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嬉しハズカシ新婚生活
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びっくりした私の耳元に、張りのある低い声でそっと呟く。
「君の体から、ほんのりと若い男の香りがします。けん坊の社内で、何かされたんじゃないんですか?」
思わず正仁さんから逃げようとしてみたけれど、しっかりホールドされているので所詮は無理な話。今川さんには、たった一瞬だけ腰に腕を回されただけなんだけ――どうしてそれが分かったんだろう?
「なぜ逃げるんです? 何かやましいことでもあるんですか?」
「ないですっ、やましいことなんて全然ありませんっ。ただちょっと腰に腕を回されて、廊下を移動しただけで」
「この細い腰に腕を回して、触られたんですか――」
慌てて口走った私を目を細めながら見つめ、両手で腰に触れてきた。
「まったく。君に触っていいのは俺だけなんですから、隙を作っちゃダメです!」
「うっ、ごめんなさい」
「しなくていい嫉妬をしたり他の男に平気で体を触らせたりするなんて、どれだけ俺の心を乱せば気が済むんですか?」
言いながら耳たぶを右手指先で弄び、左手は太ももの辺りをまさぐっていた。
「っ……くすぐったいです」
「こんなに俺を欲情させて、どうするんです?」
まぶしい物でも見るように更に目を細めて私を見たと思ったら、激しく唇を合わせる。狭い空間で逃げ場がないから、全てされるがままの状態――アヤシく犯される口内に頭の中がどんどん、ぼーっとしていった。
「正仁さ……どうしてそんなに、テクニカル……」
唇が解放されて、やっと口にした言葉。頭の芯がジンジンしていて、思考がおかしいかも。
「何ですか? まるで俳句みたいな発言して。折角のムードが台無しです」
じと目をしながら呆れてため息をついた様子に、たじろぐしかない。
「だってこんな所で、あんなキスするから。経験豊富なんだろうなって思って」
「君が思ってるより、経験豊富じゃありません。ファーストキスは中学生でしたが、初体験は大学生のときでしたしね」
少しムッとした表情で、私の質問に答える正仁さん。どうして怒ってるんだろう?
「ファーストキスから初体験まで、随分と間があいてるんですね。何か意外かも」
「高校時代はバンドの練習で忙しかったし、先輩の自宅でいろいろと研究していましたから」
「研究?」
私が小首を傾げると片側の口角を上げ、得意げに笑いかけてきた。何だか、イヤな予感が――
「表と裏四十八手の研究及び、その他モロモロ」
「あの……高校生がアッチの研究って。しかも、九十六手を覚えたんですか?」
「先輩の親父さんが熟女モノのAVを押入れに隠していて、それを一人でコッソリと見ていました」
「うぁ、熟女モノ……」
正仁さんのあっちのスペックの高さは、そのAVのお陰だったのか。納得……。
「正直、ヌケる映像じゃなかったです。単なる教材みたいな感じですね」
思い出そうとしているのか、顎に手を当てて考えこむ。それがどんなものなのか、私は想像したくないです。
「その教材の成果が、現在に至ってるんですか」
呆れながら訊ねているというのに、よくぞ聞いてくれましたという表情を浮かべた。
「君はテクニカル中級編に、片足を突っ込んだ程度ですよ。まだまだです」
「それじゃあさぞかし、初体験は盛り上がったことでしょうね」
私としては、嫌みを言ったつもりだったのに――
「そうですね。初めてだと悟られたくなくて、随分と無駄に頑張りましたから。しかし次の日フラれました」
「一体何を……」
「フッ、君にはまだ早いです。上級編ですから」
(――テクニカル上級編って何?)
未知の世界すぎて、正直ワケが分かりません。質問した私が馬鹿でした、正仁さん恐るべし。
「やっと黙ってくれましたね。観念しましたか?」
わざと音をたてて、頬にキスした正仁さん。くすぐったくて、身をよじってしまう。
「最近正仁さんが所構わずなのは、中級編と関係があるんですか?」
興味とかいろんなものをない混ぜにしながら、恐るおそる訊ねてみた。
「そうです、マンネリ化を防ぐために――」
「私は逆に落ち着かないです。あんな所やこんな所でハラハラしながらされるのが。正仁さんとならマンネリ化なんて、あり得ないと思うし」
照れながらだったけど、自分の気持ちをしっかりと伝えてあげた。
「最高の誉め言葉、どうも有り難う」
私の顎を持ち上げて、しっとりと唇を合わせてくる。衝撃的な事実を聞いたせいで、落ち込んでいた気持ちが随分と楽になっていた――不思議な感じ。
「安心して下さい。最後までしませんから」
「鎌田課長えっと、そういう問題じゃなくてですね」
唇が離れた瞬間、またしても問題発言――
「今日のレッスンは、ここにします」
「ちょっ、待ってください鎌田課長。こんな場所で勘弁して下さい」
かくてご褒美(それともお仕置き?)という名のレッスンが、今まさに始まろうとしていた。視線は何故だか、足元にじっと注がれていて。
私がたじろいでいる間にネクタイをしゅっと緩め、いそいそと背広を脱ぎ出す正仁さん。ただ背広を脱いでるだけなのにその姿は艶かしくて、色っぽいのはどうしてなんだろう。
この人が私の旦那様なんて、未だに信じられない。
「顔が真っ赤ですね、鼻血が出てます」
「鼻血っ!?」
やだ……私どんだけ正仁さんに、興奮してるんだか。
慌てて右手で、鼻を押さえた。
「……嘘です。まぁ顔が赤いのは、間違いないんですが」
脱いだ背広をそこらへんに投げ捨てて、再びぎゅっと抱き締める。
「背広が汚れちゃいますよ。きちんとかけないと皺になるし」
その行動にちょっとムッとしながら、妻らしいことをとりあえず言ってみた。ドキドキを隠すのにかなり必死。
「俺の脱ぐ姿に何かを期待して顔を真っ赤にさせている君に、早く手を出したくて仕方ないんです」
「期待なんて全然してませんっ! むしろ家に帰ってから、ゆっくりと――っ!」
「ゆっくりと……何ですか?」
間髪入れず私の言葉を遮り、耳元に唇を寄せてきた。バリトンボイスが耳に残り、体が勝手に火照っていく。
「えっと、あのぅ」
「ゆっくりと出したり挿れたり……何を?」
「何を……って。うぅ、その……それだけじゃなくて、ですね」
「へえ、もっとスゴいことをするんですか。それは楽しみです」
「スゴいことなんて知りませんっ! ノーマルなことをしっ……ぁ、んっ!?」
いきなりフーッと吐息を耳に吹きかけられ、反射的に肩を竦めてしまった。
「興奮しすぎ、声が大きいです。それとも誰かに、自分の声を聞かせたいんですか?」
慌てて口元を両手で押さえながら、首をぶんぶんと左右に振った。その様子を満足げに見てから、耳たぶを口に含む。
「ん……」
ちゅっと吸ったと思ったら、舌先を使って耳の縁をなぞっていった。そんな僅かな接触なのに、体が否が応にも反応してしまう。
「君の甘い声を聞いていいのは俺だけなんですから、ここでは自重して下さい」
必死に声を押し殺す私に艶っぽい声で告げてから、唇を首に移動させていく。くすぐったくて身をよじるけど当然狭い空間なので逃げ場がなく、しかも声が出せないというリスクに、どうしていいか分からなくなってきた。
「……手が邪魔です」
言いながら両手首を左手で掴んで、頭の上でホールドする。キスをしたかと思ったら、柔らかく私の下唇をちゅくちゅくと食む。
それだけなのに、体の大事な部分がじんと疼く――体が熱くて仕方がない。これって正仁さんの体からふわふわと漂ってくる、甘い花の薫りのせい?
角度を変えて、今度は奪うような口づけをしてきた。頭はぼんやりしているのに、反射的に正仁さんの舌に自分の舌を絡めてしまう。
どうしちゃったんだろう――ここは会社だというのに、スゴく正仁さんが欲しい。そう思うのはきっと、どこか物足りないからだ。いつもならキスしている最中、正仁さんの両手は体のあちこちを必ずまさぐっているのに、今は抱き締めることもなく、片手はぶらんと垂れ下がったままになっていた。
押さえられた両手を無理やり外して、彼の首に両腕を絡ませてみる。この妙な距離感を、何とかしたかった。
「どうしたんです? 今日は積極的ですね。毎晩こうだと、俺も嬉しいんですが」
「……」
「それともこの場所が、君を積極的にさせているんですか? 薄い扉と向こうを行き交う人の気配が、もしかして興奮材料になっていたり?」
「君の体から、ほんのりと若い男の香りがします。けん坊の社内で、何かされたんじゃないんですか?」
思わず正仁さんから逃げようとしてみたけれど、しっかりホールドされているので所詮は無理な話。今川さんには、たった一瞬だけ腰に腕を回されただけなんだけ――どうしてそれが分かったんだろう?
「なぜ逃げるんです? 何かやましいことでもあるんですか?」
「ないですっ、やましいことなんて全然ありませんっ。ただちょっと腰に腕を回されて、廊下を移動しただけで」
「この細い腰に腕を回して、触られたんですか――」
慌てて口走った私を目を細めながら見つめ、両手で腰に触れてきた。
「まったく。君に触っていいのは俺だけなんですから、隙を作っちゃダメです!」
「うっ、ごめんなさい」
「しなくていい嫉妬をしたり他の男に平気で体を触らせたりするなんて、どれだけ俺の心を乱せば気が済むんですか?」
言いながら耳たぶを右手指先で弄び、左手は太ももの辺りをまさぐっていた。
「っ……くすぐったいです」
「こんなに俺を欲情させて、どうするんです?」
まぶしい物でも見るように更に目を細めて私を見たと思ったら、激しく唇を合わせる。狭い空間で逃げ場がないから、全てされるがままの状態――アヤシく犯される口内に頭の中がどんどん、ぼーっとしていった。
「正仁さ……どうしてそんなに、テクニカル……」
唇が解放されて、やっと口にした言葉。頭の芯がジンジンしていて、思考がおかしいかも。
「何ですか? まるで俳句みたいな発言して。折角のムードが台無しです」
じと目をしながら呆れてため息をついた様子に、たじろぐしかない。
「だってこんな所で、あんなキスするから。経験豊富なんだろうなって思って」
「君が思ってるより、経験豊富じゃありません。ファーストキスは中学生でしたが、初体験は大学生のときでしたしね」
少しムッとした表情で、私の質問に答える正仁さん。どうして怒ってるんだろう?
「ファーストキスから初体験まで、随分と間があいてるんですね。何か意外かも」
「高校時代はバンドの練習で忙しかったし、先輩の自宅でいろいろと研究していましたから」
「研究?」
私が小首を傾げると片側の口角を上げ、得意げに笑いかけてきた。何だか、イヤな予感が――
「表と裏四十八手の研究及び、その他モロモロ」
「あの……高校生がアッチの研究って。しかも、九十六手を覚えたんですか?」
「先輩の親父さんが熟女モノのAVを押入れに隠していて、それを一人でコッソリと見ていました」
「うぁ、熟女モノ……」
正仁さんのあっちのスペックの高さは、そのAVのお陰だったのか。納得……。
「正直、ヌケる映像じゃなかったです。単なる教材みたいな感じですね」
思い出そうとしているのか、顎に手を当てて考えこむ。それがどんなものなのか、私は想像したくないです。
「その教材の成果が、現在に至ってるんですか」
呆れながら訊ねているというのに、よくぞ聞いてくれましたという表情を浮かべた。
「君はテクニカル中級編に、片足を突っ込んだ程度ですよ。まだまだです」
「それじゃあさぞかし、初体験は盛り上がったことでしょうね」
私としては、嫌みを言ったつもりだったのに――
「そうですね。初めてだと悟られたくなくて、随分と無駄に頑張りましたから。しかし次の日フラれました」
「一体何を……」
「フッ、君にはまだ早いです。上級編ですから」
(――テクニカル上級編って何?)
