この世で一番ほしいプレゼント♡

相沢蒼依

文字の大きさ
21 / 36
番外編 運命の人

しおりを挟む
♡♡♡

 アンドレアが南方の宮殿にて、恋の行方を模索している一方、邸宅に残されたカールは、言いつけどおりにリリアーナのもとを訪れた。

「カール、お兄様からパーティーのことを聞いたのかしら?」

 執事の私が顔を見せたことで、リリアーナ様はアンドレア様との会話を思い出したのか、扉の前で控えている私の腕を引っ張り、部屋の中に誘う。

「確か、ご友人のお屋敷でおこなわれるパーティーとお聞きしております」

「本当はね、お友達には、お兄様を連れて来てって頼まれているの」

 まぶたを伏せて気落ちするご様子に、相槌を打ってみせる。

「なるほど。アンドレア様はどなたがご覧になっても、目を惹く素敵なお方ですから。お近づきになりたいのでしょうね」

(大規模なパーティー会場で、たくさんの人に囲まれていても、アンドレア様の存在を感じ取ることができる。堂々とした佇まいで立っているだけなのに、華やかなオーラをまとった姿は、嫌でも目を奪わてれしまう――)

 少し前にあったパーティーのことを思い出していると、リリアーナ様はやや迷惑げな表情で口を開く。

「だけどお兄様がシスコンだってバレてしまうのが、どうしてもイヤなの!」

「シスコン……?」

 意外なセリフに、思わずオウム返しをしてしまった。

「私がね、カールをエスコートに連れて行きたいって言った瞬間、お兄様ったらすごく不服そうなお顔をしたの。なんで兄の自分じゃないのかって、思ったに違いなくてよ」

「確かに、そうかもしれません。アンドレア様はリリアーナ様を、とても大事に思われておりますので」

(私の目から見ても、シスコンと思うような言動を感じませんが、兄妹だからこそ、なにか通ずるものがあるのかもしれませんね)

「人様には隠したい、こういう事情を抱えているの。パーティーは4日後ですけど、カールは私をエスコートできるかしら?」

「アンドレア様から、リリアーナ様のお話を聞くよう仰せつかっておりますので、問題ございません」

「ホント! よかった、当日お願いするわね」

 不安そうな面持ちから一転、アンドレア様によく似た、華やかさのある笑みを浮かべる。

「それでは、どれくらいの規模のパーティーなのか、お教えください。それに合わせたドレスを選びましょうか。私もリリアーナ様のドレスに合わせた、それなりのタキシードを用意しなければなりませんので」

 リリアーナ様と入念に話し合い、ドレス選びに時間をかけた。早々に決まってしまったら、その後は自由時間になってしまい、アンドレア様がいない寂しさに打ちひしがれるのがわかったから。

 リリアーナ様とご一緒させていただくことで、雑念を追い払い、余計な妄想を考えない時間を過ごせたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...