22 / 47
危愛
今川真人side2
しおりを挟む
***
その1週間後、他の部署に用事があって出ようとしたら、角の向こう側から声が聞こえた。大好きな蓮の声――
気になってコッソリ覗いてみると、意外な人物が傍にいた。
「だから会長から社内の男連中との見合い話、聞いてないですか? 朝比奈先輩」
――あれは、甥っ子の貴弘だ。
「聞いたような、聞いてないような」
素っ気なくあしらっている蓮。
「専務が俺のことを推薦してくれたみたいなんですよ。ふたり並ぶと、とても似合いのカップルだねって」
「そうかしら……」
「朝比奈先輩は、俺が苦手でしょ?」
覗き込むようにして顔を見つめる貴弘に、心底イヤそうに蓮は顎を引いた。
「山田先輩が企画した合コンだって俺が話しかけたのに、さっさと隣にいる外川先輩とくっちゃべるし。知ってましたか? 俺ら、客寄せパンダだったって。上手く山田先輩に利用されたんですよ」
よく喋る男だな。それを仕事で生かせよ貴弘。
「合コンが盛り上がれば、それでいいじゃない」
そう言ってそっぽを向く姿に、ハラハラせずにはいられなかった。
専務じゃないがホントにふたりが、似合いのカップルに見えたのである。
――何か切ない。
「朝比奈先輩は年下はキライですか? それとも影でコソコソと人の話を盗み聞きする、おっちゃんが好みやろか?」
(うわっ、バレてる!)
ギクリと体が硬直した。
「今川くんって、関西人だったんだ……全然、気がつかなかった」
「前付き合ってた彼女が訛りがイヤやって言うから直したんですけど、朝比奈先輩はどっちがええですか?」
言い終わらない内に俺の腕を掴んで、壁から引きずり出されてしまった。
「今川部長……」
「おっちゃんも人が悪いなぁ。それとも甥っ子の恋愛の行方が、気になったんやろか?」
自分がしていた行動を軽率だったと内心反省しながら、高圧的な貴弘の態度にムッとした。
「そんなところで朝比奈さんに絡む暇があるなら、ちゃんと仕事したらどうだ」
蓮が明らかにイヤがってるのを分かっていながら、わざわざ口説いてる。
「自分トコの推薦した部署の男と付き合わせようと企んどるから、盗み聞きしてはったんやろ?」
「そんなことはありません」
「今川部長もこんなとこで油売ってないで、さっさと仕事したらどうです」
蓮が俺たちの会話を断ち切るように、怒った声で言い放つ。
言葉に詰まる俺を見て貴弘はニヤリと笑いながら、蓮の肩に腕を回した。
「朝比奈先輩は営業部に用事があるんでしたよね。一緒に行きましょう」
そう言って、この場から彼女たちを連れ去る。俺はなす術がないまま立ち尽くした。
完敗の二文字が、ふと頭に浮かんだ。
「今川部長、やっと見つけた!」
気落ちながらとぼとぼ廊下を歩いてると、小走りでこちらにやって来た仕事のできる部下の山田くん。
彼の顔を見て決心した。
「取引先の鎌田さんから、何度も電話がかかってきています」
「ああ、わざわざすまないね」
一緒に並んで部署に戻る。言うなら今だろう。
「山田くん、実は言わなきゃならないことがある」
「何でしょうか?」
不思議そうな顔をして、小さな目を見開きながら俺を見つめる。
「実は、朝比奈さんと付き合っているんだ……」
ぽかーん(@д@)←山田顔
思わず立ち止まる山田くん。
「信じられない話なんだけど、ホントの話なんだ」
「あの……何か弱みを握られて、無理やりに付き合わされてるワケじゃなく……。ホントにですか?」
疑いの眼で見る山田くんに、静かに頷いた。
「それで、頼みがあるんだが」
「はい、何ですか?」
「彼女の見合い話があって、山田くんが候補にあがっているんだ。ほとぼりが冷めるまででいいから、俺の身代わりになってくれないか?」
山田くんに向かって合掌した。
「なぜ俺がそんな候補に……」
――俺が名前出したとは言いにくい。
顎に手をあてて、しばらく考える山田くん。
「いいですけど……。短期間でお願いします。一応俺にも彼女がいるんで」
「すまない。なるべく早く決心つけて、会長に話せるように努力します」
のちにこれが山田くんの破局の原因になるとは、このときは夢にも思わなかった。
その1週間後、他の部署に用事があって出ようとしたら、角の向こう側から声が聞こえた。大好きな蓮の声――
気になってコッソリ覗いてみると、意外な人物が傍にいた。
「だから会長から社内の男連中との見合い話、聞いてないですか? 朝比奈先輩」
――あれは、甥っ子の貴弘だ。
「聞いたような、聞いてないような」
素っ気なくあしらっている蓮。
「専務が俺のことを推薦してくれたみたいなんですよ。ふたり並ぶと、とても似合いのカップルだねって」
「そうかしら……」
「朝比奈先輩は、俺が苦手でしょ?」
覗き込むようにして顔を見つめる貴弘に、心底イヤそうに蓮は顎を引いた。
「山田先輩が企画した合コンだって俺が話しかけたのに、さっさと隣にいる外川先輩とくっちゃべるし。知ってましたか? 俺ら、客寄せパンダだったって。上手く山田先輩に利用されたんですよ」
よく喋る男だな。それを仕事で生かせよ貴弘。
「合コンが盛り上がれば、それでいいじゃない」
そう言ってそっぽを向く姿に、ハラハラせずにはいられなかった。
専務じゃないがホントにふたりが、似合いのカップルに見えたのである。
――何か切ない。
「朝比奈先輩は年下はキライですか? それとも影でコソコソと人の話を盗み聞きする、おっちゃんが好みやろか?」
(うわっ、バレてる!)
