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第二章 無償の愛
45 呪い
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「ニャーニャー」
扉越しにルルの鳴き声が聞こえた。
「ルル、どうしたんだ?」
マイルズの声もして扉を引くが、鍵が掛かっている。
「マイルズ、無事か?」
「カイ? 無事ってなにが?」
マイルズは不思議そうな顔で扉を開いた。
腕の中にはルルがいて、抜け出そうとしているのか暴れている。
「ねえ、お友達?」
マイルズの後ろから顔を覗かせたのは、同じ歳くらいで勝気な瞳と赤茶色の長い髪が特徴の女だった。こいつがギルドマスターの娘か?
「うん、そうだよ。こっちはカイ。生まれた時から一緒なんだ。そっちの背の高いのがアレンで、……えっと、君は初めましてだよね?」
俺とアレンのことを紹介しだしたのにも驚いたが、チアに向かって首を傾けながら『初めまして』と言った。俺たちは言葉が出てこなかった。
マイルズがチアを忘れた?
暴れていたルルがマイルズの腕から、チアに向かって飛びかかる。受け止めたチアに向かって「ニャーニャー」と必死に訴えかけているようだ。
「あれ? ルルとも仲良しなんだ」
マイルズが目を瞬かせる。
「なんの冗談だ? ルルはわかるのに、チアはわかんねーのか?」
「チア? 知らない名前だけど」
「ルルはチアの使い魔だろ」
「え? ルルはシーナちゃんの使い魔じゃなかったっけ?」
マイルズは目を瞬かせる。本当にチアのことだけを忘れたようだ。
「どういうことだ?」
アレンに声をかけるが、表情を固くして首を振るだけだった。
チアは奥歯を噛み締めて、泣くのを我慢しているような顔をしている。かける言葉が見つからない。
「カイ、この子はルーラちゃん。俺の彼女。俺たちと同じ歳なんだよ」
ルーラはマイルズの腕に自分の腕を絡めて「よろしくね」と笑う。
部屋に入るよう促されて扉を閉めた。
彼女? なにを言っているんだ?
マイルズはずっとチアが好きだった。そのチアを忘れて、別の女を彼女だと言い出した。
「チア、マイルズは最後に会った時はどうだった?」
「今日の朝が最後だけど、いつもと変わらなかった。私のことも忘れてなんていなかった」
それなら、今日ここに来てからチアを忘れたことになる。
「なあカイ。俺も彼女できたし、シーナちゃんも連れて四人で故郷に顔を見せに行かないか?」
「……里帰りは俺もしたいけど、今のお前とは帰りたくない」
「なんで?」
「チアのことを思い出したら、一緒に帰ってもいい」
マイルズはジッとチアを見つめるけれど、首を傾けるだけ。
「他の女の子ばかり見てると妬いちゃうよ」
「あっ、ごめんね。そんなつもりはないから。俺が好きなのはルーラちゃんだけだよ」
頬を膨らませるルーラに向かって、マイルズは甘ったるい笑顔を向けた。
「あっ!」
アレンが急に叫び出し、驚きすぎて心臓が飛び出るかと思った。
「どうした?」
胸を押さえながら訊ねる。
「呪いだ! 忘却のブレスレット!」
マイルズを指すアレン。マイルズの腕に目を向ける。赤い石が怪しく光るブレスレットをつけていた。マイルズの私物ではない。
ルーラが口角を上げた。その笑顔がゾクリとするほど冷たい。
「それってどんな呪いなんだ? マイルズは大丈夫なのか?」
「忘却のブレスレットは、嵌められると好きな相手を忘れ、嵌めた相手を好きになる。嵌められたら一生取れることはない。マイルズはこの先ずっと、好きでもない相手を好きだと思い込んだままだ」
アレンの説明に部屋がしんと静まり返って空気が重い。
「わかっても外せないの。マイルズはずっと私のもの」
おかしそうに高笑いするルーラにマイルズは目を瞬かせた。
「なんでこんなことをしたんだ?」
「だってマイルズのことが好きなのに、外が騒がしくなったらルルちゃんと帰るって言うし。私にも逃げようって意味わかんないこと言うし。ずっとここで暮らせばいいのに」
ルーラの言葉はとても身勝手だ。
マイルズのことを好きだと言いながら、マイルズの気持ちをこれっぽっちも考えていない。
マイルズが一緒に逃げようって言ったということは、ルーラがここにいるべきではないと判断したからだ。
「もう黙って。あなたの話は聞きたくない」
チアが魔術で大量の水を作り出した。水がルーラを覆い、水球となって閉じ込める。
ルーラは息ができずに、苦しそうにもがいた。
マイルズが助け出そうと水球に手を伸ばすが、直前で弾かれる。チアの魔術はマイルズには触れられない。
マイルズはチアに向かっていく。
「なんでこんなことをするの? 魔術を解いて、ルーラちゃんを出して」
マイルズがチアの腕を握った。
「私のことを忘れたのに、優しいのは変わらないんだね」
チアは眉を下げて、呟いた。
チアに攻撃をやめさせたいのに、マイルズはチアを攻撃しようとはしていない。ボンドのメンバーは肩に入っているギルドの紋章で、味方を傷つけることはない。
攻撃をすれば弾かれる。
マイルズは弾かれることなく、チアに触れている。
「いや、でも、ちょっとやりすぎなんじゃ……」
恐る恐る声を掛けると、チアがルーラに鋭い視線を向けた。
顔だけが出るように水を減らす。
ルーラは酸素を肺に送り込もうと、息を荒げた。
扉越しにルルの鳴き声が聞こえた。
「ルル、どうしたんだ?」
マイルズの声もして扉を引くが、鍵が掛かっている。
「マイルズ、無事か?」
「カイ? 無事ってなにが?」
マイルズは不思議そうな顔で扉を開いた。
腕の中にはルルがいて、抜け出そうとしているのか暴れている。
「ねえ、お友達?」
マイルズの後ろから顔を覗かせたのは、同じ歳くらいで勝気な瞳と赤茶色の長い髪が特徴の女だった。こいつがギルドマスターの娘か?
