明日を紡いだ忘れ物

植田伊織

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明日を紡いだ忘れ物

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 職場の窓から覗く夜の帳が落ちたビジネス街は、オフィスビルの照明や飲食店街の看板のネオンの光、そして、まるで星屑が降り注いだかのようにあちらこちらにちりばめられている、クリスマスイルミネーションによって滲んでいた。

 全身に纏わり付く倦怠感を少しでも和らげようと、伸びをする。闇夜によって黒い鏡の化した窓硝子に、真っ赤な目をした凡庸な中年男である、自分の姿が映った。
 世間ではクリスマスだというのに仕事に追われ、恋人と聖夜を過ごそうにもそもそも相手すらいない。今年は運悪く、友人の誰とも何の約束も取り付けられなかった、冴えないやせっぽっちの男である。
  容赦無く突きつけられた現実に、自然と浮かび上がりそうになる苦笑いを噛み潰しつつ目を反らす。

 オフィスの時計を確認すると、退勤しなければならない時刻まで残り数十分といった所だった。
 労働環境改善を考慮されて作られた、この「早帰り習慣」の効果は着々と表れている。もっとも会社から「早く帰れ」と命じられるまでもなく、今日はクリスマス当日で予定がある者が多かった。そうでない者も、「早帰り習慣」の規則を破れば本部からペナルティが課される仕組みになっているため、早めに退勤する以外の選択肢は残されていないのだけれど。

 世間一般では「中年」に分類される俺だが、フロア内では「若手」にくくられている。若手が行うべきとされている雑用である、施設の施錠当番を、彼女とのデートがあるとかで早々に退勤した同期から押し付けられていた事を思い出し、ため息交じりに仕事を切り上げて、パソコンの電源を切った。机の中から、預かった鍵束をつかんでフロアを出る。向かう先は、屋上だ。道中にある倉庫や資料室にも足を運び、異常が無いか確認しながら各々の部屋に鍵をかけてゆく。あちらこちらにある真っ黒な窓ガラスの鏡が、自身の姿を映し出しそうになる度に、目を伏せた。

「こんな大人になるはずじゃなかった」――そう、若かりし頃の自分がどこかで、窓に映る男を軽蔑しているような気がするのは、人生のどこかに大切な「何か」を忘れてきてしまったような毎日を過ごしているからだ。その「何か」とはきっと、情熱だとか夢だとか、未来への希望なんかを言うのだろう。要領の悪い俺は毎日の生活に追われ、日々の糧を稼ぐのにいっぱいいっぱいで。社会のレールから脱線しないよう――時には脱線してしまった事もあったのだけれど――なんとか車体を大破させずに、命を紡ぐのに必死だった。学生時代に考えていた「自己実現」なんて口に出す暇も無い、十年間だった。

 作家になりたかった。

 三流大学の学生生活の殆どを執筆活動に費やし、文芸新人賞に応募するも、箸にも棒にもかからなかった。就活には出遅れるわ、単位は落とすわで、一時は留年にリーチがかかった状況に追い詰められた。
 就職活動では高学歴の連中に「どんな学生生活を送れば“そんな場所”に行く事になるんだ」とあからさまに学歴を嗤われ、同じ大学の真面目な奴らからは「怠惰な現実逃避野郎」として軽蔑された。誰も、授業をさぼって創作活動に没頭しなければ生き永らえられない、俺の「事情」なんか、気にかけない。
 
 蛍光灯が不規則に点滅する、階段の踊り場までたどり着く。庶務課に蛍光灯を変えてもらうよう言づけなければと頭の隅で考えながら、屋上へ上がる階段を踏んづけた。ひんやりとしたドアノブをにぎり、急速に冷えてゆく指先に眉を潜めながら、ドアノブを回した。
 重い扉を開くと、澄み切った空気がびゅうと吹きこむ。歯がガチガチと震えた。

 ――どうせクリスマスのこんな時間まで残ってる奴なんて居やしないだろう。見回りなんて時間の無駄なんじゃないか――

 一刻も早く施錠して退勤したいという己の願望を、なんとか押しとどめてぐるりと屋上を見渡した俺の生真面目さが、「その事件」の発端だったように思う。

 俺の目はどういうわけだか、フェンスの向こう側に居る「誰か」に吸い寄せられた。そしてその「誰か」がフェンスの「向こう側」にいるとすぐに理解できたのは、かつて自分もその場に立った事があったからなのかも知れない。

 咄嗟に言葉がでなかった。足を縫い付けられてしまったかのようにその場に立ち尽くしてしまう。しかし、このままぼんやり黙ってみているわけにもいくまい。俺は覚悟を決めて相手を刺激しないよう、そうっとフェンスの傍へ近づいた。するとその気配を察知したのか、フェンスの向こう側で足元を見つめていた男が、こちらに気づき振り向いた。

