりを不規則に繰り返す真っ赤な数字を見て、陽炎は確信した。そして同時に、蛍を守るために自分が出来ることはここまでなのだと悟った。生まれてから常に傍で見守ってきた蛍にとっての生きる理由は、自分ではなくて世央なのだ。


寂しい―――。


心の中で何かが泣いている。だが、赤ちゃんだった蛍が成長して、愛される側から愛する側になったのだと思えば、少し誇らしかった。

『世央』
陽炎は物陰から世央を呼んだ。世央はピクリと指先を動かすと、怯えたように振り向いた。その様子はまるで、天敵に追い詰められて逃げ場を失った獲物のようだった。
「何がしたかったんだよ。知ってんだぞ、俺を幽体離脱させて意識不明にしたの、お前だろ」
世央は壁に背中を向けて張り付くようにして立っている。肩が竦んでいて、膝がガクガクと震えている。
『これをお前に返したかった』
陽炎は、自分の掌に大きな灯火を灯した。天井まで届くような大きな炎が、陽炎の掌の上で燃えている。世央はそれを見るとギョッと顔に緊張を走らせた。
「それは…?」
太陽からそのまま持ってきたような赤く燃える炎は、院内に燃え移ったりすることもなければ、院内の人々がそれに気付く素振りも見せない。
『世央から預かった、お前の魂だ』
陽炎がそう言うと、世央は信じられないと言った表情で陽炎の顔をまじまじと見つめた。
『世央。お前が蛍の生きる理由だ』
陽炎はチラリとバス停の方を見た。駅行きのバスはまだ来ない。蛍はベンチの背もたれに身体を預け、項垂れている。

14:47。19:12。15:58。

蛍はまだ、生と死の狭間で迷っている。

「俺の魂を返して下さい」
世央のその声に、陽炎は再び世央の方を見た。世央は右手を真っ直ぐ前に突き出し、陽炎から魂の炎を受け取ろうとしている。瞳の奥ではまだ困惑していて怯えているけれど、必死に勇気を振り絞ったような瞳をしている。
『世央。誓え』
陽炎の声が、寂しく響く。光の届かない孤独な深海に響く鯨のような、辛さに耐えながらも息絶えるまで生き抜く覚悟を決めたような声。
『世央。この先、どんなに辛いことがあっても、蛍と一緒に生きていくことを誓ってくれるか』

「当たり前だ!」

世央の声が響いた。世央は真っ直ぐと陽炎の紅の瞳を見つめていた。何の嘘偽りもない、真実の色を宿した瞳が今、陽炎の目の前にある。世央と蛍の2人なら、人生に訪れる暗闇も耐え抜き、抜け出せる気がした。いつの日か、2人が年を取って本当の別れをすることになったとしても、彼らは笑顔で別れを告げることが出来る。そんな気がした。

『…行け』
陽炎は安堵したような表情を浮かべ、掌の上の炎を世央に差し出した。





「はっ?!」

世央が目を覚ました途端、全身に身体の重みというものを感じた。世央は病室でベットに仰向けで横たわっていた。幽体離脱していた時は、たんぽぽの綿毛よりも軽く感じていた。普段自覚することはないけれど、やはり重力というものは間違いなく存在するのだ。心臓の鼓動を胸に感じる。静かな生命の息吹を感じる。

