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  土地争い

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「なら、早速、手解きとやらをして頂きたい」
 そう景虎が言うと、ほぅ、と定満が呟く。
「何か困り事でも?」
「この数百年・・・・・」
 顔を顰めて景虎は続ける。
「越後の国主の困り事は、変わりませぬよ・・・」

 数百年変わらない越後国主の困り事とは、当然、国衆地侍の土地争いである。
 今回は魚沼郡妻有郷節黒城主、上野家成と、同じく妻有郷千手城主、下平吉長の二人が争いを起こした。
 それで景虎の側近である本庄実乃が審議を行い、家成の訴えの方が理があると言うので、景虎もそう裁決を下した。
 だが
当然、吉長は納得しない。

 そもそも国衆地侍の土地争いなど、どちらかが正しいなどと言う事はない。
 だから正しい裁決などあり得ないし、双方が納得する公平な決定など無いのだ。

 不服の吉長は、当然の行動にでる。
 実乃と対立している、大熊朝秀に助けを求めたのだ。
 
 大熊家は越後守護上杉家の重臣の家で、朝秀は勘定奉行として上杉定実に仕えていた男だ。
 その朝秀にすれば、景虎は守護代の末子が、兄を追い出し家督を奪い、更に守護上杉家が断絶したのを良いことに、国主になった謀叛人。
 ましてその側近の実乃など、謀叛人の景虎の寵を頼みにする佞臣。
 当然、吉長の頼みを聞き入れ、実乃を攻撃する。

 景虎とすれば朝秀を排除したいが難しい。
 あくまで景虎は、越後守護上杉家が断絶したので、その代わりとして、守護代の身で国を治めている過ぎない。
 強引に朝秀を排除すれば、他の国衆たちから反発が起こる。

 
「まったく、頭が痛い」
 顔を顰めて傾けて、景虎がぼやく。
「いっそ全て、投げ出したいくらいでござる」
「そうすれば良うございます」
 定満の言葉に、ハハハハハッ、と景虎が笑う。
 しかし定満は微笑んだままだ。
「・・・・・まことに、でござるか?」
 笑うのをやめ、真剣な顔で、景虎は尋ねる。
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