見えないライン

相沢蒼依

文字の大きさ
21 / 37
見えないライン

しおりを挟む
 3連休の間に、三木先生の家を訊ねようかと考えた。

 だけどあんなことがあった後だし、どうにもテレてしまってどんな顔していいか分からないし、喋りたい言葉もきっと出てこないって思う。

 いつもみたいに三木先生を茶化すなんてことは、もう絶対にできない。逢った瞬間にお互い気まずい雰囲気になって、視線を逸らしたりするだろうな。

 三木先生も「あー……」とか言いながら、照れながらボサボサ頭を掻いてるかもしれない。

 そんな想像を、連休中に延々としていた私。

「きっと顔見ただけで、思い出しちゃうよ」

 三木先生のぬくもり。
 
 三木先生の香り。

 三木先生の唇……

 三木先生の――


「あぁ、ダメダメ! 頭の中が全部が三木先生のことしか浮かんでこないって、どんだけ重症なんだ」

 こんな状態じゃ、学校でヘマをする恐れがある。ゆえに冷却期間ということで、逢いたい気持ちをガマンして家に引き篭もっていた。

 ――そして連休明けのすがすがしい火曜日。国語の授業で逢えることをとても楽しみにしながら登校した。

 三木先生と両想い。みんなにそれがバレないよう付き合うのは大変だけど、先生と一緒ならきっと大丈夫。

 だって三木先生だから……って、朝から何考えてるんだよ。もう。

 机に突っ伏して赤くなった頬を隠す。これじゃあ、冷却期間がなかったのと一緒じゃない。

 そんな自分自身に呆れ返ったとき予鈴が鳴って、教頭先生が教室に入ってきた。いきなりの教頭先生の登場に、教室内がざわつく。

「静かにしなさい! 三木先生が一身上の都合で休職したので、代わりに私が授業をする。どこまで進んでいるんだ?」

 一身上の都合で休職!? そんなの、何も聞いてないよ。

「はいはーい!! 一身上の都合が気になって、授業が受けられませーん」

 いつものお約束で一番前にいる目立ちたがりのクラスメートが、わざわざ席を立って質問した。

「まったく……。プライベートなことなんだが三木先生は持病が悪化した関係で、東京にいる知り合いの医者に診てもらうことになったそうだ」

 持病!? そんな素振り、全然なかったのに。しかも東京って、ここからじゃ遠すぎる。

 もう逢えないの? 三木先生――せっかく……せっかく両想いになったのに分かった途端いなくなるなんて、そんなのヒドイよ!

 ふわふわしてた恋心という名の風船が、一気に萎んで落下していく。置いてきぼりにされた私の気持ちは、どうすればいいの?

 震える両手をぎゅっと握りしめ、勢いよく席から立ち上がった。

「教頭先生、すみません! 朝から具合が悪くてフラフラするので、これから病院に行って来ます。早退させてください」

 怒りとか悲しみとか心の中に負の感情が、これでもかと溢れまくってたけど思ってた以上に、落ち着いて声を出すことができた。

「えっと、そこにいるのは坂本だったか?」

 教卓に置いてある座席表を見ながらまごまごしてる教頭先生を尻目に、さっさと身支度を整え、コートを羽織る。

「帰り支度がととのったので、病院に向かいます! さよなら」

 唖然とする教頭先生とクラスメートを一瞥し、逃げるように教室を出た。

 三木先生がまだボロアパートにいることを祈りながら、必死に通学路を走り抜ける――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敏腕SEの優しすぎる独占愛

春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。 あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。 「終わらせてくれたら良かったのに」 人生のどん底にいた、26歳OL。 木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~ × 「泣いたらいいよ。傍にいるから」 雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。 藤堂 柊真 ~Todo Syuma~ 雨の夜の出会いがもたらした 最高の溺愛ストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

君までの距離

高遠 加奈
恋愛
普通のOLが出会った、特別な恋。 マンホールにはまったパンプスのヒールを外して、はかせてくれた彼は特別な人でした。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...