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死
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しばし意識を失い、また目を覚ます。
夢なのか現実なのか、謙信にも分からない。
僅かに開く瞼から外を覗くと、大概姉の綾が看病してくれていた。
たまに居なくなると、二人の侍女か、他の者に代わっている。
おそらく綾が疲れて休んでいる時、代わっているのだろう。
身体が動かないが、頭は動く。
正しく言えば、物を考える事しか、今の謙信には出来ないのだ。
まさかこのような大事な時に中風とは、自分に呆れてしまう。
しかしふと、疑問に思う。
本当に中風なのか?
まさにこれから大事を為すという時に、あまりにも都合悪く中風になった。
一服盛られたのでは?
だがそうなると、誰に?という疑問が浮かぶ。
普通に考えれば北条氏政という事になるだろう。
北条にはお抱えの忍び、風魔衆もいる。
だが少し、妙な気もした。
もし氏政が遠山康光の策に気付いたのなら、長綱を処断すれば良い。
謙信に一服盛る必要はない。
それに風魔衆を使い一服盛るなら、もっと以前にすれば良い。
今この時なのはおかしい気がする。
春日山の城には加藤段蔵がいる。
特に謙信は段蔵に何か命じている訳ではない。勝手に住み着いているという感じだ。
しかし入り込んだ忍びの始末ぐらいは、やっているだろうと思っている。
その段蔵がやられたという事になる。
段蔵は以前、己の事を関東一の忍び言い、風魔衆には遅れを取らないと言った。
それがやられたというのが、妙な気がする。
風魔の忍びに優れた者が生まれたのか、或いは段蔵がただ油断しただけなのか。
ふと謙信は、段蔵の言葉を思い出す。
段蔵は己の事を関東一の忍びと言った。謙信が天下一ではないのか?と問うと、上方に自分より上の忍びがいると答えた。
その者は忍びの公方、自来也というのだと。
ではその自来也が一服盛ったと言うのだろうか?
謙信の身体が冷たくなる。
その自来也にやられた段蔵の死体が、天井裏か床下に転がっている。
そんな光景を謙信は頭に描く。
ならその自来也を、誰が送って来たのか?
上方にいて謙信を葬りたい者。
そんな者、一人しかいない。
織田信長。
謙信が邪魔になり、最強の忍びを送り込んで来たのである。
納得出来る話だ。
近くで声がする。
「・・・・・・・今、なんと申されました?」
そう言って誰かが、謙信の身体を起こす。
無理矢理瞼を少しだけ開けると、そこに女が一人いた。
綾ではない。
直江景綱の妻で、山吉豊守の姉だ。
綾が休んでいる時、代わりに看病をしてくれている。
その女が、ふんふん、と頷く。
何をしておるのだ、此奴は?
勿論、謙信は言葉など発することは出来ない。
それなのに何かを喋っているような仕草を、景綱の妻はしている。
「分かりました、お殿さま」
景綱の妻は大声を上げた。
「お殿さまのお言葉にございます」
周囲に向かって景綱の妻は告げた。
「跡地ぎは喜平次さまであると」
おおっ、と声が上がる。
僅かな視界から周囲を見ると、景虎に景勝、そして直江信綱や斎藤朝信らがいた。
は?は?は?どういう事だ?
謙信は混乱する。
何を言っておるのだ?この女?
身体を動かそうとするが、全く動かない。
どうなっている?この女、織田の回し者なのか?
混乱しながら、同時に謙信の意識が少しずつ薄れていく。
その時、薄れゆく謙信の視界の端に、何が映った。
笑っている。
景虎も景勝も、信綱や朝信らも、皆戸惑っているか硬い表情なのに、一人だけ微笑んでいる者がいた。
景勝のすぐ背後に控えている少年。
たしか・・・・・彼奴は・・・・喜平次の小姓・・・・いつも喜平次と一緒にいる・・・・名はたしか・・・・。
ゆっくりと謙信の意識は失われていった。
名は・・・・・樋口・・・与六・・・・。
カクヨムに連載中の徳川家康編、百二十二話に続く。
夢なのか現実なのか、謙信にも分からない。
僅かに開く瞼から外を覗くと、大概姉の綾が看病してくれていた。
たまに居なくなると、二人の侍女か、他の者に代わっている。
おそらく綾が疲れて休んでいる時、代わっているのだろう。
身体が動かないが、頭は動く。
正しく言えば、物を考える事しか、今の謙信には出来ないのだ。
まさかこのような大事な時に中風とは、自分に呆れてしまう。
しかしふと、疑問に思う。
本当に中風なのか?
