遺品の中に〜 戦闘狂な夫は、別居妻に浮気疑惑をかけられたまま亡くなった

琥珀

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モノクロの初夜*

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 問題は、初夜で起こった。
 二人は数秒も見つめ合うことすら、一度も経験した事が無かったのだ。
 さて、どうしたものか。
 薄いオーガンジーのような素材の着衣から艶かしく透ける素肌が、薄暗い部屋の揺らめく灯りに照らされている光景は、まるで自分がいつもの自分で無いような気がした。
 普段は備わっていない色気が、ここぞという時に自然と湧き上がってくるのは、女という生物であるからだと初めて知った。
 濃い目のルージュをひいた唇から小さな溜息が出てしまった。
 瞬間、リヒトと目があった。

「……エリサ。嫌なのか」

「あっ。申し訳ございません。そんなつもりではなくて。とても、緊張しておりまし……っ!きゃっ……ん……」

「エリサ」

「リヒトさ、ま……」

 エリサは天蓋付きの純白のキングベッドに押し倒されていた。
 リヒトの麗しい顔を間近で見るのは抵抗があった。
 罪悪感に似た感覚が、エリサの脳内を駆け巡る。
 誰もが認める国の英雄で憧れ。
 嫁にしてもらいたい男性ナンバーワンなのだ。
 あまりの美しさに、思わず目を逸らしてしまった。

「まっ、ま、待って下さい」

「どうした?」

「あ……ぅ。何でも無いです」

「……父や母が早く孫の顔が見たいらしいから。続ける」

 そして突然、リヒトが覆い被さってきた。
 そして、力任せに初キスを奪われた。
 歯が当たって、とても痛かった。
 その後の行為も荒々しく、正直、快感などは無く、愛情の感じられないものだった。
 孫を見せてサッサと別居か離婚しよう、そうしよう。
 と、誓った夜だった。

 **** 

 現在。
 リヒトは本邸のある王都には寄り付きもしなかったので、彼を取り巻く環境は正直なところ知りもしないのだ。
 何が好きで、何が嫌いだったのか。
 今、気に入っているものは何なのか。
 夫婦といえども、お互いを全く干渉せず暮らしてきた。

 見た事のあるベッドサイドの古びた引き出しは本邸のリヒトの書斎にあったものだ。
 いつの間にやら処分したのかと思っていたら、ここにあったのか。
 以前、リヒトに頼まれて書斎で探し物をした時に、『引き出しは決して触れないように』と言われたのを思い出した。
 とても几帳面だったリヒトは、引き出しに鍵をかけていた。

『そうだ、もう本人は亡くなったんだから、私が開けて中身を見ても良いのよね?だって相続人だもの』

 引き出しの鍵は遺品整理で見つけていた。
 恐る恐る、引き出しの鍵を回すと、カチャン……と開いた音が部屋に響いた。
 そっと開ける。
 エリサの胸は高鳴った。
 初めて見る亡夫の真実。
 中には、更に鍵付きの化粧箱が入っていた。
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