殿下は君と恋がしたい!

寝頭ふみんしょー

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しばらく歩いてようやく屋台が立ち並ぶ大通りに入った。
「やはり賑やかですね」
「そうだな。あ、ほら、りんご飴の屋台だ。」
ルイスに手を引かれ屋台へと近づく
ルイスは手を繋いでしまったことに内心ドギマギしていたが、ユツキは別段戸惑うことも無かった。
屋台にはりんごだけではなくいちごやオレンジも置かれていた。
「でん…ルイス様は如何されますか?」
ユツキは殿下と言いかけて名前を呼び直す
お忍びで来ているのがバレないように
「そうだな…俺はオレンジを貰う。ユツキは?」
「私は…せっかくですからいちごに致します。」
店主に伝え串に刺さったイチゴ飴とオレンジ飴を貰った。
普段、上品な空間で食事を摂る二人には立ちながら串に刺さったものを食べるのは珍しく新鮮だ。
いちご飴を一粒口に運び食べる
上品に食べるユツキの横でルイスが豪快にオレンジ飴を食べている
「美味しい…いちご飴もなかなかですね」
「そうか!それは良かった!」
ユツキの言葉にルイスが嬉しそうに反応する
そのルイスの頬には飴の欠片が付いていた。
「ルイス様、失礼します。」
ユツキが背伸びをしてルイスの頬に付いた飴の欠片をハンカチで拭った。
「わ、わるい」
「とんでもないことでございます。」
ハンカチを仕舞い、いちご飴を食べ終えるとまた二人で歩き出した。
屋台が立ち並ぶ大通りの真ん中に来ると人が多くなってきた。
ルイスはユツキとはぐれないように体を自分に引き寄せる
ユツキはこの状況に少し震えた。
ルイスの腕にぎゅっと掴まり身を守る
「ユツキ、ユツキ」
しばらくするとルイスに名前を呼ばれ顔を上げた。
あたりは既に人混みではなく大きな噴水のある広場に出ていた。
「大丈夫か?ほら、ここに座れ」
ルイスに促され噴水のヘリに座る
「すみません。少し人に酔ってしまいました。」
「そうか、何か飲み物でも」
ルイスが辺りを見回しているとぶわりと風が吹いた。
その拍子にユツキの帽子が宙に舞った。
「わっ」
ユツキの帽子の中に入れていた髪もさらりと風に舞う
髪を結っていなかったために遠目から見れば少女のように見えるだろう
「帽子が…」
ユツキがキョロキョロと辺りを見回すが帽子は影も形もない
「探してくる」
ルイスが風下を向く
「そんなことさせられません。どこに飛んで行ったかも…もう分かりませんし」
「でも、あれはスイレンが作ってくれたものだろう」
「そうですが…」
あの帽子はスイレンが修行に行く前に外に出たがらないユツキのために作ってくれたこの世に一つだけの大切な帽子だ。
ユツキが外に出やすいようにと顔に影が入るようになっており、つばも広めだ。
「大丈夫だ!ちょっと待ってろ」
ルイスはいたずらっ子のような笑顔を見せ勢いよく駆けていった。
ユツキは噴水に座り直してルイスが走っていった方向を見つめる
(大丈夫でしょうか…)
ユツキは不安そうだ。
「ねぇ、君一人?」
「?」
ユツキが急に声をかけられ正面を見ると地元の住人であろう二人組がこちらを見下ろしていた。
「今からダチと遊ぶんだけど一緒にどーよ?」
「俺らここら辺のことにも詳しいし、エスコートもするからさ」
「い、いえ、結構です。」
ユツキが引き気味に断る
「いや、マジで俺らといれば超楽しいからさ!」
「そうそう、他にもたくさん仲間いるし!」
「いえ、ですから…」
ナンパ師達は引き下がろうとしない
「見たところ超お金持ちって感じじゃん。色々手ほどきしてくださいよ~」
「確かに!手とり足とり腰とりってね!」
ナンパ師達がユツキを連れていこうと手を伸ばす
「!」
ユツキが無理やり手を取られる
「やめてください…!」
ユツキがどこかに連れて行かれそうになる
ユツキの力では逃れることが出来ない
ナンパ師達に連れられて二、三歩進んだ時、ルイスが間に割り込み牽制する
片手には少々汚れた帽子が握られていた。
「全く、少し目を離したうちに人を惹きつけるとは…その美しさにも困ったものだな」
ルイスの額には青筋が立っており今にも二人を斬り殺してしまいそうだ。
「ルイス様…」
ユツキは胸を撫で下ろしたと同時に次はこの争いの仲介をしなくてはと考え直す
「ルイス様、私はもう大丈夫ですからそろそろ移動を」
「俺は聞いたぞ。ユツキに対する卑猥な発言…いやらしい目付き、触れた手も見たぞ」
ルイスは怒り心頭だ。
「ルイス様、落ち着いて…!」
ユツキは耳を貸さないルイスの腕を強く引くがビクともしない
「ひ、ヒィ…」
「じょ、じょうだん…冗談だったんですぅ…」
ナンパ師達が涙目で逃げようと後退するが、ルイスの鋭い目つきから逃げられなくなってしまった。
獣のように鋭い縦に伸びた瞳孔が二人を逃がさない
「ルイス様!」
ピシャリと言われてルイスがようやく視線をユツキに移す
急に大きな声を出したことでユツキは少し咳き込んでしまう
「私は大丈夫ですから。早く行きましょう?」
ルイスの手を握りながらユツキがあやす様に言う
ルイスは渋々戦闘態勢から戻りユツキに手を引かれて歩き出した。
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