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第3章第12節 聖騎士への招聘
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学園の自室。レンは、聖教国イスの教皇から届いた書状を、机の上に投げ出した。
「……聖騎士、か」
レンは深くため息をついた。
帝国の脅威が去ったと思ったら、今度は宗教国家からのスカウトだ。しかも、魔法を持たない人間を差別する、あの聖教国からの。
「……お兄ちゃん。それ、どうするの?」
ルナが、心配そうにレンの顔を覗き込む。彼女は、レンが魔力ゼロであることを知る唯一の家族だ。
「……どうするもこうするも、断る一択だろ。……俺が聖騎士? 冗談じゃない。……バレたら火炙りだぞ」
レンは、頭を抱えた。
聖教国イス。魔法を神の奇跡と崇める彼らにとって、魔力ゼロでありながら「賢者」として振る舞うレンは、最大の冒涜者だ。もし彼らの本拠地に行けば、間違いなく魔力測定が行われ、全てが露見する。
「……でも、断ったら、聖教国を敵に回すことになるんじゃ……?」
ルナの懸念はもっともだ。
聖教国は、大陸最大の宗教勢力。彼らを敵に回せば、ロムレス王国は帝国の脅威とは別の意味で窮地に立たされる。経済制裁、宗教的な圧力、そして最悪の場合、「異端討伐」という名目の聖戦を仕掛けられる可能性もある。
「……ああ。わかってるよ。……詰んでるんだよ、完全に」
レンは、再びため息をついた。
(……行くも地獄、退くも地獄。……どうすりゃいいんだよ、これ)
その時。
コンコン、と控えめなノックの音がした。
「……レン様。……お客様が」
「……誰だ? ……今、忙しいんだが」
レンは不機嫌そうに答えた。
だが、扉の向こうから聞こえてきた声に、レンの心臓が凍りついた。
「……お久しぶりですね。……レン様」
その声は、鈴を転がすように美しく、そして、底知れぬ狂気を孕んでいた。
「……エ、エリナ……?」
扉が開いた。
そこには、純白の修道服に身を包んだ聖女、エリナが立っていた。
彼女の瞳は、先日学園で会った時よりも、さらに深く、暗く、そして熱く、レンを見つめていた。
「……教皇猊下より、書状は届きましたでしょうか?」
エリナは、にこやかに微笑んだ。
その笑顔の裏に、どんな感情が渦巻いているのか、レンの観察眼をもってしても読み取れない。
「……ええ、拝見しましたよ。……身に余る光栄です」
レンは、賢者の仮面を被り、努めて冷静に答えた。
「……ですが、申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。……私は、この国の国師。……ここを離れるわけにはいきません」
「……フフフ。……そうおっしゃると思いましたわ」
エリナは、レンの断りを予期していたかのように笑った。
「……ですが、教皇猊下は、貴方を諦めるつもりはありません。……そして、私も」
エリナは、一歩、レンに近づいた。
「……レン様。……貴方は、神に愛されたお方。……その力は、神のために使われるべきです」
(……だから、力なんてないんだってば。……神も何も関係ないんだよ……)
レンは内心で叫ぶが、声には出せない。
「……もし、貴方が我が国の招聘を拒否し続けるなら……」
エリナの笑顔が、すっと消えた。
「……我々は、ロムレス王国を『異端の国』と認定し、制裁を加えざるを得ません。……食料援助の停止、通商の断絶、そして……」
エリナの言葉は、明白な脅迫だった。
(……マジかよ。……こいつら、本気だ)
レンは、追い詰められた。
「……わかりました。……少し、考えさせてください」
レンは、時間稼ぎに出た。
「……フフフ。……賢明なご判断をお待ちしておりますわ。……レン様」
エリナは、満足げに微笑み、優雅に一礼して去っていった。
レンは、その後ろ姿を見送りながら、深くため息をついた。
(……どうすんだよ、これ。……帝国を追い払ったと思ったら、今度は宗教国家かよ。……俺の平穏なスローライフは、一体どこへ行ったんだ……)