「……後藤さん?」

 その男は、休憩時間に呼び止めた時のような普段通りの声で、俺の名を呼んだ。とても、フェンスの向こう側に立っているとは思えない程、穏やかな声だった。

高坂こうさか……?」

 高坂は端正な顔を僅かにゆがめ、俺からゆっくり視線を外す。
 後輩の高坂唯は、某有名国立大を卒業し、期待の新人として入社した。頭脳明晰、眉目秀麗という絵にかいたような「完璧くん」で、俺とは正反対の存在だ。とても「こんな場所」で「こんな事」をするなんて思えない。一瞬、彼はなにか新しい瞑想法でも思いついて屋上にやってきたのではないかと考えてしまった程だ。――そう、彼が自殺をしようとしているなど、とても信じられるものでは無かった。

「な、何やってるんだこんな所で」
「……止めないでください、俺にはもう、これしか方法が無いんです」

 その一言を聞いて、雷に打たれたような衝撃と共に意識が現実に引き戻される。「完璧君」は変わった場所でマインドフルネスを実行しているわけもなく、新しい瞑想法を実践しようとしているわけでもない。――自殺しようとしているのだ。

「い、一体どうした、何があったって言うんだ」

 声が震えて情けないと思ったけれど、何も言わずにおめおめ引き下がるわけにはいかない。
 高坂とは配属課が違うから仕事上の繋がりも無いし、プライベートすら特に交流は無い。彼の決意を止める理由は「同じ会社に勤める者として」という立場しかない。しかしながら、人当たりの良い彼は休憩時間によく、目立たないだの面白みがないだの言われる俺にすら話しかけてくれる奴だった。
派手な外見とは裏腹に、高坂は映画や流行小説、サブカルチャーに詳しく、コミュニケーションが得意とは言えない俺ともよく話しをしてくれた。彼との時間は居心地の良いものであった。そんな「良い奴」の人生の危機を、横目にやりすごす程冷淡にはなれなかった。

「見苦しい姿をお見せしてしまってすみません、後藤さん。でも、俺……人生積んじゃって。こうするしかないなぁって思いながらぼんやり、下を眺めてたら――こんな時間になっちゃって」

 自嘲気味に笑う横顔を見るに、今この瞬間の高坂には、命を投げ捨てたいという激しさは無いように思えた。俺は、そこにかける事にした。

「なあ、高坂。俺はシステム課だから、営業課のお前の苦労を全て理解できるわけじゃない。性格だって正反対だから、プライベートの問題に共感できるとも限らない。それでも話を聴くことは出来る。
 全くの無関係な人間に悩み事を話してみると、案外気が晴れるもんだ。――良かったら話してみないか。それから、どうするかを決めるのも遅くないだろう?」

 高坂は躊躇ったが、しばらくすると、ぽつりぽつりと語り出した。

 高坂の「人生が積んだ」瞬間というのは、要するにこういう事だ。

 とある上司が、将来有望な社員である高坂に目をつけた。上司は高坂に、自身の娘を紹介する。年頃で美貌の自慢の娘だ。
このコンプライアンスの五月蠅い時代によくぞまあ、そんな古典的な手段が取れたものだと思わなくもないが、人は、自身の尻に火がつかない限り悪しき慣習を変えようとはしないのかも知れない。――ペナルティ付き「早帰り習慣」のような仕組みが無い限り。
 高坂も、上司のご息女と付き合う事に全く悩まなかった訳ではないらしい。しかしそこは若さと本能が理性を打ち負かしたとでも言おうか。
 きっかけはともかく、当事者間で何の問題もなければそれで良かったのかも知れない――高坂に、学生時代から付き合っている彼女がいなければ。

「今日、クリスマスでしょう? 俺、どちらの誘いもうまく断れなくて。多分今、彼女ら二人とも俺の自宅で鉢合わせてるはずで――、となればすぐに上司に連絡が行くでしょう。会社での立場は終わるでしょうし、彼女も俺に愛想を尽かすはず。……積みました」

 自業自得だそんなもん!

