私訳戦国乱世  クベーラの謙信

zurvan496

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  北条高広

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 越後に戻った景虎の元に、ある知らせが届く。
 家臣の北条高広が、甲斐の武田晴信に通じ、謀反を起こそうとしているというのだ。
「まことか?」
 景虎は信じられなかった。

 北条丹後守高広は、陽気で豪放磊落な男だ。粗忽なところはあるが、裏表の無い、およそ謀叛という言葉の、似合わぬ人物である。
「何かの間違いだろう」
 景虎が首を捻る。
「拙者もそう思いたいのですが・・・・・」
 報告に来た本庄実乃が、言いにくそうに告げる。
「丹後守どのは、その・・・・拙者をよく思っておりませぬので・・・・」
 まぁな、と景虎は頷く。



 初陣以降実乃は、景虎の側近として、家中で重きをなしている。
 それを気に入らないと思う者は多い。
 実乃は家柄も良くなく、宇佐美定満の様に名が知れているわけでも無い。
 初陣の時に居たから、景虎が側に置いている。
 それで実乃が増長していると、思っているのだ。

 ただ高広なら、実乃が気に入らないのなら、謀叛など起こさず、堂々と景虎に言うはずだ。
 その点が府に落ちない。

「そもそもその話、どこから出たのだ?」
「それが・・・・その・・・」
 顔を顰めて、実乃が答える。
「安田越中どのが・・・・」
 なんだ、と景虎は安心する。
「それならただ単に、越中が丹後を陥れようしているだけだろう」
 安田越中守景元は、北条高広を恨んでいる。
 もっと正しく言えば、追い落とそうとしているのだ。

 
 安田家と北条家は、源頼朝の側近、大江広元を祖とする同族だ。
 景元の父、広春は、景虎の父、為景の側近の一人で、守護、上杉房能の戦いで戦功を上げ、安田家だけでなく、北条家の家督と継ぐことを許されたのだ。
 しかし広春が亡くなると為景は、安田の家を景元に、北条の家を高広に継がせた。
 両家を継がせたのは、あくまで広春にその器量と勲功があったからだ。
 景元にはそれだけの、器量も手柄もない。
 その事は、景虎も越後中の者も、当然だと思っている。
 一人、景元は納得していない。
 だから景元は、高広を追い落として、北条家の家督も得たいのだ。



 その景元の言葉である。
「信用出来ぬわ」
 景虎はピシャリと断ずる。
「ですが・・・・・家中で噂になっておるのは、事実です」
 眉を寄せ、実乃が応えた。
「捨ておくわけには・・・・・」
 うむ、と景虎は唸り、そうだな、と頷く。
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