17 / 37
課外授業:誉められたい
6
しおりを挟む
いたんだけども――
なぜか髪型を七三分けにしていて、とても似合ってないその姿に言葉が出ない。
「奈美ちゃん、この方は誰だい?」
「ええっと……」
(正直、知り合いだと言いたくないよ)
恐るおそる変な髪形の三木先生を見ると、爽やかな作り笑いをして私と目を合わせた。
「彼女をここまで送ってくれてありがとう。ここからは彼氏の僕が送っていくから」
「えっ、彼氏!?」
猛さんは驚いて、私と三木先生を交互に見比べた。先生はカレシ(仮)が勝手に発動され、どうしていいかお手上げ状態。しかも何で似合わない七三分けの髪型で、彼氏として登場するかな……。
「彼女はまだ高校生だし、社会人の僕と付き合ってることを知られるとほら、いろいろあるでしょう?」
「まあ、そうですね……」
困惑しまくりの私の腕を強引に引っ張ると、三木先生の体にくっつくように抱きしめる。
そのときちょうど私の耳が、三木先生の胸元の位置になって、鼓動が直に聞こえてしまった。
(あれ? すっごくドキドキしてる――!?)
「奈美が卒業してから、きちんとご両親に挨拶しに行く約束をしているんです。そういう関係なんで、諦めてください」
呆然とする猛さんを尻目に私の腕に自分の腕を絡め、自宅に向かって歩き出した三木先生。
「あの猛さん、ここまで送ってくれて、有難うございました。ごめんなさいっ!」
申し訳ない気持ちがいっぱいになったので、引っ張られながらも一応謝った。
彼からの返事が聞けないまま三木先生に連れられ、家の前にすぐさま到着する。
「あの三木先生、有難うございました。その……すごく助かりました」
どうして似合わない、七三分けの髪形をしているのか。どうしてすっごく鼓動が早かったのか――
聞きたいことがたくさんあったけど、聞きにくいのはやっぱり、図書室での出来事が私の言葉を奪っていた。
「たまたま買い物に出かけようとしたら、声が聞こえてきたんでな。明らかにお前が迷惑そうにしてるのに、まとわりつかれてただろ?」
「はい、正直困ってました」
その言葉でよぉく三木先生のことを見てみると、髪の毛がしっとりと濡れているのが分った。
「あのもしかしてお風呂上りですか? 風邪を引いちゃうかもしれないのに」
首に巻いていたストールを外して、急いで三木先生の首にかけてあげる。
「そんなヤワじゃないって。大丈夫だから」
「ダメですって! 若くないんだから」
「まったく強情な生徒だな。しかも年寄り扱いするって、さりげなく酷い」
「年寄りついでにその髪型、もっと老けて見えますよ」
見れば見るほど、似合わなすぎて笑いしか出てこない。思わず口元を押さえてクスクス笑ってしまった。
「だって、しょうがないだろ。さっきの男が結構、イケメンだったからさ。対抗するには、コレしかないって思ったんだ」
「いつものボサボサ頭でも大丈夫だったのに。何を血迷って、可笑しなほうに走っているのやら」
「それだけじゃなく! ……その、お前もドレスアップしていて、そのまま横に並ぶのが居たたまれなかったんだ。普段見る制服と違っていたから、いつもの感じじゃなかったし」
「それでドキドキしてたの?」
気づいたら、疑問がぽろりと口から出てしまった。私の質問に一瞬ぽかんとしてから、急に慌てふためく。
「どっ、ドキドキするに決まってるだろ。あの場面をだな、どうやり過ごそうかと、必死になって考えまくったんだ。相手はイケメン御曹司風だったし、奈美はこんなだし、僕はヨレヨレの冴えない教師だし」
「確かに冴えない教師だけど、やっぱりいつもの髪型のほうがカッコイイから!」
「おー、ありがとな」
照れる様子の三木先生になぜかテレがうつってしまい、今度は私が慌てふためいた。
「ちょっ、なにその変な髪形でテレまくってるの。も~気持ち悪いったら、ありゃしない。カッコイイって言ったのは見慣れてるからであって、別に変な意味なんてないんだからね!」
言いながら背伸びして、三木先生の頭をグチャグチャにしてやる。
「分ったから、もう乱暴なヤツだな」
苦笑いをしながら、そっと私の頬を触った。
「早く家に入って、風呂入って寝ろよ。肌が冷たくなってる」
「そっちこそ早く買い物に行って、家に帰ったほうがいいよ。頭、濡れてるんだから風邪引いちゃうよ」
「おー、じゃあコレ借りてくな。ありがと奈美」
「こっちこそ、ありがと……。おやすみなさい」
三木先生に貸したストールは着ていた服にまったく似合わなかったけど、風邪のリスクが減るなら、いいかなって思った。
去って行く後ろ姿を見ながら寂しいって思うのはきっと、会話が盛り上がったせい。
この胸の高鳴りも、そのせいなんだ――
なぜか髪型を七三分けにしていて、とても似合ってないその姿に言葉が出ない。
「奈美ちゃん、この方は誰だい?」
「ええっと……」
(正直、知り合いだと言いたくないよ)
恐るおそる変な髪形の三木先生を見ると、爽やかな作り笑いをして私と目を合わせた。
「彼女をここまで送ってくれてありがとう。ここからは彼氏の僕が送っていくから」
「えっ、彼氏!?」
猛さんは驚いて、私と三木先生を交互に見比べた。先生はカレシ(仮)が勝手に発動され、どうしていいかお手上げ状態。しかも何で似合わない七三分けの髪型で、彼氏として登場するかな……。
「彼女はまだ高校生だし、社会人の僕と付き合ってることを知られるとほら、いろいろあるでしょう?」
「まあ、そうですね……」
困惑しまくりの私の腕を強引に引っ張ると、三木先生の体にくっつくように抱きしめる。
そのときちょうど私の耳が、三木先生の胸元の位置になって、鼓動が直に聞こえてしまった。
(あれ? すっごくドキドキしてる――!?)
