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三好長慶
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帝には拝謁したが、足利将軍には拝謁出来なかった。
なぜなら京に居なかったからだ。
景虎が上洛する一ヶ月前、足利公方義輝が籠る東山の霊山城を、三好長慶が攻め立て、義輝を京から追い出している
京の町を我が物顔で歩く三好の侍たちを眺め、世も末だな、と景虎は思う。
とは言え、都を手中にしている天下人、三好長慶がいかなる男か、景虎も興味があるし、知っておくべきだとも思った。
「どのような御仁だ?」
親綱に尋ねると、詳しく説明してくれた。
三好家は、清和源氏の名家、小笠原家の支流で、代々阿波の守護代を務めている。
阿波の国が管領細川家の支配に入ると、その被官として力を伸ばしていく。
長慶の曽祖父、之長が阿波から出て、細川家の家老として活躍した。
之長の長子は長秀は、之長より先に亡くなっている為、嫡孫の元長が継ぎ、その息子が長慶だ。
半将軍とまで呼ばれた管領、細川家の十二代当主政元は、子をなさず、三人の養子を迎えた。
澄之、澄元、高国の三人の養子は、政元の死後、当然、家督を争う。
関白九条家からの養子であった澄之は早々に敗れ、阿波の細川家の澄元と、野州細川家の高国が争い、それは澄元の息子、晴元、高国の甥で養子の氏綱の代まで続く。
三好家は、之長以来、澄元、晴元親子の為に奮戦した。特に元長は、高国を討ち取っている。
しかし元長は最期、主君晴元に見捨てられ、一揆勢に討ち取られている。
父を見殺しにした晴元に、逆らうことなく長慶は仕え、氏綱やその他の晴元に敵対する勢力と、戦い続ける。
だが力を付けた長慶は、氏綱と和睦、晴元を攻めて京から追い出したのだ。
景虎が、長慶という男の注目している点は、晴元を追い出したのに、氏綱を管領にしていないところだ。
更に言えば、長慶の手元には、堺公方と呼ばれる、義輝の従兄弟、義栄がいる。
普通に考えれば、義輝と晴元を京から追い出したのだ、義栄を将軍にして、氏綱を管領にすればよい。
そうして長慶が実権を握る。それが道理だ。
だが長慶はそれをしていない。
もっと正しく言えば、しなくて良いのだ。
京の街を、三好の侍が、我が物顔で歩いている。
殆どが歴とした侍ではない。上方の戦さの主力、足軽だ。
「あれが三好の侍大将、松永甚助長頼です」
足軽どもの先頭を歩く男を、神余親綱が指差し、景虎に告げる。
「氏素性の定かで無い男です」
これが三好の力である。
景虎は越後の国衆地侍をまとめる為、関東管領の上杉憲政を引き取った。
しかしそんな事、長慶はしない。しなくて良い。
阿波は瀬戸内の交通の要衝で、越後より交易の盛んな場所だ。
それに名産として藍がある。
阿波の藍はそれこそ、越後の青苧の何倍も銭になるのだろう。
その銭で長慶は、大量の足軽を集めているのだ。
だから公方も管領も、関係ないのである。
親綱は苦い顔で、三好の侍大将、松永長頼を見ている。
歴とした武家の出で、領地を失い三代浪人していた親綱には、松永長頼という人物は受け入れられないだろう。
しかしそれが、天下人三好長慶の力だ。
そしてその力の源は、銭の力、クベーラの力なのだ。
「・・・・・・・・」
景虎は三好の足軽衆を眺めながら、三好長慶の事を思う。
自分より優れたクベーラの化身であり、天下人である三好長慶を。
なぜなら京に居なかったからだ。
景虎が上洛する一ヶ月前、足利公方義輝が籠る東山の霊山城を、三好長慶が攻め立て、義輝を京から追い出している
京の町を我が物顔で歩く三好の侍たちを眺め、世も末だな、と景虎は思う。
とは言え、都を手中にしている天下人、三好長慶がいかなる男か、景虎も興味があるし、知っておくべきだとも思った。
「どのような御仁だ?」
親綱に尋ねると、詳しく説明してくれた。
三好家は、清和源氏の名家、小笠原家の支流で、代々阿波の守護代を務めている。
阿波の国が管領細川家の支配に入ると、その被官として力を伸ばしていく。
長慶の曽祖父、之長が阿波から出て、細川家の家老として活躍した。
之長の長子は長秀は、之長より先に亡くなっている為、嫡孫の元長が継ぎ、その息子が長慶だ。
半将軍とまで呼ばれた管領、細川家の十二代当主政元は、子をなさず、三人の養子を迎えた。
澄之、澄元、高国の三人の養子は、政元の死後、当然、家督を争う。
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三好家は、之長以来、澄元、晴元親子の為に奮戦した。特に元長は、高国を討ち取っている。
しかし元長は最期、主君晴元に見捨てられ、一揆勢に討ち取られている。
父を見殺しにした晴元に、逆らうことなく長慶は仕え、氏綱やその他の晴元に敵対する勢力と、戦い続ける。
だが力を付けた長慶は、氏綱と和睦、晴元を攻めて京から追い出したのだ。
景虎が、長慶という男の注目している点は、晴元を追い出したのに、氏綱を管領にしていないところだ。
更に言えば、長慶の手元には、堺公方と呼ばれる、義輝の従兄弟、義栄がいる。
普通に考えれば、義輝と晴元を京から追い出したのだ、義栄を将軍にして、氏綱を管領にすればよい。
そうして長慶が実権を握る。それが道理だ。
だが長慶はそれをしていない。
もっと正しく言えば、しなくて良いのだ。
京の街を、三好の侍が、我が物顔で歩いている。
殆どが歴とした侍ではない。上方の戦さの主力、足軽だ。
「あれが三好の侍大将、松永甚助長頼です」
足軽どもの先頭を歩く男を、神余親綱が指差し、景虎に告げる。
「氏素性の定かで無い男です」
これが三好の力である。
景虎は越後の国衆地侍をまとめる為、関東管領の上杉憲政を引き取った。
しかしそんな事、長慶はしない。しなくて良い。
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その銭で長慶は、大量の足軽を集めているのだ。
だから公方も管領も、関係ないのである。
親綱は苦い顔で、三好の侍大将、松永長頼を見ている。
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しかしそれが、天下人三好長慶の力だ。
そしてその力の源は、銭の力、クベーラの力なのだ。
「・・・・・・・・」
景虎は三好の足軽衆を眺めながら、三好長慶の事を思う。
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