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救愛
今川目線4
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***
彼女とふたりで待ち合わせして、帰るのは今回が2度目。少し早めに退社し、鎌田さんがいる会社に向かう。
「蓮の今日の私服は、何だかちょっと肌の露出が多くないですか?」
「マットはこういうの嫌い? 朝から暑かったし、コレにしちゃったんだよね」
季節は6月下旬だから、多少暑いのは分かる。でも躰のラインが見える服は、あまり着てほしくない。おじさんの気持ちは複雑であるが、彼女はまったく理解してくれないだろう。
「好きか嫌いか聞かれると個人的に好きですが、他の人に蓮の躰を見られるのは好きじゃないです」
照れながら言うと、俺の顔をじっと見て腕を絡めてきた。
「分かった。今度から気を付けるね。お説教は、もうこりごりだし」
「……反省してないくせに」
「怒ってるマットも、結構素敵だったよ」
まったく手に負えないとは、このことだ――
「ほら会社前ですから、腕を離して下さい」
一緒に並んで、会社の受付に向かった。
「すみません、○○物産の今川と申しますが、営業部の鎌田さんをお願いします」
帰り支度をしようとしてた、受付嬢に話しかけた。
「ねえ、鎌田さんってこの人?」
蓮が例の紙を受付嬢に見せると、途端に笑い出す。
「蓮、なぜそれを見せたんです?」
「だって、人違いするかもしれないじゃん」
「ちょっとヤダ、カマキリってあっちの人間だって」
受付嬢がもうひとりの受付嬢に話しかけて、紙を見て大爆笑している……
――ああ、やはり蓮を連れてこなきゃ良かった。
「この紙の人物は、鎌田さんで間違いないです。今、退社するというので間もなく来るとのことでした」
渡した紙を戻しながら、親切に教えてくれる。
「あっ来たよ、マット!」
俺の腕を引っ張って、鎌田さんの元に行こうとした。
「蓮、落ち着きなさい」
何かさっきから、引っ張られてばかりいるな。
鎌田さんがこっちを向いた途端に、眉間に深いシワを寄せた。
「……なぜ乳牛女が、ここにいるんだ?」
「なんで、そんな呼び名しかしないかな」
「鎌田先輩、女の子に向かってその発言はセクハラですよ」
隣にいる大人しそうな女性が鎌田さんの袖をぐいぐい引っ張って、しっかりと注意をしてくれる。
「やぁい、彼女に叱らっ、フガッ」
俺は慌てて蓮の口を右手で塞いだ。これ以上問題発言されたら本当に困る。
「挨拶が遅れて、大変申し訳ありません。○○物産の今川です」
「山田の上司ですよね、お話はよく伺ってます。今日のご用件は、何でしょうか?」
メガネの奥から目に見えない威圧感があって、自然と緊張してしまう。山田くんと同じ年齢とは思えない――
「話が長くなるので、そこのコーヒーショップに移動しませんか?」
「彼女も一緒でいいですか? この後、用事がありまして」
「大丈夫です。あまり時間がかからないように、配慮しますね……」
鎌田さんの彼女が優しく微笑んできたので微笑みを返すと、蓮が俺の頬をつねった。
「デレデレしないっ、ほらヤツが睨んでるよ」
メガネの奥から、先ほどとは違う何かが出ている。
――ああ、コワい。
「貴方たちは親子ですか?」
俺たちを見て、鎌田さんはニヤッと笑った。
「そう見えても、仕方ないですね」
俺が言うと、蓮がキレる。
「この人、ワザと親子って言ったんだよ! キィ! いちいち癇にさわるっ」
「鎌田先輩は、おふたりのことが気に入ったみたいです」
このタイミングで、彼女が助け船を出してくれた。
「何を言ってるんだ?」
「だって気に入らない人だったら、いつも無視するじゃないですか。気に入ったから、あんな発言したんですよね」
ニッコリ笑う彼女に、鎌田さんが困った顔をした。
「鎌田さんの彼女、最強だねマット」