「奈美が卒業してから、きちんとご両親に挨拶しに行く約束をしているんです。そういう関係なんで、諦めてください」
呆然とする猛さんを尻目に私の腕に自分の腕を絡め、自宅に向かって歩き出した三木先生。
「あの猛さん、ここまで送ってくれて、有難うございました。ごめんなさいっ!」
申し訳ない気持ちがいっぱいになったので、引っ張られながらも一応謝った。
彼からの返事が聞けないまま三木先生に連れられ、家の前にすぐさま到着する。
「あの三木先生、有難うございました。その……すごく助かりました」
どうして似合わない、七三分けの髪形をしているのか。どうしてすっごく鼓動が早かったのか――
聞きたいことがたくさんあったけど、聞きにくいのはやっぱり、図書室での出来事が私の言葉を奪っていた。
「たまたま買い物に出かけようとしたら、声が聞こえてきたんでな。明らかにお前が迷惑そうにしてるのに、まとわりつかれてただろ?」
「はい、正直困ってました」
その言葉でよぉく三木先生のことを見てみると、髪の毛がしっとりと濡れているのが分った。
「あのもしかしてお風呂上りですか? 風邪を引いちゃうかもしれないのに」
首に巻いていたストールを外して、急いで三木先生の首にかけてあげる。
「そんなヤワじゃないって。大丈夫だから」
「ダメですって! 若くないんだから」
「まったく強情な生徒だな。しかも年寄り扱いするって、さりげなく酷い」
「年寄りついでにその髪型、もっと老けて見えますよ」
見れば見るほど、似合わなすぎて笑いしか出てこない。思わず口元を押さえてクスクス笑ってしまった。
「だって、しょうがないだろ。さっきの男が結構、イケメンだったからさ。対抗するには、コレしかないって思ったんだ」
「いつものボサボサ頭でも大丈夫だったのに。何を血迷って、可笑しなほうに走っているのやら」
「それだけじゃなく! ……その、お前もドレスアップしていて、そのまま横に並ぶのが居たたまれなかったんだ。普段見る制服と違っていたから、いつもの感じじゃなかったし」
「それでドキドキしてたの?」
気づいたら、疑問がぽろりと口から出てしまった。私の質問に一瞬ぽかんとしてから、急に慌てふためく。
「どっ、ドキドキするに決まってるだろ。あの場面をだな、どうやり過ごそうかと、必死になって考えまくったんだ。相手はイケメン御曹司風だったし、奈美はこんなだし、僕はヨレヨレの冴えない教師だし」
「確かに冴えない教師だけど、やっぱりいつもの髪型のほうがカッコイイから!」
「おー、ありがとな」
照れる様子の三木先生になぜかテレがうつってしまい、今度は私が慌てふためいた。
「ちょっ、なにその変な髪形でテレまくってるの。も~気持ち悪いったら、ありゃしない。カッコイイって言ったのは見慣れてるからであって、別に変な意味なんてないんだからね!」
言いながら背伸びして、三木先生の頭をグチャグチャにしてやる。
「分ったから、もう乱暴なヤツだな」
苦笑いをしながら、そっと私の頬を触った。
「早く家に入って、風呂入って寝ろよ。肌が冷たくなってる」
「そっちこそ早く買い物に行って、家に帰ったほうがいいよ。頭、濡れてるんだから風邪引いちゃうよ」
「おー、じゃあコレ借りてくな。ありがと奈美」
「こっちこそ、ありがと……。おやすみなさい」
三木先生に貸したストールは着ていた服にまったく似合わなかったけど、風邪のリスクが減るなら、いいかなって思った。
去って行く後ろ姿を見ながら寂しいって思うのはきっと、会話が盛り上がったせい。
この胸の高鳴りも、そのせいなんだ――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる