symbolic【短文・詩】

琥珀

文字の大きさ
5 / 43

赤に囚われる

しおりを挟む
額にじんわりと滑った汗が滲む。
拭う事も出来ずに、その場に立ち竦んでいた。

気づいた時には、空虚な白い箱の中に居た。
ボクの心を支配しているのは虚無だけだったのに。
何が始まるんだ。

「さぁ、どの赤い紐を引く?」

響き渡る誰かの声が、脳幹を刺激する。

気づくと、目の前に無数の赤い紐が、ぶら下がっていた。
見上げても、靄に覆われて見通せない。
褪せてくすんだ朱色の紐は、ずっと誰も引かなかったのだろうか?
紛れるように真新しい鮮やかな赤い紐も点在している。

赤に覆われて、息苦しさを覚え、目を背けたくなる。
得体の知れない恐怖心が込み上げ、胸が一層締め付けられる。

『怖い、またあんな想いはしたくない。裏切られたくない──』

この『想い』とは何だろうか?
知らない。分からない。
記憶が、無い。

目の前にある無数の赤い紐たちに問う。
過去に此処へ訪れた者達は、選択した紐に何を感じて決断したのだろうか?

ぼんやりと全体を見回してみると、ふと目に止まった紐があった。

紐の先端には、長く透き通る程に艶やかな毛髪が螺旋状に絡まっていた。
どうしても気になってしまう。
吸い込まれるように惹かれてしまう。
そっと、手を伸ばして触れた瞬間、ボクの全身が光に包まれた。

「いってらっしゃい。今度こそは、良い人生を──」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...