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激しくときめいて
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僕は今、頭が空っぽで、特に何を書きたいという思いも無い状態でこの文章を書いている。それには理由がある。何かを書いてそれなりの枚数にしなければならないのだ。それを意味の無い行為だと馬鹿にするなら勝手にそうすればいい。何も言わない。
この行為に対して一から順に説明しなければならないことに吐き気を催しそうになる。全てを説明するのは多大な実力を持った僕にも、さすがに不可能だということはわかっている。しかし、最大の努力はするので頑張って理解していただきたい。
前置きはこれぐらいにしておこう。さて、物語が始まる。
闇に包まれた小さな部屋の中にぼんやりと浮かんだパソコンの明かりに照らされた僕の顔が、うっすらとパソコンに反射している。お世辞にも良いとはいえないその顔は、時折気持ちの悪い薄笑いを浮かべ、それにかぶさるようにして文字が打ち込まれていく。今、あなたが読んだ文章がそれだ。僕が何も考えずに打ち込んでいるというのは前に言ったのでおわかりだろう。
開けたままにしておいた窓から静かに雪が入り込んでいたことに気づき、僕は慌てて立ち上がり窓を閉めた。思い切り閉めたせいで、その反動で大きな音が部屋に響いた。
パソコンの前に座り直し、冷め切ってしまったブラックコーヒーを一口だけ飲むと、その苦さが眠気を刺激するのを感じた。続けざまにテーブルの横に転がっていた煙草とライターを手に取り、口に咥えて火をつける。今日は起きてから今まで一本も吸っていなかったので、かすかなヤニクラを感じ、少しだけ視界がぼやけた。寒さによって冷たくなった両手に息をかけて暖める。真っ白な息が両手を包み込んだ。
マウスを握り、Pちゃんねるという日本最大規模の掲示板を開き、その中にある創作文芸板という掲示板を開く。僕はここで数年前からハンドルネームを使い、書き込みをしていた。所謂作家志望が集う掲示板だ。以前に比べて過疎ってはきているものの、まだ住人はいる。個別の新人賞のスレッドを適当に眺め、冬祭というスレッドを開いた。この板では数年前から祭と呼ばれる創作コンペが開かれており、今回開かれたのがこの冬祭というコンペだった。今までとは違い、今回は数人の審査員を設け、それによって優勝作を決めるというものだった。僕は普段からコンペに小説を投稿していたので、当然今回も投稿するつもりだった。おかしなことになるまでは。
スレッドで、固定ハンドルネームや名無し乱れての議論が繰り広げられていた。この祭の未来を決めてしまうような重要な議論だった。祭の規約におかしな点があればそれを皆で突っつき、開催までに規約をより良いものへと変えていく。これまでの祭ではそれがあった。しかし、今回の祭にはそれがなかった。幹事である大山内という人間の意向によってコロコロと規約が変えられてしまい、掲示板外でやりとりをしていたどこの馬の骨やもわからぬ人間を勝手に連れてきて、審査員にすると言い出したのだ。それではさすがの住人も怒り、掲示板は大荒れとなってしまった。大山内の周りにいる幹事代理や司会の日子も大山内の身勝手な振る舞いには何も言わず、ただ「文句を言うな。大山内に従え」と一方的に言い放ったのだ。
「駄目だ、あいつには日本語が通じない」と僕は何度も掲示板に書き込みしたのだが、無駄だった。そのほかの名無したちも大山内や幹事代理、日子に苦言を呈したのだが、何もかもが通じなかった。そこに我らの光となるハンドルネーム投が現れた。元々審査員は立候補をすればなることができるという最初のルールにのっとり、投が審査員に立候補をした。それに僕や一部の名無しが賛同し、投を支持した。
「どこの誰やもわからぬ馬の骨を審査員にしたんだ、投だって審査員になれるはずだ。なれないのはおかしい」そう思っていた。しかし、相手は日本語の通じない身勝手な人間。正論が通じるという当たり前のことですら、ここでは無意味なものとなってしまったのだ。
「投が審査員になるには、これまでに書いた小説を晒してからだ」と大山内が言った。そしてそれに幹事代理や日子は賛同した。やれやれ、と僕は思った。
しかしそこで負けないのが投! おれたちにできないことをやってのける! そこにしびれる憧れる! 投は! 大山内が連れてきたどこの誰やもわからぬ馬の骨が自作を晒していないのにも関わらず! 自分の作品を晒したのだ!
しかしそれでも認めぬのが我らが宿敵大山内と幹事代理と日子。
「それがアンタのだっていう証拠を見せなさいよ」と日子が言う。「証拠なんてどうやって見せればいいのだ」と投が言う。
やれやれ、僕はウインドブレーカーを着込み、バーへ行ってビールを飲んだ。
「この祭に否定的なので審査員にはなれませんね」と大山内が言う。
「その通りですね」と幹事代理が言う。
やれやれ、僕はバーでどもり癖がある女にフェラチオをしてもらった。そして射精した。それを写生した。「いらっしゃーせー!」とバーの店員が叫んだ。「シ、シャア専用ザクは、お、御社製な、なのですか」とどもり癖がある女が言った。やれやれ、意味がわからない。
「生は死の対極としてではなく、その一部として存在している」
僕ははっきりと、そして真っ直ぐに日子を見て言った。
「だから何だって言うのよ、本当にアンタは馬鹿ねえ」と日子が僕を見下しながら言ったので、僕は思わず手に持っていたビール・グラスを日子の頭に叩き付けた。しかし僕はこう見えて、自他共に認める女性になじられたり理不尽な扱いをされるのが好きなマゾヒストだ。それなのになぜ、日子にそんなことをしてしまったのか……。ビール・グラスの破片を頭に突き刺したままの日子が情けない声で「じゃ、帰りまーす♪ しーゆーあげいんなにもあげーん」と言ったので、僕の全身に流れる血液が沸騰し、膨張し、僕の体は粉みじんに消し飛んだ。日子はそれをフライパンでさっと炒め、塩コショウをぱらっと振って夕食にしたという。
そこで目が覚めた。
「良かった、これは夢なのだ、掲示板でやりとりをしている内に、現実とネットの区別が付かなくなってしまっていた」
「ううん、これはかなりの重病のようですね」と目の前でふんぞりかえっている小太りの医者が言ってのけた。思わず僕の意識は体から離れ、一度壁に当たって跳ね返って体に戻った。
「これが幽体離脱というものでしょうか先生」
「うむ、今君が体験したものこそが幽体離脱というものだ。それを経験できる人間は少ない。ほとんどいないと言ってもいいぐらいに、少ないのだ。しかし今君は軽々と幽体離脱をやってのけた。果たしてこれは偶然なのだろうか。いや私はそうだとは思わない。何らかの力が働いているのではないだろうか。我々の裏で、極秘裏に、巨大な力が、まるで我々を操り人形のように思い通りに動かしているのだ」
僕は先生が何を言っているのか全くもってさっぱり理解できなかったので、とりあえず近くに落ちていた金槌で先生の頭を思い切り殴りつけた。すると先生はその衝撃で「パーカッション!」と大きくくしゃみをした。なんとびっくり、鼻の穴から脳みそが飛び出したではないか。僕は思わずそれを舐めた。
「ペロッ。こ、これは青酸カリ!」
青酸カリの影響で「パーカッション!」僕の頭の中に渦巻いていたもやのようなものが「いらっしゃーせー!」大きくなって、次第にそれが体を「パーカッション!」乗っ取るような錯覚を覚え「いらっしゃーせー!」僕は軽く頭を叩き「パーカッション! いらっしゃーせー! パーカッション!」
「うるせーばかやろう! もう、すべて終わりだ! 全員やっちまえ! 男は見つけ次第ひっ捕らえろ! 奴隷として働いてもらう。抵抗すれば殺しても構わん! だが女は殺すな! 不細工は売り飛ばして美人な女には俺専用の女になってもらう!」
「ボス、俺たちにも女をください」
「しかたねえなあ、この歩く性欲野郎が! オナニーのしすぎでもう精液なんざ出ねえんじゃねえか。まあでもお前らにも分け前としてくれてやるよ! わかったらとっとと行ってこいや!」
