ギルド《ボンド》

きたじまともみ

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第二章 無償の愛

44 戦闘開始

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 俺がチュアロの街に足を踏み入れた時には、すでにバージルさんが暴れ回っていて、取り押さえようと集まってきた相手を返り討ちにしていた。
 相手を薙ぎ倒しながら、街の中心へと突き進んでいく。

 ルーカスさんは街の東に向かっていった。その後を何人もが追い、その中にはリオもいた。

「俺たち、やることなくねーか?」

 バージルさんが全てを蹴散らしてくれる。
 隣にいるチアに話しかけると、彼女は肩をすくめた。

「ギルドハウスに着いたら、やることはいっぱいあるよ」

 ギルドを潰して、薬も廃棄しなければならない。それに、マイルズのことも気になる。
 進みながら考え事をしていると、俺とチアは後ろへ引っ張られた。

 建物が崩れて、瓦礫が降ってくる。
 振り返ると、俺たちを助けてくれたのはアレンだった。

「……助かった、ありがとう」

 バクバクと鳴り響く心臓を押さえながら礼を言う。
 チアは風の魔術でそれを浮かした。下敷きになったボンドの人たちを救助する。

「塔みたいなところから、狙われてる。自分たちの街を壊してでも止めようとしているんだ」

 怪我人は、支え合いながら後退する。動けないほどの怪我をしている人がいなくてホッとした。
 塔からレーザーのようなものが照射され、また建物が崩れる。俺たちのいる位置よりも前がやられた。

 チアがそれも風で浮かせる。大量の瓦礫は相当な重量だが、チアは汗ひとつかいておらず、塔を睨みつけた。

「ボンドの理念は『他人に厳しく、身内に甘く』仲間を傷つけるものには容赦はしない!」

 チアは持ち上げた瓦礫を、塔目掛けて飛ばした。勢いのついた瓦礫が塔を襲う。轟音を響かせてぶつかり、粉塵が舞って塔を覆った。

「……すげーな」

 思わず漏れた。
 あんなに重いものを飛ばしたのに、チアは涼しい顔をしている。魔力は底なしなのか?

「無理はしていないか?」
「もちろん。これくらいでへばったりしないよ」

 チアは口の端を広げる。
 塔からの攻撃を無効化したのも束の間、近くにいるギルド員が叫び声を上げて蹲った。肩には矢が刺さっている。

 もう一度飛んでくる。今度は誰にもかすりもせずに、壁に当たって落ちた。
 相手の矢が届くなら、俺からも射程圏内にいるはずだ。
 矢が飛んできた方向に目を凝らす。

「カイ、青い屋根の三階建ての建物だ。中から狙っている」

 俺にわかるように、アレンが俺に体を寄せて指を刺す。
 目視でき、相手が弓を引き絞った。
 俺も狙いを定めて弓を引く。相手が撃つより早く、矢を放った。

 矢は吸い込まれるよう一直線に飛んでいく。続けてもう一本撃った。
 一本目は相手の肩に、二本目は手の甲に刺さる。
 相手は反対の手で押さえながら、窓から離れて見えなくなった。

「相変わらず、すげーコントロールだな」

 アレンが目を見張るが、俺にはこれしかない。狩りで生計を立てていたから、生きるために腕を磨くしかなかった。

「バージルさんたちと離れちゃったね」

 破竹の勢いで進むバージルさんたち先頭集団と、瓦礫を落とされて分断されるような形になってしまった。

 脇道から、剣を持った敵が数人向かってくる。
 アレンや近くにいた剣士たちが抜剣して激しくぶつかった。

 俺は弓を引き、敵の動きを予測して足を狙う。
 チアが魔術で竜巻を発生させ、乱戦の中に放った。

 ボンドのメンバーは肩に刻まれているギルドの紋章で、味方の攻撃は効かない。敵だけが吹き飛ばされる。
 全員が呆気に取られていると、チアが硬い声を出した。

「早く追いつこう」

 駆けるチアに続く。

「バージルさんたちは大丈夫だろ」
「私はバージルさんの心配なんてしてないよ。こんなに暴れていて、ルルが私のところに戻ってこないのがおかしいの。マイルズくんとルルが動けない状態なのかも」
「動けないって、怪我をしているのか?」
「ルルは私の使い魔だから、ルルが怪我をしたなら私は感じ取れる。でも、ルルは怪我をしていない。だから、閉じ込められているんじゃないかと思う」
「ルルは無事だってわかるけど、マイルズはわかんねーんだろ?」

 心の中がざわつく。無事でいて欲しいと願う。

「マイルズくんが攻撃をされたら、ルルが反撃してルルも無事じゃないと思うから、マイルズくんも無事だと思いたい」

 チアは下唇を噛んで、自分に言い聞かせるように頷いた。マイルズに懐いているルルがいるんだ。どちらも無事だろう、と俺も自分を納得させる。

 襲ってくる敵をアレンや剣士が防ぎ、俺は弓を引いて応戦する。
 魔力を練る時間を稼げば、チアが全員を蹴散らしていく。

 ギルドハウスの前で大勢のギルド員が睨み合っていた。
 バージルさんだけ前に出ていて、全員がバージルさんの後ろに控えている。

「うちの街に、よくも変なもん流してくれたな」

 チュアロ側は、三十代くらいの糸目の男が体の前で腕を組みながら声を上げる。

「なんのことでしょうか? それより、この街の惨状を見てどう落とし前をつけるおつもりですか?」
「徹底的に潰す! うちのもんが世話になっているらしいが、どこにいる。無事なんだろうな?」
「お嬢が連れてきたガキか……。人畜無害そうな面して、お嬢を騙して入り込んだのか。おい、何人か行って殺してこい」

 男が指示を出すと、数人がギルドハウスに入っていった。
 その一言で、ボンドの全員が攻撃を仕掛ける。

「カイくん、行くよ。みんなが暴れて引きつけてくれている間に、さっきの人たちを追ってマイルズくんのところに向かう」
「え? バージルさんはそのためにあんなことを言ったのか?」
「当たり前でしょ。私にマイルズくんを優先させろって言ったんだから」

 敵はマイルズがボンドの一員だって気付いていなかった。それをあっさりとバラして、こうなることは予想できたのに、と不思議に思っていた。

「チアとカイは俺の後ろをついてきて」

 乱戦の中にアレンが突っ込む。
 俺とチアはその後を追った。
 戦闘の隙間を縫うように進む。

 ボンドのみんなが敵を押さえてくれて、アレンが薙ぎ払いながら進んでくれるおかげで、俺とチアは危なげなく乱戦の場を通り抜けられた。

 ギルドハウスに突入して、気付かれないように敵の後を追う。
 幸い床には柔らかな絨毯が張り巡らされており、靴音を隠してくれた。

 階段を登り、三階の一番奥の部屋の前で止まる。他の部屋より、扉の装飾が豪華だ。

「カイくん、撃って」
「わかった」

 俺が弓を引くと同時にアレンが駆け出した。チアは魔力を練るのに集中する。
 矢を放ち、敵の足に刺さる。

 蹲る敵を無視して、別の敵がこちらに向かってきて、アレンが剣を振り下ろした。
 追い打ちをかけるように、チアの風が刃となって敵を襲う。
 全員を沈めると、チアが敵を浮かせた。

「ここに倒れていられると目立つから、手前の部屋に閉じ込めよう」

 チアの提案で手前の扉を開け、俺とアレンで手足を縛った。
 扉を閉めて、奥の扉の前に立つ。
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