FF~フォルテシモ~

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
13 / 47
告白

しおりを挟む
***

「おじいちゃん、おはよう!」

 食卓テーブルにコトンと音を立てて、おじいちゃん用のお弁当を置く。普段の食事はお手伝いさんが作るんだけど、お弁当は自ら作っていた。

 用意された朝食に美味しく手をつけながら、傍らに手帳を置いて今日のスケジュールを確認する。

「最近の蓮が作るお弁当は、本当に美味しいねぇ」

 朝ご飯を口にしながら、おじいちゃんが微笑んで褒めてくれた。

 ――やった!

 私がつられて嬉しそうに笑うと、おじいちゃんが同じようにニッコリ笑ってくれる。

「前と比べると全体的に何だか、まろやかな味付けに変わった気がするよ。もしかして誰かイイ人でも出来たのかい?」

 きっと今川部長のお弁当のお陰――あれからずっと、お弁当交換が続いているから。いろいろ教えてもらったお陰で、こうやっておじいちゃんから褒められた。

「残念ながらイイ人はいないよ。今の若い男は頼りなくって、ぜんぜんダメだし」

「会社でも誰か、気になる人とかいないのかい?」

 その言葉にこっそりため息をついて、ご飯を食べる手を止める。

(――今川部長の名前は出せない。きっと反対するよね。年齢的にもバツイチな件も……。そして私の片思いだし)

「会社にイイ人いたっけ? 全然見当たらないよ」

 誤魔化しながら笑って言うと、おじいちゃんはうーんと考え込む仕草をした。

「ワシが誰か紹介したら、蓮は会ってくれるかい?」

「とりあえず会うだけなら……」

 そう言って、またご飯を食べ始める。

 おじいちゃんが心配している気持ちが分かるので、無下に断れない。会うだけできっと、付き合うのは断ることになるんだろうな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,075pt お気に入り:2,477

悪魔との100日ー淫獄の果てにー

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:439

狡猾な狼は微笑みに牙を隠す

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:53

婚約者の為の閨教育なので浮気じゃないらしい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:221

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

処理中です...