「サンキューボス!」
屈強な肉体を誇る俺の部下どもが嬉々とした表情で走り去っていくのを少しの間見つめた後、視線をこれから襲う村へとやった。しばらくし、家々から煙が上がり、村人の悲鳴が離れた俺のところまで聞こえてきた。ふ、ふ、ふ。やれるだけやっちまおう。どうせこの世はもう終わりなんだ。好きなことをやって、好きなものを食らって、それから死ぬのも遅くは無い。
村から聞こえる悲鳴が止むのを確認し、俺は崩壊した村へと足を踏み入れた。
「緊急ニュースです。水鳥ヒロ氏の小説HAGEEROが六十万部を突破し、多大な印税を受け取った水鳥ヒロ氏が嫁と一緒に高級料理を食べていました。では現場をどうぞ」
「同時刻、居酒屋にて、酔っぱらった自称人間国宝蟹蔵氏が暴走族リーダーである鈴木レオンから暴行を受けるという事件が起きました。では現場をどうぞ」
これが僕の最大の力を振り絞った物語だ。読者の方々には肩透かしを食らった方もいらっしゃると思います。肩だけに。しかし僕は、何も考えずに頭空っぽの状態でこれほどの枚数の作品を仕上げたのです。そこは評価していただきたい。そして、祭の規約にある、『荒らし作品だと判定されたものは失格になる』という文面。僕の作品には当てはまるわけもないのだが、審査員らは日本語の通じないお方たちだ。わざわざこうして言わなくてもよいことまで言わせてしまう、そういったところを是非反省していただきたい。僕の手を煩わせないでいただきたい。
しかし難癖には定評のある方々であるということも、僕やこれを読んだ方々はわかっている。果たしてこれに難癖をつけ、失格作にしないという保障はあるのだろうか。それは無いと言えよう。僕が貴重な一時間(実質は三十分強なのだが、誇大させたほうが説得力があると思い、一時間にさせていただいた。誇大で思い出したのだが、映画の宇宙戦艦ヤマトはなかなか面白いそうで、ヤマト世代ではなく、尚且つ木村拓哉が好きではない僕も少しばかりの興味を持ってしまったのだが、まあDVDのレンタルまで待とうと思う。DVDと言えば、最近レンタルをしたバタフライエフェクトはすごく面白かった。しかし久々にスプラッターものを見たいものである。昨今は昔のスプラッター映画をリメイクするというのが流行っているのだが、果たして面白いのだろうか。テキサスチェーンソーは良かった。そのほかも見てみるとしよう。)さて、何の話だったろうか、そう、僕の貴重な一時間を使って書いた作品だ。これを荒らし作品と認定した瞬間、怒りによって暴走したもう一人の僕が祭をブチ壊すことになるだろう。これは脅しではないので、勘違いせぬようにお願いしたい。公平なジャッジを期待する。が、大山内やその他のイエスマンたちに何を言っても無駄なのかもしれないな、やれやれ、とため息をこぼしつつ、今キーボードを打っている手を止
男の行方は、誰も知らない。
この行為に対して一から順に説明しなければならないことに吐き気を催しそうになる。全てを説明するのは多大な実力を持った僕にも、さすがに不可能だということはわかっている。しかし、最大の努力はするので頑張って理解していただきたい。
前置きはこれぐらいにしておこう。さて、物語が始まる。
闇に包まれた小さな部屋の中にぼんやりと浮かんだパソコンの明かりに照らされた僕の顔が、うっすらとパソコンに反射している。お世辞にも良いとはいえないその顔は、時折気持ちの悪い薄笑いを浮かべ、それにかぶさるようにして文字が打ち込まれていく。今、あなたが読んだ文章がそれだ。僕が何も考えずに打ち込んでいるというのは前に言ったのでおわかりだろう。
開けたままにしておいた窓から静かに雪が入り込んでいたことに気づき、僕は慌てて立ち上がり窓を閉めた。思い切り閉めたせいで、その反動で大きな音が部屋に響いた。
パソコンの前に座り直し、冷め切ってしまったブラックコーヒーを一口だけ飲むと、その苦さが眠気を刺激するのを感じた。続けざまにテーブルの横に転がっていた煙草とライターを手に取り、口に咥えて火をつける。今日は起きてから今まで一本も吸っていなかったので、かすかなヤニクラを感じ、少しだけ視界がぼやけた。寒さによって冷たくなった両手に息をかけて暖める。真っ白な息が両手を包み込んだ。
マウスを握り、Pちゃんねるという日本最大規模の掲示板を開き、その中にある創作文芸板という掲示板を開く。僕はここで数年前からハンドルネームを使い、書き込みをしていた。所謂作家志望が集う掲示板だ。以前に比べて過疎ってはきているものの、まだ住人はいる。個別の新人賞のスレッドを適当に眺め、冬祭というスレッドを開いた。この板では数年前から祭と呼ばれる創作コンペが開かれており、今回開かれたのがこの冬祭というコンペだった。今までとは違い、今回は数人の審査員を設け、それによって優勝作を決めるというものだった。僕は普段からコンペに小説を投稿していたので、当然今回も投稿するつもりだった。おかしなことになるまでは。
スレッドで、固定ハンドルネームや名無し乱れての議論が繰り広げられていた。この祭の未来を決めてしまうような重要な議論だった。祭の規約におかしな点があればそれを皆で突っつき、開催までに規約をより良いものへと変えていく。これまでの祭ではそれがあった。しかし、今回の祭にはそれがなかった。幹事である大山内という人間の意向によってコロコロと規約が変えられてしまい、掲示板外でやりとりをしていたどこの馬の骨やもわからぬ人間を勝手に連れてきて、審査員にすると言い出したのだ。それではさすがの住人も怒り、掲示板は大荒れとなってしまった。大山内の周りにいる幹事代理や司会の日子も大山内の身勝手な振る舞いには何も言わず、ただ「文句を言うな。大山内に従え」と一方的に言い放ったのだ。
「駄目だ、あいつには日本語が通じない」と僕は何度も掲示板に書き込みしたのだが、無駄だった。そのほかの名無したちも大山内や幹事代理、日子に苦言を呈したのだが、何もかもが通じなかった。そこに我らの光となるハンドルネーム投が現れた。元々審査員は立候補をすればなることができるという最初のルールにのっとり、投が審査員に立候補をした。それに僕や一部の名無しが賛同し、投を支持した。
「どこの誰やもわからぬ馬の骨を審査員にしたんだ、投だって審査員になれるはずだ。なれないのはおかしい」そう思っていた。しかし、相手は日本語の通じない身勝手な人間。正論が通じるという当たり前のことですら、ここでは無意味なものとなってしまったのだ。
「投が審査員になるには、これまでに書いた小説を晒してからだ」と大山内が言った。そしてそれに幹事代理や日子は賛同した。やれやれ、と僕は思った。
しかしそこで負けないのが投! おれたちにできないことをやってのける! そこにしびれる憧れる! 投は! 大山内が連れてきたどこの誰やもわからぬ馬の骨が自作を晒していないのにも関わらず! 自分の作品を晒したのだ!
しかしそれでも認めぬのが我らが宿敵大山内と幹事代理と日子。
「それがアンタのだっていう証拠を見せなさいよ」と日子が言う。「証拠なんてどうやって見せればいいのだ」と投が言う。
やれやれ、僕はウインドブレーカーを着込み、バーへ行ってビールを飲んだ。
「この祭に否定的なので審査員にはなれませんね」と大山内が言う。
「その通りですね」と幹事代理が言う。
やれやれ、僕はバーでどもり癖がある女にフェラチオをしてもらった。そして射精した。それを写生した。「いらっしゃーせー!」とバーの店員が叫んだ。「シ、シャア専用ザクは、お、御社製な、なのですか」とどもり癖がある女が言った。やれやれ、意味がわからない。
「生は死の対極としてではなく、その一部として存在している」
僕ははっきりと、そして真っ直ぐに日子を見て言った。
「だから何だって言うのよ、本当にアンタは馬鹿ねえ」と日子が僕を見下しながら言ったので、僕は思わず手に持っていたビール・グラスを日子の頭に叩き付けた。しかし僕はこう見えて、自他共に認める女性になじられたり理不尽な扱いをされるのが好きなマゾヒストだ。それなのになぜ、日子にそんなことをしてしまったのか……。ビール・グラスの破片を頭に突き刺したままの日子が情けない声で「じゃ、帰りまーす♪ しーゆーあげいんなにもあげーん」と言ったので、僕の全身に流れる血液が沸騰し、膨張し、僕の体は粉みじんに消し飛んだ。日子はそれをフライパンでさっと炒め、塩コショウをぱらっと振って夕食にしたという。
そこで目が覚めた。
「良かった、これは夢なのだ、掲示板でやりとりをしている内に、現実とネットの区別が付かなくなってしまっていた」
「ううん、これはかなりの重病のようですね」と目の前でふんぞりかえっている小太りの医者が言ってのけた。思わず僕の意識は体から離れ、一度壁に当たって跳ね返って体に戻った。
「これが幽体離脱というものでしょうか先生」
「うむ、今君が体験したものこそが幽体離脱というものだ。それを経験できる人間は少ない。ほとんどいないと言ってもいいぐらいに、少ないのだ。しかし今君は軽々と幽体離脱をやってのけた。果たしてこれは偶然なのだろうか。いや私はそうだとは思わない。何らかの力が働いているのではないだろうか。我々の裏で、極秘裏に、巨大な力が、まるで我々を操り人形のように思い通りに動かしているのだ」
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「ペロッ。こ、これは青酸カリ!」
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「うるせーばかやろう! もう、すべて終わりだ! 全員やっちまえ! 男は見つけ次第ひっ捕らえろ! 奴隷として働いてもらう。抵抗すれば殺しても構わん! だが女は殺すな! 不細工は売り飛ばして美人な女には俺専用の女になってもらう!」
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「サンキューボス!」
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「同時刻、居酒屋にて、酔っぱらった自称人間国宝蟹蔵氏が暴走族リーダーである鈴木レオンから暴行を受けるという事件が起きました。では現場をどうぞ」
これが僕の最大の力を振り絞った物語だ。読者の方々には肩透かしを食らった方もいらっしゃると思います。肩だけに。しかし僕は、何も考えずに頭空っぽの状態でこれほどの枚数の作品を仕上げたのです。そこは評価していただきたい。そして、祭の規約にある、『荒らし作品だと判定されたものは失格になる』という文面。僕の作品には当てはまるわけもないのだが、審査員らは日本語の通じないお方たちだ。わざわざこうして言わなくてもよいことまで言わせてしまう、そういったところを是非反省していただきたい。僕の手を煩わせないでいただきたい。
しかし難癖には定評のある方々であるということも、僕やこれを読んだ方々はわかっている。果たしてこれに難癖をつけ、失格作にしないという保障はあるのだろうか。それは無いと言えよう。僕が貴重な一時間(実質は三十分強なのだが、誇大させたほうが説得力があると思い、一時間にさせていただいた。誇大で思い出したのだが、映画の宇宙戦艦ヤマトはなかなか面白いそうで、ヤマト世代ではなく、尚且つ木村拓哉が好きではない僕も少しばかりの興味を持ってしまったのだが、まあDVDのレンタルまで待とうと思う。DVDと言えば、最近レンタルをしたバタフライエフェクトはすごく面白かった。しかし久々にスプラッターものを見たいものである。昨今は昔のスプラッター映画をリメイクするというのが流行っているのだが、果たして面白いのだろうか。テキサスチェーンソーは良かった。そのほかも見てみるとしよう。)さて、何の話だったろうか、そう、僕の貴重な一時間を使って書いた作品だ。これを荒らし作品と認定した瞬間、怒りによって暴走したもう一人の僕が祭をブチ壊すことになるだろう。これは脅しではないので、勘違いせぬようにお願いしたい。公平なジャッジを期待する。が、大山内やその他のイエスマンたちに何を言っても無駄なのかもしれないな、やれやれ、とため息をこぼしつつ、今キーボードを打っている手を止
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