異世界勇者のアフターライフ

あきょう

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異世界勇者、世界を少し変える

閑話、しんごのうきうきがっこうらいふ

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 朝家を出て、学校へ向かう道。朝早くから寒い外を行く学生がちらほらと見受けられます。

 ぼく的にはあんまり歩きたくないから嫌いなのですが、最近は浮遊魔法の練習がてら少し浮いて歩くフリをしてるので、ちょっとだけ楽しい登校時間になっています。

「信吾おはよー!」

 そんな登校中の道で、ツバサくんがぼくに声をかけてくれました。幼稚園からの付き合いで、運動神経抜群のモテモテ男子です。今日もソフトモヒカン(パパ曰くベッカムヘアだそうです。ペンギンか何かですかね?)が似合いますね。

「ツバサくんおはよー。空手の朝練はいいんですか?」

「テスト期間だから休みだってさ!超つまんねーの」

 ツバサくんは空手の有段者なので、腕っぷしが凄く強いんですよね。多分今のぼくが本気で戦ったら勝っちゃいますけど。

 まぁその分勉強はからっきしなので、僕が教えてそこを補ってたりします。2人でひとつ、比翼連理とはよく言ったものですねぇ。

「まぁ、できないとこは僕が教えますから安心してくださいよ」

「その勉強、あたしも混ぜて!」

 ツバサくんとの会話に、キヨコちゃんも混ざってきました。中学校で同じクラスになってからの付き合いなのですが、何故か凄く馬が合い、今では幼馴染レベルの中になってます。

 というか女子の友達もだいぶ多いんですよね。たぶんぼくの見た目がこんななんで、多分他の男子よりとっつきやすいのかなぁと考察してます。

「最近信吾何してるの?放課後すぐ帰っちゃうし、休日の付き合い悪いし、あたしも他の女子たちも寂しがってるよ?」

「そーそー!俺らも信吾いねぇと始まんねーって言ってるからさぁ。遊ぼうぜ?」

 最近知り合った年上の男性に魔法の使い方を教えてもらってるんだー!なんてことは口が裂けても言えません。絶対不思議ちゃんだと思われちゃちゃいますからね。

 確か今日はシモンさんも夜まで帰らないとか言ってたはずですし、友達付き合いも大切にしないといけませんね。

「いいですよ。じゃあ今日はテストも近いですしみんなで勉強会しましょうか!」

「えー!駄菓子屋行こうぜ!ベビーカステラ食おうぜ!」

「男子は駄菓子屋行ってなよ!女子は勉強するから」

 わーわーいいながらわちゃわちゃする時間、ぼく割と嫌いじゃないんですよね、ふふふ。

「ほら2人とも。早く学校に行かないと遅刻になっちゃいますよ!」

「遅刻はやべー!俺皆勤賞狙ってるから!先行くわ!」

 ぼくが促した瞬間、話を早々に切り上げて走り出したツバサくん。元気が有り余ってますね、朝練がない時は大体あんな感じなので、手を振って見送ることにします。まだ余裕はあるので、ぼくとキヨコちゃんは徒歩で登校続行。

「ホント、騒がしいよね男子って!」

 ツバサくんが見えなくなったあたりでそう言ってぼくに同意を求めてくるキヨコちゃん。

「ぼくもその男子の1人なんですけどね」

「信吾はいいのー!他の男子と違って可愛いし下ネタも言わないから!」

 うーん、ぼくって男子として全くみられていないですよねーこれ。逆説的に下ネタ言った方が男子としてみられるってことなんですか?ロジックが欲しいですねぇ。

「ま、ぼくは他の友達とも仲良くできればそれでいいのでね。さあそろそろ急ぎましょう。早くしないと本当に遅刻ですよ」

「あれ?もうそんな時間?まぁいっか。いそご!」

話を早々に切り上げて、僕の前をいくキヨコちゃん。その横の路地からは、急に飛び出してきた車が





 気がついたら、キヨコちゃんを抱えて車を避けてました。空を飛ぶ訓練で少し中に浮いていてて良かった……緊張のあまり地面に落ちちゃいましたけど、それがまたらしい感じになりましたね。

「あ、あぶ、危なかった……し、しんごぉ、ありがどぉー!」

 抱きつきながら、号泣するキヨコちゃん。危ないところでしたねぇ。

「ちゃんと車がきてるか確認しないと危ないですからね!」

「ぎをづげるゔー!!」

 なかなか泣き止まないキヨコちゃん。結局泣き止むまでそばにいたので、登校は遅刻ギリギリになったのでした。


 







 登校後、すぐに先生から呼び出されました。どうやら学校にもしっかり通報が入ったようで、キヨコちゃんは病院に検査に行き、僕は学校から簡単に聴取を受けて、全校生徒の目の前で校長先生から表彰され

「そんときの信吾まじカッコよかったから!さっ!て動いてガッシリ私のこと捕まえて助けてくれたの!」

 次の日からキヨコちゃんの、自慢話という名の宣伝活動が始まりました。女子からは女の子を助けた王子様として、男子からはあいつもやる時はやる奴なんだ的な意味合いで注目される事になってしまい、

「気疲れが凄い。です」

 今はツバサくんに愚痴っている真っ最中です。

「おーおー、びくドンは大変だな」

 からかい気味に僕の話に同意するツバサくん。ちなみにびくドンはこの2日内で出来た僕のあだ名で、キヨコちゃんを助けた→救世主→メシヤ→飯屋→びっくりドンキー→びくドンという、中学生特有の言葉遊びから来たものです。ドンキーくらいになったら原型無くなっちゃった旨を伝えたいと思います。

「まぁ、信吾も清子も無事でよかったよ。2人とも死んでたりしたら俺絶対後悔したもん」

 鉛筆を咥えながらツバサくんが笑います。そうですよね。たぶんあの時一歩間違えたら、ぼく死んでたんですよね。今更ながら怖くなってきました。

 ぼくって結構、熱い奴だったんですね。ゆくゆくはこのまま改造手術なり魔法的マスコットと契約なりしてヒーローになりたいものです。

 実はシモンさんがマスコット枠だったりして?なんて思って少し笑っていると、ツバサくんがスマホの画面を見せてきました。

「信吾ネットニュースになってんじゃん!」

 記事を見ると、『スーパーヒロイン友人を救う』……って!

「僕女の子扱いじゃないですか!!!?」

「え?そうなの?英雄扱いでいいじゃん」

 記事の全容を見ると、あーダメですね。写真とTwitterの話だけを聞いた、中身ペラペラの速報記事です。

「即刻削除依頼ですよこんなの!というか誰ですかこの写真撮ったの!!」

「多分だけど、お前ら轢き掛けた運転手じゃね?」

 ツバサくんからの指摘を受けて改めて画像を見ると、なるほど確かにこの近さで取れるのは運転手くらいのものですね!!!!モラル!!!!!!

「あー嫌だ……こういう目立ち方すると家族がお祝いするんですよ……」

 キヨコちゃん救出も黙っていたのにこんな形で流出するとは……別に悪い気はしないんですよ?ただ、少食かつあっさりしたものが好きなぼくに、最低3日間のケーキや焼き肉祭りは重いんですよね……




 その後実際に行われた「人助け記念祭」で僕が地獄を見るのは、また別のお話です。
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