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1.異世界召喚されてしまいました

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 ――気づいたら異世界でした。

 だなんてあまりにも非現実的で、何かの物語の始まりに使われているような一文だ。
 それは少しだとしても心躍るような一文ではある。
 だけどそんなものはあくまでも空想だともわかっている。でもあくまでも空想だからこそ、心惹かれるものがあるのだと思う。
 だから、当然だけどそんなことが起きて欲しいだなんて考えてもいなかった。
 あたしはただ普通に、ありふれた生活が遅れればそれでいいし、異世界だなんて万が一存在したって行きたいとも思わない。そんなものはたまーに手を出すゲームだとかアニメだとか、小説だとかで楽しむ程度で充分なのだ。
 たとえ平日には決まった時間に起きて支度して、ご飯食べて登校して。学校では少し退屈な授業をこなしながら友人と談笑したりして。学校が終われば下校して、帰宅して、家族みんなで夕飯食べて。寝るまでの時間は好きに過ごすけど、似たような時間に寝て一日が終わる。休日も友達と出掛けるかどうかってくらいで、大差はない。
 ありふれていて、面白みもない。だけど嫌気なんて抱いてもいなかった――はずだったのだ。




「よくぞおいでくださった、聖女殿」

 床には真っ赤な絨毯。前方には玉座。
 ふたつ並ぶそこには壮年と思しき重厚な衣装と豪奢な冠を頭の上に乗せた男女が腰掛け、その傍らには腰に剣を携えた鎧を纏う西洋の騎士のような男の人がひとり。さらに手前、あたしに近い場所にはローブを着て杖を持つ男の人。それと眩いまでに白くてやっぱり豪奢な法衣を着た男の人。
 その全員が間違いなくあたしを見下ろしていて。あたしに声をかけてきたのは王冠を頭にのせた男の人で。よくわからないけど〈聖女〉だとか呼ばれてるのはあたしみたいで。

「……なにこれ」

 絞り出したこの一言が、この場に居合わせたあたしの紛れもない本音だった。

 ――荻野おぎのしずく
 いつもどおりの帰宅中、突然めまいがして視界が白く染まり、それが晴れたと思いきや見知らぬ場所で知らない人たちに囲まれてました。
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