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第2章:感じるキモチ

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 こうしてケンジさんからお金を戴き、ほくほくしながら財布を入れる私の背中に、「あのぅ」という声がかけられた。髪留めを外しながら振り返ると口元を隠すように手を当て、ちょっと困り顔した彼と目が合う。

「なぁに?」

「これからおこなうことについて、設定を提案したいなと思いまして……」

 私としてはお客さんを恋人として、いつも相手をしている。だけどただの恋人同士の設定では行為が燃えないからという理由で、私を『妹』に見立てて、お客さんの呼び名を『お兄ちゃん』にしたり、はたまた持ってきたセーラー服に着替えてくれと頼んできたお客さんも実際いた。

「設定って、イメクラみたいな感じかな?」

 私のこれまでの経験を踏まえて、ケンジさんが提案してきた言葉も同じようなものだろうと考えて、小首を傾げながら訊ねてみた。話しやすいように、笑顔は絶対に忘れない。

「イメクラ……。確かにそうですね。その方が余計なことを考えずに、集中できそうなので」

「いいよ。どんな感じの設定?」

「えっと、幼馴染設定なんです。家が隣同士だからずっと一緒にいるのが当たり前だったのに、ある日彼女の家の前に見知らぬ男が立っていて、誰だろうと思っていたら彼女が帰ってきた途端に、男に微笑みかけたのを見て……」

 事細かに語っていくケンジさんを見つめながら、自分の役どころを考える。彼が望むような幼馴染を何とかして、うまく演じなければならない。
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