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第2章:感じるキモチ

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 もし身の危険を感じるような何かがあった場合、対処するために催涙スプレーをいつも持ち歩くのは必須で、見た目が普通に見える人ほど、危ないことをしたがるのが、本当に厄介だったりする。

 私をキツく縛り上げて拘束した上に、カッターを使って肌にキズを付けて、もっと痛い行為をしようとしたお客さんには、迷うことなく股間を蹴り上げてから、思いっきり催涙スプレーをお見舞いしてあげた。

 他にも、大事なトコロにそんなモノなんて挿れないわよというシロモノを、無理やり突っ込もうとしたお客さんがいて、恐怖に震えた経験をしたし、マジもんのSMプレイで使う道具を出してきて、私に女王様になってくれと涙ながらに頼んだ人がいた。

 だけどそれは楽しそうだったから、あえて断らなかった。

(ケンジさんはちょっと危ないストーカー野郎だけど、枕に忍ばせた防御グッズを使う必要はないと思いたい――)

 静かだからこそ聞こえてくるシャワーの水音を聞きながら、ぼんやりと考え事をしてしまう。

 自分の身の安全を考える私と違って、彼の心中はこれから行われるコトで胸がいっぱいになっているだろうな。ノーマルな行為を望んでいる私の気持ちを打ち砕くような、何かアブナイことを考えていたりして。

 お互いの名前を口にした途端に、それまでの態度が一変したのが、どうにも気になった。そういうちょっとした変化から、自分なりに危険度を察知しているのだけれど――。
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