「そうだ、蛍!」
世央は掛け布団を蹴散らし、ベットから降りようとした。
「痛てぇ?!」
両腕に刺さる点滴の針が腕の中に、痺れるような刺激を与えた。針が刺さった状態で無理に身体を動かしたため、針の位置が腕の中で僅かにズレたのだ。
「ナースコールどこ?これ?」
世央が何でも良いから早く誰かを呼ぼうと慌てふためいていた時、ガラリと病室の引き戸が開く音がした。
「堀道さん?!」
「はい、なんすか?!」
意識不明で寝たきりになっているはずの患者の病室から、見舞客ではない誰かの声がするのを聞き付けて、たまたま近くを通り掛かった看護師が入ってきたのだ。
「お名前は!」
彼女は食い付くような勢いで世央に尋ね、世央は彼女のあまりの勢いに後退りした。
「お名前は?」
「え…堀道世央っす」
「視力に何か問題などは?」
「あ…見えるっすけど、普通に」
「体調はいかがですか?!」
「あぁ…元気やと思います」
「院長を呼んでまいります!」
「あ、いや、ちょっと待って!」
余りにもテンポ良く、キャッチボールのように続いていた短い会話の途中で、不意に立ち去られそうになり、世央は慌てて看護師の制服の裾を引っ張って止めた。
「さっき俺のお見舞いをしにきてくれた斗波蛍に会わせてください。お願いします。今じゃないと駄目なんです。お願いします!」
2日間、意識不明だったとは思えぬ患者の健康そうな顔色と声色に戸惑いを隠せていない表情で、看護師は狼狽えたように世央の顔と病室の扉を交互に見た。だが、世央の願いも虚しく、院長直々の厳密な検査や家族への連絡及び面会が優先されるということだった。蛍には病院の方から連絡を取ってくれるという話も聞いたが、それだともう――永遠に蛍に会えない気がした。
「そんな…蛍…」
世央はいっそ窓から飛び降りて逃げ出そうかと、病室の窓の外を見た。その時、世央は一瞬だけ時が止まったと感じた。

久しぶりに見た眩しい太陽の光の中、愛しい人の後ろ姿が見えた。蛍が、バス停に着いた駅行きのバスに乗り込もうと列に並んでいる最中だった。

「蛍!」
「あっ、ちょっと。危ないっ」
世央は看護師の制止を振り払い、窓を開けると蛍の後ろ姿に向かって叫んだ。喉が枯れても構わない。世央は何度も蛍の名前を叫んだ。この声届け、と強く願いながら。
「世央…?」
不意に背後の遠くから、世央が自分の名前を呼んだ気がして、蛍は空を仰いだ。残酷なくらいに真っ青な青空。余りにも綺麗なのが悲しくて、蛍の左目から一筋の涙が零れた。
「世央…死んだんか?」
蛍がそう思ったのには理由があった。蛍が小学校に入学して数年経った頃、蛍の父方の祖父が膵臓癌で亡くなった。随分と甘やかしてもらった幸せな記憶の終わりは、祖父の声だった。祖父が亡くなったという知らせを受ける直前に、蛍だけは、祖父が自分の名前を呼んだのを確かに聞いた。あの日も、こんな快晴だった。
「けえぇぇぇい!!」
元気が良すぎる世央の声に、蛍は思わず顔が綻んだ。

せめて最後に、世央が最期を過ごした場所だけでもこの目に収めたい。

そう思った蛍は、バスに乗り込む列から離れ、ゆっくりと世央がいた病室の方に身体を向けた。
「やっと気付きやがったか、この馬鹿野郎!」
「え―――?」
蛍の視界の先には、顔色の良い世央が窓から顔を出して蛍に向かって叫んでいるのが見えた。昔から何も変わらない、蛍が大好きだった世央の太陽みたいな眩しい笑顔で、世央は蛍に手を大きく振っている。
「世央――世央ぉっ!!」
眩しい陽の光と、雲一つない青い空に背中を押されるようにして、蛍は世央のもとへと走った。もしもこれが夢ならば、永遠に覚めないでほしい。世央をこの腕に抱き締めたい。「男友達」としてでもなく、「恋人」としてでもなく、「斗波蛍」として。




『よっしゃあ!!』
陽炎は、駆けていく蛍の後ろ姿を見送りながら、空に向かって高く拳を突き上げていた。喜びと、恐怖の束縛からの解放感に、陽炎の全身に熱い何かが込み上げる。

蛍の頭上の数字は、消えていた。跡形もなく。蛍の頭上には、青空しか広がっていない。
『蛍は生きる!世央も生きる!いよっしゃあ!!』
眩しい太陽に両手を突き上げて喜びの雄叫びを上げる陽炎の足元で、同じように飛び跳ねる、白くて小さな生き物がいた。
『やった、やった』
バクも、陽炎の足元で、世央のところに走っていく蛍の後ろ姿を見送っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!

めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。 目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。 二度と同じ運命はたどりたくない。 家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。 だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

処理中です...