未知の世界すぎて、正直ワケが分かりません。質問した私が馬鹿でした、正仁さん恐るべし。
「やっと黙ってくれましたね。観念しましたか?」
わざと音をたてて、頬にキスした正仁さん。くすぐったくて、身をよじってしまう。
「最近正仁さんが所構わずなのは、中級編と関係があるんですか?」
興味とかいろんなものをない混ぜにしながら、恐るおそる訊ねてみた。
「そうです、マンネリ化を防ぐために――」
「私は逆に落ち着かないです。あんな所やこんな所でハラハラしながらされるのが。正仁さんとならマンネリ化なんて、あり得ないと思うし」
照れながらだったけど、自分の気持ちをしっかりと伝えてあげた。
「最高の誉め言葉、どうも有り難う」
私の顎を持ち上げて、しっとりと唇を合わせてくる。衝撃的な事実を聞いたせいで、落ち込んでいた気持ちが随分と楽になっていた――不思議な感じ。
「安心して下さい。最後までしませんから」
「鎌田課長えっと、そういう問題じゃなくてですね」
唇が離れた瞬間、またしても問題発言――
「今日のレッスンは、ここにします」
「ちょっ、待ってください鎌田課長。こんな場所で勘弁して下さい」
かくてご褒美(それともお仕置き?)という名のレッスンが、今まさに始まろうとしていた。視線は何故だか、足元にじっと注がれていて。
私がたじろいでいる間にネクタイをしゅっと緩め、いそいそと背広を脱ぎ出す正仁さん。ただ背広を脱いでるだけなのにその姿は艶かしくて、色っぽいのはどうしてなんだろう。
この人が私の旦那様なんて、未だに信じられない。
「顔が真っ赤ですね、鼻血が出てます」
「鼻血っ!?」
やだ……私どんだけ正仁さんに、興奮してるんだか。
慌てて右手で、鼻を押さえた。
「……嘘です。まぁ顔が赤いのは、間違いないんですが」
脱いだ背広をそこらへんに投げ捨てて、再びぎゅっと抱き締める。
「背広が汚れちゃいますよ。きちんとかけないと皺になるし」
その行動にちょっとムッとしながら、妻らしいことをとりあえず言ってみた。ドキドキを隠すのにかなり必死。
「俺の脱ぐ姿に何かを期待して顔を真っ赤にさせている君に、早く手を出したくて仕方ないんです」
「期待なんて全然してませんっ! むしろ家に帰ってから、ゆっくりと――っ!」
「ゆっくりと……何ですか?」
間髪入れず私の言葉を遮り、耳元に唇を寄せてきた。バリトンボイスが耳に残り、体が勝手に火照っていく。
「えっと、あのぅ」
「ゆっくりと出したり挿れたり……何を?」
「何を……って。うぅ、その……それだけじゃなくて、ですね」
「へえ、もっとスゴいことをするんですか。それは楽しみです」
「スゴいことなんて知りませんっ! ノーマルなことをしっ……ぁ、んっ!?」
いきなりフーッと吐息を耳に吹きかけられ、反射的に肩を竦めてしまった。
「興奮しすぎ、声が大きいです。それとも誰かに、自分の声を聞かせたいんですか?」
慌てて口元を両手で押さえながら、首をぶんぶんと左右に振った。その様子を満足げに見てから、耳たぶを口に含む。
「ん……」
ちゅっと吸ったと思ったら、舌先を使って耳の縁をなぞっていった。そんな僅かな接触なのに、体が否が応にも反応してしまう。
「君の甘い声を聞いていいのは俺だけなんですから、ここでは自重して下さい」
必死に声を押し殺す私に艶っぽい声で告げてから、唇を首に移動させていく。くすぐったくて身をよじるけど当然狭い空間なので逃げ場がなく、しかも声が出せないというリスクに、どうしていいか分からなくなってきた。
「……手が邪魔です」
言いながら両手首を左手で掴んで、頭の上でホールドする。キスをしたかと思ったら、柔らかく私の下唇をちゅくちゅくと食む。
それだけなのに、体の大事な部分がじんと疼く――体が熱くて仕方がない。これって正仁さんの体からふわふわと漂ってくる、甘い花の薫りのせい?
角度を変えて、今度は奪うような口づけをしてきた。頭はぼんやりしているのに、反射的に正仁さんの舌に自分の舌を絡めてしまう。
どうしちゃったんだろう――ここは会社だというのに、スゴく正仁さんが欲しい。そう思うのはきっと、どこか物足りないからだ。いつもならキスしている最中、正仁さんの両手は体のあちこちを必ずまさぐっているのに、今は抱き締めることもなく、片手はぶらんと垂れ下がったままになっていた。
押さえられた両手を無理やり外して、彼の首に両腕を絡ませてみる。この妙な距離感を、何とかしたかった。
「どうしたんです? 今日は積極的ですね。毎晩こうだと、俺も嬉しいんですが」
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