ギクリと体が硬直した。
「今川くんって、関西人だったんだ……全然、気がつかなかった」
「前付き合ってた彼女が訛りがイヤやって言うから直したんですけど、朝比奈先輩はどっちがええですか?」
言い終わらない内に俺の腕を掴んで、壁から引きずり出されてしまった。
「今川部長……」
「おっちゃんも人が悪いなぁ。それとも甥っ子の恋愛の行方が、気になったんやろか?」
自分がしていた行動を軽率だったと内心反省しながら、高圧的な貴弘の態度にムッとした。
「そんなところで朝比奈さんに絡む暇があるなら、ちゃんと仕事したらどうだ」
蓮が明らかにイヤがってるのを分かっていながら、わざわざ口説いてる。
「自分トコの推薦した部署の男と付き合わせようと企んどるから、盗み聞きしてはったんやろ?」
「そんなことはありません」
「今川部長もこんなとこで油売ってないで、さっさと仕事したらどうです」
蓮が俺たちの会話を断ち切るように、怒った声で言い放つ。
言葉に詰まる俺を見て貴弘はニヤリと笑いながら、蓮の肩に腕を回した。
「朝比奈先輩は営業部に用事があるんでしたよね。一緒に行きましょう」
そう言って、この場から彼女たちを連れ去る。俺はなす術がないまま立ち尽くした。
完敗の二文字が、ふと頭に浮かんだ。
「今川部長、やっと見つけた!」
気落ちながらとぼとぼ廊下を歩いてると、小走りでこちらにやって来た仕事のできる部下の山田くん。
彼の顔を見て決心した。
「取引先の鎌田さんから、何度も電話がかかってきています」
「ああ、わざわざすまないね」
一緒に並んで部署に戻る。言うなら今だろう。
「山田くん、実は言わなきゃならないことがある」
「何でしょうか?」
不思議そうな顔をして、小さな目を見開きながら俺を見つめる。
「実は、朝比奈さんと付き合っているんだ……」
ぽかーん(@д@)←山田顔
思わず立ち止まる山田くん。
「信じられない話なんだけど、ホントの話なんだ」
「あの……何か弱みを握られて、無理やりに付き合わされてるワケじゃなく……。ホントにですか?」
疑いの眼で見る山田くんに、静かに頷いた。
「それで、頼みがあるんだが」
「はい、何ですか?」
「彼女の見合い話があって、山田くんが候補にあがっているんだ。ほとぼりが冷めるまででいいから、俺の身代わりになってくれないか?」
山田くんに向かって合掌した。
「なぜ俺がそんな候補に……」
――俺が名前出したとは言いにくい。
顎に手をあてて、しばらく考える山田くん。
「いいですけど……。短期間でお願いします。一応俺にも彼女がいるんで」
「すまない。なるべく早く決心つけて、会長に話せるように努力します」
のちにこれが山田くんの破局の原因になるとは、このときは夢にも思わなかった。
0
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
Marry Me?
美凪ましろ
恋愛
――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。
仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。
不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。
※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。
※彼の過去だけ、ダークな描写があります。
■画像は、イトノコさまの作品です。
https://www.pixiv.net/artworks/85809405
その卵焼き俺にも食わせろ!―ワンナイトラブから逃げたはずなのに、契約で縛られてました!?―
鷹槻れん
恋愛
新沼 晴永(にいぬま はるなが/36)は俺様上司として恐れられる鬼課長。
そんな彼に毎日のように振り回されるのが、犬猿の仲(だと彼女が勝手に思っている)部下の小笹 瑠璃香(こざさ るりか/28)だ。
飲み会の夜、酔ってふにゃふにゃになった瑠璃香を晴永がまんまと持ち帰り――翌朝待っていたのはワンナイトの証拠と契約結婚の書類!?
晴永には逃げようとする瑠璃香を逃がすつもりはないらしい!?
笑いと誤解と契約の、ドタバタラブコメディ!
○表紙絵は市瀬雪さんに依頼しました♥(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
花里 美佐
恋愛
★神崎 蓮 32歳 神崎造船副社長
『玲瓏皇子』の異名を持つ美しき御曹司。
ノースサイド出身のセレブリティ
×
☆清水 さくら 23歳 名取フラワーズ社員
名取フラワーズの社員だが、理由があって
伯父の花屋『ブラッサムフラワー』で今は働いている。
恋愛に不器用な仕事人間のセレブ男性が
花屋の女性の夢を応援し始めた。
最初は喧嘩をしながら、ふたりはお互いを認め合って惹かれていく。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる