ステータスなしの元人気メンタリスト、異世界の最強ドラゴンをお手だけで服従させる~目を見ただけで思考が読めるので、魔法使いが詠唱してくれません

マーマー

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第3章第16節 魔女の定義

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 国境の検問所での騒ぎを、エリナの圧倒的な「力」による威圧という形で強行突破した後、レンたちを乗せた馬車は再び動き出した。

 街の中を進むにつれ、レンは背筋が寒くなるのを感じた。
 沿道には、聖女エリナの姿を一目見ようと、多くの市民がひしめき合っていた。彼らは馬車が通ると、一斉に地面にひれ伏し、祈りの言葉を口にする。その姿は、信仰というよりは、恐怖に根ざした服従のように見えた。

 (……なんだよ、この空気。……北○鮮のパレードかよ。……全員、目が死んでるぞ)

 レンは、窓の外の光景を観察(スキャン)した。
 住民たちの服は粗末で、栄養状態も良くなさそうだ。ロムレス王国も貧しいが、ここはそれとは質の違う、精神的な抑圧感がある。彼らの視線は、エリナに向けられる時は熱狂的な崇拝の色を帯びるが、レンや、馬車の外で護衛にあたるセシリアたちに向けられる時は、一転して冷たく、差別的な色に変わる。「魔法を持たぬ下等な異教徒」を見る目だ。

「……熱烈な歓迎ですわね、エリナ様」

 レンの向かいに座るアリアが、窓の外を見ながら面白そうに言った。彼女の膝の上では、小さな雷の精霊がパチパチと火花を散らしている。

「……ええ。……この国の民は、神の奇跡を何よりも尊びますから」

 エリナは、アリアの膝の上の精霊を一瞥し、にっこりと微笑んだ。

「……ですが、アリア様。……一つ、忠告しておきますわ」

 エリナの声のトーンが、わずかに下がった。

「……この国では、教会の許可なく魔法を使うことは、重罪になりますの。……特に、貴女のような『認定されていない術者』が力を振るえば……」

 エリナは言葉を切り、愛らしい仕草で首を傾げた。

「……『魔女』として、火刑に処されることになりますわ」

 ――魔女狩り。
 その単語が、レンの脳裏をよぎった。

 (……マジかよ。……冗談じゃねぇぞ。……アリア、絶対に変なことすんなよ!?)

 レンがアリアの方を見ると、彼女は怯えるどころか、頬を紅潮させていた。

「……ククク。……『魔女』、ですか。……悪くない響きですね。……この身に宿る深淵の力が、神の秩序すら脅かすというのですね……!」

 (……違う! そうじゃない! ……喜ぶな馬鹿! ……お前、本当に火炙りにされるぞ!?)

 レンは頭を抱えた。この中二病娘には、事の重大さが全く伝わっていない。

「……ご安心ください、エリナ様。……私の弟子は、私がしっかりと管理します」

 レンは、引きつった笑顔で請け合った。
 エリナは満足げに頷いた。

「……ええ、期待しておりますわ。レン様。……貴方は『賢者』。……賢明な判断ができるお方だと、信じております」

 その言葉は、「私の管理下から外れたら、どうなるか分かっているな?」という無言の圧力だった。

 馬車は街を抜け、荒涼とした街道を進んでいく。
 窓の外、遥か上空には、レンのペット(時限爆弾)である古龍が、悠々と飛んでいるのが見えた。その巨大な影が地上を横切るたびに、街道を行き交う巡礼者たちが悲鳴を上げて逃げ惑うのが、豆粒のように見える。

 (……あいつも連れてきたのは失敗だったか? ……いや、置いてきたら置いてきたで、学園を更地にしてただろうしな……)

 レンは、空を見上げながら、深いため息をついた。
 前門の狂信者、後門の魔女狩り、上空の怪獣。
 聖教国の首都への旅路は、レンの胃壁を削りながら続いていった。
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