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第1章:出会いの青
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しおりを挟む「颯真くんは、他にご兄弟はいるの?」
「はい。兄と、姉が。……その、佳代さんの娘さんと、うちの姉が似ているなぁと思っていたところです。」
「あら、それは賑やかそうなご家庭ね!」
「あはは……」
颯真は、乾いた笑いを誤魔化すように、ずずっとお茶を啜る。
ひと段落ついたのか、佳代は手を手拭いで拭きながら振り返った。
そして、颯真の空いた湯呑みに目をとめ、新しい湯呑みを並べてお茶を注ぐ。
すっかりこの家の空気に馴染んだ颯真は、遠慮を忘れて、素直に「ありがとうございます」と湯呑みを受け取った。
「どういたしまして」と佳代が微笑み、そのまま彼の向かいに腰を下ろす。
湯呑みをひと口啜り、やわらかく息を吐くと、再び口を開いた。
「そういえば、うちにはもうひとり――」
その声をかき消すように、がらがら、と引き戸が開く音がした。
颯真は、はっとしてそちらを振り向く。
鼻腔をくすぐる、甘くスパイシーな香水の香り。
視界の端で、銀色の光がきらりと跳ねた。
――現実離れしたその姿に、思考が止まる。
目の前に立っていたのは、端正な顔立ちの男だった。
彼は、颯真の瞳をじっと見つめながら、どこか謎めいた笑みを浮かべている。
一瞬のにらめっこ。
先に口を開いたのは、颯真だった。
「あの……どちら様ですか?」
声が裏返りそうになる。
“それを言いたいのは向こうだ”――そんなツッコミが喉まで出かかった瞬間、自分の言葉に気づき、顔が耳のあたりまで熱くなる。
男は小さく肩を揺らし、楽しげに笑った。
そして、煌びやかな笑顔のまま、ゆるく首を傾げる。
「俺?――そうだな。ただの出張ホスト、ってところかな」
◇ ◇ ◇
「…ほすと、って……?」
男の口から飛び出した、認知はしているものの耳馴染みのない言葉を、ぎこちなく反芻して、颯真の頭の中はさらに混乱を極める。
「あら、玲央。来たのね」
対して、佳代はニコニコとしたまま彼を受け入れると、手を洗ってきなさいと促す。
「はーい」と呑気な返事をして、慣れた様子で家の奥まで歩いていく「レオ」と呼ばれた男の背中を、颯真は口をあんぐりと開けたまま目で追うしかなかった。
男の登場から、今に至るまで、硬直しっぱなしの颯真であるが、その脳内は実に騒がしかった。
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