レンの胃痛は、もはや慢性的なものとなり、彼の学園生活は、新たな、そして最大の危機を迎えることになった。
「……聖騎士、か」
レンは深くため息をついた。
帝国の脅威が去ったと思ったら、今度は宗教国家からのスカウトだ。しかも、魔法を持たない人間を差別する、あの聖教国からの。
「……お兄ちゃん。それ、どうするの?」
ルナが、心配そうにレンの顔を覗き込む。彼女は、レンが魔力ゼロであることを知る唯一の家族だ。
「……どうするもこうするも、断る一択だろ。……俺が聖騎士? 冗談じゃない。……バレたら火炙りだぞ」
レンは、頭を抱えた。
聖教国イス。魔法を神の奇跡と崇める彼らにとって、魔力ゼロでありながら「賢者」として振る舞うレンは、最大の冒涜者だ。もし彼らの本拠地に行けば、間違いなく魔力測定が行われ、全てが露見する。
「……でも、断ったら、聖教国を敵に回すことになるんじゃ……?」
ルナの懸念はもっともだ。
聖教国は、大陸最大の宗教勢力。彼らを敵に回せば、ロムレス王国は帝国の脅威とは別の意味で窮地に立たされる。経済制裁、宗教的な圧力、そして最悪の場合、「異端討伐」という名目の聖戦を仕掛けられる可能性もある。
「……ああ。わかってるよ。……詰んでるんだよ、完全に」
レンは、再びため息をついた。
(……行くも地獄、退くも地獄。……どうすりゃいいんだよ、これ)
その時。
コンコン、と控えめなノックの音がした。
「……レン様。……お客様が」
「……誰だ? ……今、忙しいんだが」
レンは不機嫌そうに答えた。
だが、扉の向こうから聞こえてきた声に、レンの心臓が凍りついた。
「……お久しぶりですね。……レン様」
その声は、鈴を転がすように美しく、そして、底知れぬ狂気を孕んでいた。
「……エ、エリナ……?」
扉が開いた。
そこには、純白の修道服に身を包んだ聖女、エリナが立っていた。
彼女の瞳は、先日学園で会った時よりも、さらに深く、暗く、そして熱く、レンを見つめていた。
「……教皇猊下より、書状は届きましたでしょうか?」
エリナは、にこやかに微笑んだ。
その笑顔の裏に、どんな感情が渦巻いているのか、レンの観察眼をもってしても読み取れない。
「……ええ、拝見しましたよ。……身に余る光栄です」
レンは、賢者の仮面を被り、努めて冷静に答えた。
「……ですが、申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。……私は、この国の国師。……ここを離れるわけにはいきません」
「……フフフ。……そうおっしゃると思いましたわ」
エリナは、レンの断りを予期していたかのように笑った。
「……ですが、教皇猊下は、貴方を諦めるつもりはありません。……そして、私も」
エリナは、一歩、レンに近づいた。
「……レン様。……貴方は、神に愛されたお方。……その力は、神のために使われるべきです」
(……だから、力なんてないんだってば。……神も何も関係ないんだよ……)
レンは内心で叫ぶが、声には出せない。
「……もし、貴方が我が国の招聘を拒否し続けるなら……」
エリナの笑顔が、すっと消えた。
「……我々は、ロムレス王国を『異端の国』と認定し、制裁を加えざるを得ません。……食料援助の停止、通商の断絶、そして……」
エリナの言葉は、明白な脅迫だった。
(……マジかよ。……こいつら、本気だ)
レンは、追い詰められた。
「……わかりました。……少し、考えさせてください」
レンは、時間稼ぎに出た。
「……フフフ。……賢明なご判断をお待ちしておりますわ。……レン様」
エリナは、満足げに微笑み、優雅に一礼して去っていった。
レンは、その後ろ姿を見送りながら、深くため息をついた。
(……どうすんだよ、これ。……帝国を追い払ったと思ったら、今度は宗教国家かよ。……俺の平穏なスローライフは、一体どこへ行ったんだ……)
レンの胃痛は、もはや慢性的なものとなり、彼の学園生活は、新たな、そして最大の危機を迎えることになった。
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