異世界勇者のアフターライフ

あきょう

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異世界勇者、世界を見る

勇者、研究を見る。あとスカウトされる。

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「着いたぞ、ここだ」

 車に揺られること2時間。蛇子に連れられた先は、まさかの仙台。中心街からは少し離れているものの、物流倉庫を改造して作ったであろうその場所は、都市迷彩としてとても役立っていた。走った方が早かったが、こっちの方が絶対楽なので何も言わない。戦場へ急行するときはともかく、ただの移動ならできるだけ楽をしたいからな。

「俺らの所属する組織、と言うよりこの世界の国々全ては特別超害獣が持つ謎のエネルギーをどうにかして自分の手元におきたいと躍起になっている。その研究施設のうちの一つがここだ。主に兵器利用についての部門だな」

 足早に進む蛇子の後ろを進む。途中何人かに止められるも全て「本部垂涎すいえんの人物をお連れした。通せ」の一言で突破。そうしているうちに製作開発を行なっている部署へ到着した。

「おい蛇子、普通こう言うのはお偉方に通すなり俺を拘束しようとしたりするもんじゃあないのか?」

「俺は無駄が嫌いだ」

 本当かぁ?なぁ後ろ向いてないでお前の顔見せろよ蛇子。

「外で話してたことの続きだ。どこの国でも謎のエネルギーの抽出、利用方法については全く持って不明。死んだ害獣共はものの数時間で完全に腐敗する為解剖等ができない」

 そうだな。魔法生物は基本的に倒した後数分で腐敗が進み、大体3時間後には完全に腐り落ちる。腐敗の行程も、まるで見せたくない部分を隠すように腐り落ちていくため、研究初期のころは本当に苦労してたらしいな。

「見るためには中身を掻っ捌く必要があるが、そもそも生きた検体を手元に置くことが難しく、万が一生け捕りにできても生物ごとの構造があまりにも違いすぎてどこで生成しているが分からないことが殆ど。人型かつ会話できるものは一体だけ捕縛したものの、こいつはそもそも特殊技能のみで不思議エネルギーについてはからきしだったからな」

 実は後々時間停止魔法の簡易版が出来上がり、魔物どもの解析が一気に進んだ。って話を聞いたらこいつらどう思うんだろうな。

 いやそんなことより、魔力のない特殊技能持ちの最難度?そんな奴捕まえたのか。というかそもそもなんでそんな奴がこっちの世界出身ってわかったんだろうな。しかしここで話の腰を折るのもなんだし、このまま話を続けてもらおう。

「だが、お前が与えてくれた知識によって研究が飛躍的に進んだ。当初三人で行った魔力研究、ある程度の研究結果並びに技術の解明が出来た段階で技術部に成果を提出。アイツらの度肝抜いた顔は笑えたぜ」

「そんで、その技術部と開発した鎧の、最終確認を俺にしろと。それは戦士としてか?技術者としてか?」

「両方だ。俺は案外お前を買っているんだぜ?」

 だろうな。といった顔で蛇子を見る。ほんとお前俺のこと好きだよな。

「さて、まずは技術屋としてだ。ついたぞ」

 そういって蛇子が扉を開けると、なるほど大規模な実験場だな。様々ん機械が所狭しと並び、その中心点にはさまざまな人だかり。そしてこの国の粋を集めて作られたであろう装備の数々。設計図や回路についても見やすくおいている。

 最初のうち、俺を見つけた周りの人間は警戒を示したり小さく悲鳴を上げたりとすごい勢いで警戒されていたものの、蛇子が彼らに近づき何かを話すと途端にワラワラ群がってきた。

「あなたがかの有名な!」「二時間前の戦闘見てました」「先ほどの鎧の瞬間的な脱着についてお伺いしたいことが」「結局敵なんですか味方なんですか」「超振動ナイフを作ってみたんですけど魔力動作に不具合があるんですがどう処理すればいいんですか」

「ぐいぐい来るなお前ら!」

 流石知識を探求する人間の集まりといったところか、我が強い。何とか引きはがし、宥めすかして装備一式を見る。

「まぁ、試作としちゃあ上出来だ。ただまだそっちの世界の常識に引っ張られている感じがあるな」

 信吾のは、なんて言うか特撮やアニメによっているんだよな。アイツの好きなものを全部再現してやろうって気概がある。こっちのはアレだな。魔力を人体から摂取可能な原動力として見ていて、それを基に人間の限界値を引き上げている感じだ。魔法の在り方としては信吾の方が正しい。

「それなら一度そちらの装備も見せていただきたいものですなぁ。参考にさせて貰います」

 そう言って研究員の一人が物欲しげな顔で見ているが、まぁ、ぶっちゃけそのつもりで来てるからな。正直俺だけでこの国、この世界を守り抜くのは不可能なわけで、つまりこいつらの頑張りに掛かっているってことだ。ここまで魔力を技術に昇華したのなら、もっと教えても問題ないだろう。









「し、質量や熱量すらも体から捻出できるエネルギーが人体から放出できる???」

「更にそれを物体に付与、変形することも可能、いや、理解しているつもりで入るんですけど、納得が全くできなくて…」

「勇者さんウチで働きましょうよ。楽しいですよ技術班」

 いや、ここで働くのは絶対楽しいだろうが、信吾を守れなくなるのとこの組織に入らなきゃいけないのはちょっと…

 などと葛藤しているうちに、技術者の一人がこんなことを言い出した。

「一度実戦形式でデータ撮りたいんですけどいいですか?」

 まぁ、そうなるよなと。知識の裏付けには実践が不可欠だ。ただ俺の相手が務まるやつ、この中には

「蛇子さんお相手頼めますか」
 
 いたわ。確かに蛇子なら大丈夫そうではあるが、コイツあれからどこまで強くなったんだろう。魔力無しで中難度の冒険者一人くらいの運動機能見せつけてたからな。俺なんか簡単に超えていそうな気もする。

「勝手に決めんなオメェら。すまんが頼めるか?」

 そして言葉の上では謝っているものの、全く謝る素振りのない蛇子。さてはこの展開を待っていたなお前。

「いいぞ、どこで」

「試験室がある。いくら暴れても問題ないつくりだ、そこで始めようや」

 ほんとノリノリだなお前!何ずんずん進んでんだ蛇子!



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