レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

文字の大きさ
5 / 74

Class Sex

しおりを挟む
「山田ショウコとセックスしたい!」
 期末テスト中という、学生にとって自分の全てだと言っても過言ではないその時、しんと静まり返る教室に声が響いた。黒板の前で椅子にふんぞり返り、うとうととする教師が、突然の声に跳ね起きてきょろきょろと辺りを見渡した。生徒たちの気持ちは完全にテストから離れ、声の主が気になって仕方なくなったようだが、少しでも首を動かしてしまうとカンニングと間違えられてしまう。堪えながらテストに集中しようとも、その声が気になって仕方が無い……。
 その時、また声が響いた。それも一回だけ ではなく、何度も。遂に痺れを切らした教師が教室をうろつく。しかし、そんなことお構いなしと言いたげに、その声が止むことは無い。当の山田ショウコはこ のクラスの女子生徒である。山田ショウコは、そんな声に気にもとめずテスト用紙をライターで燃やし、それを使い煙草に火をつけようとしている最中だった。真剣な眼差し。声が耳に入る筈が無かった。テストを真剣に受けているのは暮らすの三分の一といった所だろうか。残りの過半数は、生徒同士の干渉は無く静か にしているものの、読書をする者、ゲームをする者、煙草を吸う者、タロットカードをいじくる者、下半身をいじくる者、携帯をいじくる者、昼飯を食らう者、 という、正に何でもありの無法地帯。それがかの有名な3年B組(3B)だった。その間も声が止むことはない。にらみを聞かせながら歩いていた教師が、ふと とある男子生徒の目の前で足を止めた。男子生徒は机にうな垂れ、小さないびきをかいている。胸のポケットに入れてある携帯から、「山田ショウコとセックスしたい!」という声が聞こえた。一時流行った着ボイス、というものだろうか。いびきをかく生徒を見下しながら、教師がポケットから煙草を取り出し、火をつけた。そしてその燃える煙草を、男子生徒の頭に置いた。短く整った髪の毛がちりちりと音を立てて少しずつ燃えていく。教室に異臭が漂った。田中義久はその臭いに顔をしかめ、車田和夫はうっとりた表情でその臭いを吸い込み、原田久恵はあまりの悪臭に排泄物を机にぶちまけた。必死に解いていたテスト用紙がぐ ちゃぐちゃに汚れ、原田久恵は静かに泣いた。頭が焼け野原になり、皮膚を燃やしているにも関わらず、男子生徒が起きる気配は無い。教師は一旦教卓へと戻り、教卓に置いてあったガラスのコップを手に取った。そして足元に置いてあるポリタンクからガソリンをコップに流し込む。それを口に含むと、口の前にくる ようにライターを手に持った。そして男子生徒の元へと行き、ライターの火に向かってガソリンを噴射した。男子生徒の全身が、あっという間に燃えていく。
 燃えさかり無様な死を遂げた男子生徒の最後の言葉は、「燃えるほど熱い恋! 激しすぎるぜ山田ショウコ!」であった。
 男子生徒を包む炎に煙草を近づけ、一息ついた後、テスト中だというのに早退した山田ショウコは、途中でバラの花束を買い、燃え死んだ男子生徒の家へと向かった。しかし住所がわからないので諦め、そのまま家路についた。山田ショウコの消息はそこで絶っている。
 その頃教室では、テストを一旦中断し、『燃えさかる人』というタイトルの絵を書いていた。所謂美術の時間というものだろうか。
「男子生徒が灰になって絶命するまであと数時間といった所だろうか。それまでに書き上げたものには、山田ショウコ・セックスフリーパス券というものが貰えるんだ」と教師が言った。それまで自分勝手にしていた生徒たちが大きな声援を上げ、一丸となって絵を仕上げる。3Bが始めて一つになった。しかし田所美里だけ は「下品だわ」と呟き、家に帰った。そう、今日はジャニーズのコンサートがある日なのだ。
 燃えさかる男子生徒は、もう起き上がることすら出来ないはずであるが、よろよろとゆっくり立ち上がり、
「俺、もうちょっと生きていたかったな……」
 と呟き、しばらくして絶命した。書き上げた者がいなかったため、教師自身が券を握り締め、山田ショウコの家へと走っていった。教師は走った。どこまでも。世界の果てまでも。山田ショウコの元へ向かって……。
 お前ならできるはずだ。選ばれし者よ。走り続けろ。決して後ろを振り向くんじゃない。

 走れ! 教師!
 どこまでも!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

虚無・神様のメール・その他の短編

れつだん先生
現代文学
20年間で書き溜めた短編やショートショートをまとめました。 公募一次通過作などもあります。 今見返すと文章も内容も難ありですが、それを楽しんでいただけると幸いです。

処理中です...