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第2章:感じるキモチ

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 いつものように受付を済ませるべく、会計をケンジさんにしてもらってから、私が選んだ部屋に入る。隣にいる彼の表情を窺うと真っ赤な顔をキープしたまま、忙しなく視線を彷徨わせていた。

 慣れないことをしようとしているんだから、当然なのかな――。

 場慣れしてしまった自分と比較して、コッソリと落ち込んでしまう。ヤり慣れてしまったと言ってもいいのだけれど、本当はケンジさんのような初々しさを、どこかで醸し出せたらいいのにね……。

 選んだ部屋は、大きなベッドが部屋の中央に置かれているというスタンダードなものなれど、白を基調とした部屋だから、必然的に清潔感を保つには難しい部屋だった。

 ゆえに清掃がよく行き届いている理由で、この部屋をよく利用していたりする。

「ケンジさんが先にシャワー浴びる? それとも一緒に入ろうか?」

 ちなみに通常の場合は、一緒にお風呂に入ることはオプション扱いで、プラス五千円を頂いている。お風呂でサービスする際は勿論、オプションをつけさせてもらうのは当たり前なんだ。

 なのでいつもなら事前に上手く交渉して、先払いという形でお金をせしめてから一緒にお風呂に入るんだけど、ケンジさんはオプションなしにするつもりだった。

 彼から確実にお金を頂くべく、いろんなサービスをみずからしてあげようという考えがあったから。

「いっ!? 一緒にお風呂なんてとんでもない。恥かしいですって」

(これからHなことをしようとここに来ているのに、恥かしいなんてちょっと変わってるかも)

 ケンジさんは激しく首を横に振って、無理ですを連呼した。そこまでされたら、無理強いすることなんてできない。

「じゃあ寂しいけど別々に入るね。ケンジさん、お先にどうぞ!」

 バスルームに案内するように右腕を引っ張ったら、コクコク頷きながらついて来る。「時間の制限があるから手早くね」と一声添えて、脱衣所に放置した。

 彼が洋服を脱いでる間に、自分のバックからゴムと護身用の催涙スプレーを取り出して、大きなベッドの枕の下に忍ばせる。
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