まさにこれから大事を為すという時に、あまりにも都合悪く中風になった。
一服盛られたのでは?
だがそうなると、誰に?という疑問が浮かぶ。
普通に考えれば北条氏政という事になるだろう。
北条にはお抱えの忍び、風魔衆もいる。
だが少し、妙な気もした。
もし氏政が遠山康光の策に気付いたのなら、長綱を処断すれば良い。
謙信に一服盛る必要はない。
それに風魔衆を使い一服盛るなら、もっと以前にすれば良い。
今この時なのはおかしい気がする。
春日山の城には加藤段蔵がいる。
特に謙信は段蔵に何か命じている訳ではない。勝手に住み着いているという感じだ。
しかし入り込んだ忍びの始末ぐらいは、やっているだろうと思っている。
その段蔵がやられたという事になる。
段蔵は以前、己の事を関東一の忍び言い、風魔衆には遅れを取らないと言った。
それがやられたというのが、妙な気がする。
風魔の忍びに優れた者が生まれたのか、或いは段蔵がただ油断しただけなのか。
ふと謙信は、段蔵の言葉を思い出す。
段蔵は己の事を関東一の忍びと言った。謙信が天下一ではないのか?と問うと、上方に自分より上の忍びがいると答えた。
その者は忍びの公方、自来也というのだと。
ではその自来也が一服盛ったと言うのだろうか?
謙信の身体が冷たくなる。
その自来也にやられた段蔵の死体が、天井裏か床下に転がっている。
そんな光景を謙信は頭に描く。
ならその自来也を、誰が送って来たのか?
上方にいて謙信を葬りたい者。
そんな者、一人しかいない。
織田信長。
謙信が邪魔になり、最強の忍びを送り込んで来たのである。
納得出来る話だ。
近くで声がする。
「・・・・・・・今、なんと申されました?」
そう言って誰かが、謙信の身体を起こす。
無理矢理瞼を少しだけ開けると、そこに女が一人いた。
綾ではない。
直江景綱の妻で、山吉豊守の姉だ。
綾が休んでいる時、代わりに看病をしてくれている。
その女が、ふんふん、と頷く。
何をしておるのだ、此奴は?
勿論、謙信は言葉など発することは出来ない。
それなのに何かを喋っているような仕草を、景綱の妻はしている。
「分かりました、お殿さま」
景綱の妻は大声を上げた。
「お殿さまのお言葉にございます」
周囲に向かって景綱の妻は告げた。
「跡地ぎは喜平次さまであると」
おおっ、と声が上がる。
僅かな視界から周囲を見ると、景虎に景勝、そして直江信綱や斎藤朝信らがいた。
は?は?は?どういう事だ?
謙信は混乱する。
何を言っておるのだ?この女?
身体を動かそうとするが、全く動かない。
どうなっている?この女、織田の回し者なのか?
混乱しながら、同時に謙信の意識が少しずつ薄れていく。
その時、薄れゆく謙信の視界の端に、何が映った。
笑っている。
景虎も景勝も、信綱や朝信らも、皆戸惑っているか硬い表情なのに、一人だけ微笑んでいる者がいた。
景勝のすぐ背後に控えている少年。
たしか・・・・・彼奴は・・・・喜平次の小姓・・・・いつも喜平次と一緒にいる・・・・名はたしか・・・・。
ゆっくりと謙信の意識は失われていった。
名は・・・・・樋口・・・与六・・・・。
カクヨムに連載中の徳川家康編、百二十二話に続く。
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