「うん、そうだよ。こっちはカイ。生まれた時から一緒なんだ。そっちの背の高いのがアレンで、……えっと、君は初めましてだよね?」
俺とアレンのことを紹介しだしたのにも驚いたが、チアに向かって首を傾けながら『初めまして』と言った。俺たちは言葉が出てこなかった。
マイルズがチアを忘れた?
暴れていたルルがマイルズの腕から、チアに向かって飛びかかる。受け止めたチアに向かって「ニャーニャー」と必死に訴えかけているようだ。
「あれ? ルルとも仲良しなんだ」
マイルズが目を瞬かせる。
「なんの冗談だ? ルルはわかるのに、チアはわかんねーのか?」
「チア? 知らない名前だけど」
「ルルはチアの使い魔だろ」
「え? ルルはシーナちゃんの使い魔じゃなかったっけ?」
マイルズは目を瞬かせる。本当にチアのことだけを忘れたようだ。
「どういうことだ?」
アレンに声をかけるが、表情を固くして首を振るだけだった。
チアは奥歯を噛み締めて、泣くのを我慢しているような顔をしている。かける言葉が見つからない。
「カイ、この子はルーラちゃん。俺の彼女。俺たちと同じ歳なんだよ」
ルーラはマイルズの腕に自分の腕を絡めて「よろしくね」と笑う。
部屋に入るよう促されて扉を閉めた。
彼女? なにを言っているんだ?
マイルズはずっとチアが好きだった。そのチアを忘れて、別の女を彼女だと言い出した。
「チア、マイルズは最後に会った時はどうだった?」
「今日の朝が最後だけど、いつもと変わらなかった。私のことも忘れてなんていなかった」
それなら、今日ここに来てからチアを忘れたことになる。
「なあカイ。俺も彼女できたし、シーナちゃんも連れて四人で故郷に顔を見せに行かないか?」
「……里帰りは俺もしたいけど、今のお前とは帰りたくない」
「なんで?」
「チアのことを思い出したら、一緒に帰ってもいい」
マイルズはジッとチアを見つめるけれど、首を傾けるだけ。
「他の女の子ばかり見てると妬いちゃうよ」
「あっ、ごめんね。そんなつもりはないから。俺が好きなのはルーラちゃんだけだよ」
頬を膨らませるルーラに向かって、マイルズは甘ったるい笑顔を向けた。
「あっ!」
アレンが急に叫び出し、驚きすぎて心臓が飛び出るかと思った。
「どうした?」
胸を押さえながら訊ねる。
「呪いだ! 忘却のブレスレット!」
マイルズを指すアレン。マイルズの腕に目を向ける。赤い石が怪しく光るブレスレットをつけていた。マイルズの私物ではない。
ルーラが口角を上げた。その笑顔がゾクリとするほど冷たい。
「それってどんな呪いなんだ? マイルズは大丈夫なのか?」
「忘却のブレスレットは、嵌められると好きな相手を忘れ、嵌めた相手を好きになる。嵌められたら一生取れることはない。マイルズはこの先ずっと、好きでもない相手を好きだと思い込んだままだ」
アレンの説明に部屋がしんと静まり返って空気が重い。
「わかっても外せないの。マイルズはずっと私のもの」
おかしそうに高笑いするルーラにマイルズは目を瞬かせた。
「なんでこんなことをしたんだ?」
「だってマイルズのことが好きなのに、外が騒がしくなったらルルちゃんと帰るって言うし。私にも逃げようって意味わかんないこと言うし。ずっとここで暮らせばいいのに」
ルーラの言葉はとても身勝手だ。
マイルズのことを好きだと言いながら、マイルズの気持ちをこれっぽっちも考えていない。
マイルズが一緒に逃げようって言ったということは、ルーラがここにいるべきではないと判断したからだ。
「もう黙って。あなたの話は聞きたくない」
チアが魔術で大量の水を作り出した。水がルーラを覆い、水球となって閉じ込める。
ルーラは息ができずに、苦しそうにもがいた。
マイルズが助け出そうと水球に手を伸ばすが、直前で弾かれる。チアの魔術はマイルズには触れられない。
マイルズはチアに向かっていく。
「なんでこんなことをするの? 魔術を解いて、ルーラちゃんを出して」
マイルズがチアの腕を握った。
「私のことを忘れたのに、優しいのは変わらないんだね」
チアは眉を下げて、呟いた。
チアに攻撃をやめさせたいのに、マイルズはチアを攻撃しようとはしていない。ボンドのメンバーは肩に入っているギルドの紋章で、味方を傷つけることはない。
攻撃をすれば弾かれる。
マイルズは弾かれることなく、チアに触れている。
「いや、でも、ちょっとやりすぎなんじゃ……」
恐る恐る声を掛けると、チアがルーラに鋭い視線を向けた。
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ルーラは酸素を肺に送り込もうと、息を荒げた。
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