ステータスなしの元人気メンタリスト、異世界の最強ドラゴンをお手だけで服従させる~目を見ただけで思考が読めるので、魔法使いが詠唱してくれません

マーマー

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第2章第12節 英雄の憂鬱と、新たな火種

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 学園祭での「ドラゴン使い」の一件以来、レン・クロウリーの生活は一変した。
 学園内での地位は、単なる特別講師から「伝説の英雄」へと昇格し、すれ違う生徒たちは皆、尊敬(という名の恐怖)の眼差しを向けてくる。
 「廃棄物処理場」の生徒たちは、もはやレンを神と崇め、ガストンとフレアに至っては「レン様親衛隊」を自称して勝手に護衛を始めた。

 そして何より、最大の厄介事は――。

「……グルル……」
「……頼むから、もう少し離れてくれないか? 君、口が臭いんだよ」

 レンがため息をつく。
 彼の目の前には、あの漆黒のドラゴンが、犬のように座り込み、尻尾を振っていた。
 ケインが死んだ後、このドラゴンはレンを新たな「飼い主」と認識したらしく、常にレンの後をついて回るようになったのだ。
 校舎の渡り廊下を歩けば窓が割れ、中庭で昼寝をすれば花壇が壊滅する。
 完全な「歩く災害」だ。

「レン様! 本日のドラゴンの食事は、牛三頭でよろしいでしょうか!」

 セシリアが、ドラゴン専用の巨大な餌(生肉)を運びながら尋ねてくる。
 彼女はすっかり「ドラゴン世話係」のポジションに収まっていた。

「ククク……。師匠のペットは、今日も食欲旺盛ですね。……世界を喰らい尽くす日も近い……」

 アリアも、なぜかドラゴンの鱗を磨きながら満足げに頷いている。

 レンは頭を抱えた。
 (……なんでこんなことになったんだ。俺はただ、スラムで静かに暮らしたかっただけなのに。……なんでドラゴンの飼育費まで払わなきゃいけないんだよ! 金貨百枚が一瞬で消えるって!)
 レンの内面は、経済的な不安でいっぱいだった。

 そんなある日、レンは学園長室に呼び出された。
 学園長は、レンの活躍を高く評価し、特別ボーナスとして金一封(ドラゴンの餌代一ヶ月分)を支給してくれた。
 (助かった……! これで餓死せずに済む……!)
 レンが安堵したのも束の間、学園長は真剣な表情で言った。

「クロウリー先生。……実は、貴方に折り入って頼みがあるのです」
「……何でしょう?」

 レンは、嫌な予感を覚えながらも、賢者の仮面を被り直した。

「先日、隣国ガレリア帝国の使者が訪ねてきましてね。……貴方の『ドラゴン使い』の噂を聞きつけ、ぜひ一度、会いたいと」
「……ガレリア帝国?」

 レンの眉がピクリと動いた。
 ガレリア帝国。武力至上主義の軍事国家であり、ロムレス王国の領土を狙っている最大の敵国だ。
 その使者が、わざわざレンに会いに来る。
 碌な用件ではないことは明らかだ。

「……使者の名前は、何と?」
「……将軍、カイザー。……『帝国の武神』と呼ばれる男です」

 レンの心臓が、ドクンと跳ねた。
 カイザー。その名は、レンも聞いたことがあった。
 個人の武力で城壁を破壊し、千の兵を一人で薙ぎ払うという、文字通りの「化け物」。
 そんな奴と、一対一で会う?
 (……死ぬ。絶対に死ぬ。ハッタリが通じる相手じゃない。……断ろう。絶対に断ろう)

 レンは、口を開きかけた。
 だが、その時、学園長の言葉が続いた。

「……彼は、もし貴方が面会を拒否した場合、帝国の全軍を率いて、この国に侵攻すると脅しています」

 ――詰んだ。
 レンの頭の中で、終了のゴングが鳴り響いた。
 断れば戦争。会えば殺されるかもしれない。
 究極の二択だ。

「……わかりました。お会いしましょう」

 レンは、絞り出すように答えた。
 顔では「フッ、面白い」と笑ってみせたが、内心では(助けて! 誰か助けて! 俺、英雄とかじゃないから! ただの一般人だから!)と絶叫していた。

 こうして、レンは、新たな、そして最大の危機に直面することになった。
 「帝国の武神」カイザーとの対面。
 それは、言葉が通じない脳筋相手の、命がけの「心理戦」の幕開けだった。

 レンは、学園長室を出ると、廊下の壁に手をつき、深くため息をついた。
 (……もう、疲れた。……田舎に帰りたい)
 彼の胃痛は、限界を超え、新たなステージ(胃潰瘍)へと突入しようとしていた。
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