 ――舌の先に本音が乗った瞬間、噛み潰した己の理性を褒めたくなった。
 こちとら彼女いない歴を順調に更新しているうだつの上がらない身である。二人の女性が自分を巡って争うなど、夢のまた夢の話だ。こんな状況でなければ「贅沢な事言ってるんじゃないよ」と引っ叩いてやりたかったが、それを、思いつめている彼に告げるわけにもいくまい。

「確かに、今後の仕事の事を考えれば気まずいかも知れない。でもお前は優秀だ。仕事ならいくらでもやり直せる。死ぬ事はない」

 あえて「仕事」を強調することで、女性関係については言及しないことにした。とてもではないが俺の経験値では、その件に関して含蓄のある話は出来ない。
 俺の守りの姿勢に気が付かないまま、高坂は言葉を続けた。

「後藤さんは判っていない。俺にとって上司の信頼を失うというのは、悠々と闊歩していた大理石の道から転落して、泥水の中でもがきまわると言うのを意味するわけです。そんな泥臭い事するくらいなら、いっその事死んで全てを終わりにしてしまいたい」

 こちとら最初から大理石の道など用意されておらず、泥水を啜って生きている訳なのだが。

 本音が一瞬顔を出しかけたが、なんとか飲み込んで冷静になろうと肺に澄んだ空気を満たす。
まさかこんな事に巻き込まれるとは思っていなかった為、上着を持ってこなかった。手足の感覚はもはや無くなりかけている。一体なんというクリスマスなのだろう。

 高坂は確かに、不誠実だったかも知れない。過ちに対する責任は相応に取るべきだろう。しかし、一つ過ちを犯したからと言って彼の人生の全てが駄目になってしまった訳では無いはずだ。

「なぁ、高坂。たしかにお前の将来は、当初描いていた理想からはかけ離れてしまったのかも知れない。それは、お前のした事の結果なのだから、受け入れようぜ。だからって全てを無に帰すな。理想通りに生きてゆけない苦しみは判るつもりだ。でも、一つ、駄目な事があったら全てを投げ出してしまうというのは極論なんじゃないか。まだお前に残された手札はあるだろう」

「後藤さん、俺……今までの人生、順風満帆だったんです。勉強も運動も、何をやっても良く出来たし、人に嫌われるなんて事にも無縁でした。だからこそでしょう――人から疎まれながら強く生きる自信がありません。後藤さんとは違います」

 それは俺が誰かに疎まれていると言いたいのか? 順風満帆とは縁遠い人物だと言いたいのか? なんだかさっきからこいつの言葉がいちいち心に突き刺さるのだけれど、それは俺が卑屈すぎるのか?

 俺は頭を抱えたくなった。
 高坂の「絶望」は俺から見ると、まだまだ恵まれている所はたくさんあるのに「理想通りにならないから」と蹲っているように見えるからだ。
「恵まれた状況に対して、感謝の心を忘れるな」と言ったところで、彼の心には響かないだろう。
 そして完璧な絶望など存在しない。俺にとっての「絶望」も、誰かにとっては希望なのかもしれない。
 ともかく、心から高坂に寄り添えない以上、どんな言葉をかけたとしても、そこには嘘が混じる。そんな紛い物が思いつめた相手の心に届くとは思えなかった。

「……俺は、理想通りに生きてゆける人間なんてほとんど居ないと思っている。一つ二つ失敗したからって、お前の人生をまるごと、絶望に染め上げるなと言いたい。――それ以上の事は、言えない」

 高坂は俺の言葉を聞いて驚いた顔をした。

「なんですか、それ」
「……何がだ」
「随分あっさり突き放すんですね。なんかちょっと傷つきました。もう少し、傷心の後輩を慰めてくれたっていいんじゃないですか」
「お前、案外良い性格してるよな」

 かじかむ両手を強く握りしめ、俺はその場に胡坐をかいた。尻は冷えを通り越して痛いし、両耳なんか千切れそうだ。

「はっきり言ってな。俺は三流大出の平社員で、出身大学の派閥の恩恵とは無縁だったし、上司の引き立てだってなかった。“持てる者”のお前の気持ちはわからないし、“持っていた物”を“失う”恐怖も理解できない」

 高坂も立っているのは限界だったのだろう。転落しないように注意しながらゆっくりと、その場に座り込む。

「学生時代、勉強嫌いだったんですか」
「中学までは偏差値も高かった。でも、高校に入って認知症の祖母の状態が悪化してな。小さな頃死んだ父と、蒸発した母の代わりに俺を育ててくれた人だ。
 俺はガキで、無知で、どうやって周囲に助けを求めれば良いのかわからなくて。すぐに家の外に飛び出しちまうばあさんを、毎日必死で探したよ。そんな事をしているうちに、勉強はどんどん遅れていったし、それを取り戻そうって気力も無くなってしまった。
 幸い周りの人が俺の状況に気が付いて助けてくれたおかげで、福祉を受けられるようになった。そうしていざ、自分の将来に集中する時間が出来た途端、心にぽっかりと穴が開いたみたいになってしまって、何も手につかなくなったんだ。だから理想を目指すことはせず、その時入れる大学に行ったって訳だ」