やっと蓮の怒りも収まってくれて、ホッとした俺であった。
彼女とふたりで待ち合わせして、帰るのは今回が2度目。少し早めに退社し、鎌田さんがいる会社に向かう。
「蓮の今日の私服は、何だかちょっと肌の露出が多くないですか?」
「マットはこういうの嫌い? 朝から暑かったし、コレにしちゃったんだよね」
季節は6月下旬だから、多少暑いのは分かる。でも躰のラインが見える服は、あまり着てほしくない。おじさんの気持ちは複雑であるが、彼女はまったく理解してくれないだろう。
「好きか嫌いか聞かれると個人的に好きですが、他の人に蓮の躰を見られるのは好きじゃないです」
照れながら言うと、俺の顔をじっと見て腕を絡めてきた。
「分かった。今度から気を付けるね。お説教は、もうこりごりだし」
「……反省してないくせに」
「怒ってるマットも、結構素敵だったよ」
まったく手に負えないとは、このことだ――
「ほら会社前ですから、腕を離して下さい」
一緒に並んで、会社の受付に向かった。
「すみません、○○物産の今川と申しますが、営業部の鎌田さんをお願いします」
帰り支度をしようとしてた、受付嬢に話しかけた。
「ねえ、鎌田さんってこの人?」
蓮が例の紙を受付嬢に見せると、途端に笑い出す。
「蓮、なぜそれを見せたんです?」
「だって、人違いするかもしれないじゃん」
「ちょっとヤダ、カマキリってあっちの人間だって」
受付嬢がもうひとりの受付嬢に話しかけて、紙を見て大爆笑している……
――ああ、やはり蓮を連れてこなきゃ良かった。
「この紙の人物は、鎌田さんで間違いないです。今、退社するというので間もなく来るとのことでした」
渡した紙を戻しながら、親切に教えてくれる。
「あっ来たよ、マット!」
俺の腕を引っ張って、鎌田さんの元に行こうとした。
「蓮、落ち着きなさい」
何かさっきから、引っ張られてばかりいるな。
鎌田さんがこっちを向いた途端に、眉間に深いシワを寄せた。
「……なぜ乳牛女が、ここにいるんだ?」
「なんで、そんな呼び名しかしないかな」
「鎌田先輩、女の子に向かってその発言はセクハラですよ」
隣にいる大人しそうな女性が鎌田さんの袖をぐいぐい引っ張って、しっかりと注意をしてくれる。
「やぁい、彼女に叱らっ、フガッ」
俺は慌てて蓮の口を右手で塞いだ。これ以上問題発言されたら本当に困る。
「挨拶が遅れて、大変申し訳ありません。○○物産の今川です」
「山田の上司ですよね、お話はよく伺ってます。今日のご用件は、何でしょうか?」
メガネの奥から目に見えない威圧感があって、自然と緊張してしまう。山田くんと同じ年齢とは思えない――
「話が長くなるので、そこのコーヒーショップに移動しませんか?」
「彼女も一緒でいいですか? この後、用事がありまして」
「大丈夫です。あまり時間がかからないように、配慮しますね……」
鎌田さんの彼女が優しく微笑んできたので微笑みを返すと、蓮が俺の頬をつねった。
「デレデレしないっ、ほらヤツが睨んでるよ」
メガネの奥から、先ほどとは違う何かが出ている。
――ああ、コワい。
「貴方たちは親子ですか?」
俺たちを見て、鎌田さんはニヤッと笑った。
「そう見えても、仕方ないですね」
俺が言うと、蓮がキレる。
「この人、ワザと親子って言ったんだよ! キィ! いちいち癇にさわるっ」
「鎌田先輩は、おふたりのことが気に入ったみたいです」
このタイミングで、彼女が助け船を出してくれた。
「何を言ってるんだ?」
「だって気に入らない人だったら、いつも無視するじゃないですか。気に入ったから、あんな発言したんですよね」
ニッコリ笑う彼女に、鎌田さんが困った顔をした。
「鎌田さんの彼女、最強だねマット」
やっと蓮の怒りも収まってくれて、ホッとした俺であった。
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