ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

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ピロトーク:ピロトークを聴きながら④

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 周防さんの病院からの帰り道は、気持ち的には何でもなかったのに、自宅に近づくにつれ、見えない不安がひしひしと僕を襲ってきた。すぐ傍に、郁也さんがいるというのにだ。

 不安を悟られないように俯きながら歩いていたら、そっと肩を抱き寄せられる。

「今夜の晩御飯は涼一の大好きな、野菜のいっぱい入ったカレーにしてやるからな。楽しみにしてろよ」

 抱きしめている手にぎゅっと力が入って、更に郁也さんとの距離が縮まった。

(いつもはこんなに敏感じゃない人なのに、どうして僕が不安がっているのが分かったんだろう?)

 俯いてた顔を郁也さんに向けると、柔らかく微笑んでくれる。その笑みを見ただけで不安だった気持ちが、すっと拭われていった。

「――郁也さん、いろいろとありがとね」

「何、言ってんだ。これくらい、どうってことないだろ。しかもお相子だろ?」

「お相子?」

 僕が首を傾げると外だというのに、掠め取るようなキスをする、大胆な郁也さん。

「俺が寝込んだとき、一生懸命に看病してくれたろ。実はすっげぇ嬉しかったんだ。しばらく仕事が忙しくて、一緒にいられなかった分、涼一が付っきりで離れずに傍にいてくれたから」

「僕も、同じ気持ちだよ」

「いつまで休めるか分かんねぇけど、家に帰ったら、何をするか話し合おうぜ」

 うきうきしながら提案してくれたけど、正直したいことなど思い浮かばなかったので、家でのんびりすることになった。
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