「浪人すれば良かったんじゃないですか」

「してもきっと、勉強には手が付かないまま時間を無駄にしていただろうな。何せ当時は、とにかく何もできなかったから。それに、早く社会に出て独り立ちしたかったんだ」

 そんな境遇な俺でも、大学に進学できる環境にあったのは、他の誰かからみたら恵まれているのだろう。俺は言葉を続けた。

「知っての通り、俺は要領も良くなければ世渡りも下手だ。よく上司からも目の敵にされたもんさ。それでも、生きてる。
 高坂だったら俺よりずっと、上手くリカバリーできるだろうよ」

 俺の言葉を聞いた高坂は急に目を丸く見開いて、新たな発見した子供のような、純粋な声で言う。

「……そっか、さっきは急に突き放されて、なんて冷たい人だって思ったけど、後藤さんって冷たい訳じゃなくて、思ってもいない事を言えないだけで、案外優しいんですね」

 目をぱちぱちと瞬かせながら言う高坂の様子に、先程までの思いつめた様子は見られない。風向きが良い方に変わってきたような予感があった。俺は心の中で密かに胸をなでおろす。

「お前も大概、漏れ出る本音でトラブルを招くタイプだぞ。気をつけろ」
「ウッス」

 完璧君はそう言いながら微かに笑った後、真顔に戻る。

「後藤さん、ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。こんなに親身に俺の事考えてくれる人が居たんだなーって思ったら、なんか、ちょっとだけ楽になったって言うか。もうちょっと、頑張ってみようかなって」

「そっか、良かった」

「……時々、どうしても挫けそうになった時には……話を聞いていただけませんか?」

「ああ、もちろんだ」

俺の返答を聞くと、高坂はにっと笑って、

「ありがとうございます!
なんかまるで、後藤さんの書いている小説の主人公に、励まされたような気分です」

 と言った。
 俺は耳を疑った。全身の血が引き潮のように引いてゆく。

「な、何、なななな何を言って」
「え、書いてますよね? 小説。 ちょっと青臭いなって思いましたけど、おもしろかったっすよ。熱血って感じで、背中を押してくれる強さもあって」
「なんでお前、そんな事、知ってるんだ?」

 会社で、若き頃の夢をあきらめきれず今も細々と小説を書き続けているなどと、公言するはずが無い――そう思いを巡らせつつも、「まさか」と思う出来事に思い至った時。俺はまさに「絶望」した。

「後藤さん、印刷室に作品置き忘れていった事あったでしょ。最初は誰の忘れ物だかわからなかったけど、読んでいくうちに言葉の選び方とか、表現方法が後藤さんによく似てるなって思って。俺、小説もそこそこ読みますし、そういうのなんとなく解っちゃうんですよね。後藤さんのメールの文体ともよく似てますし、奥付のメールアドレスもgoto-novel@……」
「もう良い、もう良い! やめろ!」

 そうだ。いつだったか昔のサークル仲間と仕事が終わった後、飲み会があった。そこで最近書いた作品のアドバイスを貰いたくて、短編を会社のパソコンでプリントアウトした事があった。
無論、私用で印刷するのが悪い事だとはわかっていたが、その時はコンビニに寄る時間も無かった。
――言い訳だというのは重々承知だ――たしかあの時、印刷コマンドを押した後、オフィスに二台しかないプリンターから作品を回収しようとして、庶務のパートさんに呼び止められたのだ。十数分そこで立ち話をした後、改めて回収作業に戻ろうとして、印刷物が見当たらなかった事があった。印刷が出来ていなかったのか、もしくは誰かが間違って持って行ってしまったかと思っていたのだけれど――まさか、高坂が回収していたとは。そして、あの駄文を捨てずに読んでくれていたとは思わなかった。
 俺は羞恥心に堪え切れず、後輩の顔を見れないままぽつりとつぶやいた。

「ああ、いっそ死んでしまいたい」 と。

「そ、そんなこと言わないでくださいよ、こっち来ちゃ駄目ですって」

 そう言いながらフェンスをがしがしのぼり、「こちら側」に生還してきた高坂をぼんやり眺めていた瞬間、胸ポケットに入れていたスマートフォンがぶるりと震えた。退勤時刻を大幅に過ぎている事に対して、ペナルティを課すという内容の通知が、会社の専用アプリから来ていた。

まったく、なんというクリスマスだ。

 複雑な心境のまま天を仰いだ。そんな俺をねぎらうように、あるいはあざ笑うかのように、雪が降り始めているのが見えた。

<了>
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