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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――
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(克巳さんや二階堂のお蔭で、起死回生のチャンスが巡ってきたのかもしれない――)
未成年者だったときにおこなった悪さが原因で、選挙戦後半の大事なときに実の母親が仕掛けた罠に足を引っ張られ、心の底から肝が冷えた。
だけどそんな自分の感情を、必死になって抑え込んだ。今まで献身的に支えてくれたスタッフや有権者を裏切ることをしたくなかったので変に誤魔化さず、素直な気持ちを言葉に変換して、大勢の人に伝えることができた。
謝罪したその日の夕方と次の日のワイドショーは、そろってその映像をもとに放映された。
今回の騒ぎで迷惑をかけたこともあり、選挙日まで遊説など外出をせずに事務所で謹慎していたので、こうして全国規模で流されるのは、本当にありがたみを感じた。
たとえテレビの内容が自分を叩くことであっても、必然的に多くの有権者の目に入る――それにより選挙の結果がどうなるかはわからないけれど、ワクワクしながら投票日になるのを待った。
(――あと数時間後には、今回のことを含めた審判がくだされるんだな……)
そんなことを考えつつ、事務所の片隅で克巳さんが二階堂と向かい合って、熱心になにかを喋っている言葉に耳を傾けた。
「二階堂、各局それぞれの番組をチェックしてみたのだが、反応はハーフハーフといった感じに見えた」
「そうですか? 僕はむしろ、稜さんを賛辞しているところが多かったように思えましたけど。潔く自分の非を認めて頭を下げることは、容易じゃないですからね」
選挙結果を待っている最中になされるふたりの会話を聞いて、思わず口元が緩んでしまった。選挙戦後半になってからは、今のように顔を突き合わせて、話し込んでいる姿がよく目に留まった。
以前なら喧嘩腰で話をすることが多かったのに、ハプニングが起こるたびに、いつの間にかふたりの距離が縮まったらしい関係が、いいコンビだなと実感させられた。
それは、俺が妬いてしまうくらいに――。
彼らの会話にずっと耳を傾けていたいのは山々なれど、つけっぱなしにしているバラエティー番組の隅に映し出されるであろう、開票速報の音も同時に探していた。
画面の中でわいわい楽しそうに騒いでいるお笑い芸人のギャグを見ても、頭の中にまったく入ってこない。開票速報の結果が知りたくて、うずうずしながら膝に置いてる両手を握りしめたときだった。
「秘書さん、あの……」
「どうした、二階堂?」
先ほどよりも低音で覇気のない二階堂の声に反応して、克巳さんが優しく話しかけた。
それまでとは違う雰囲気を感じて、視線をふたりにロックオンすると、メガネのフレームを押し上げた二階堂が、克巳さんの顔をじっと見つめていた。
「陵さんを奪ってみせますと言いましたが、おふたりの絆の強さを見せつけられたせいか、それが無理そうだなと思いまして」
「このまま、諦めるということだろうか?」
一重まぶたの瞳をちょっとだけ細めて訊ねた克巳さんの態度は、俺から見てもどこか挑戦的な感じに映った。
「そうですね、諦めざるを得ないと言ったところですので」
「そうか。君の情熱は、その程度のものだったのか」
しらけた笑いを皮膚の上に浮かべた克巳さんの視線を避けるように、二階堂は無言のまま顔を俯かせた。
(克巳さんや二階堂のお蔭で、起死回生のチャンスが巡ってきたのかもしれない――)
未成年者だったときにおこなった悪さが原因で、選挙戦後半の大事なときに実の母親が仕掛けた罠に足を引っ張られ、心の底から肝が冷えた。
だけどそんな自分の感情を、必死になって抑え込んだ。今まで献身的に支えてくれたスタッフや有権者を裏切ることをしたくなかったので変に誤魔化さず、素直な気持ちを言葉に変換して、大勢の人に伝えることができた。
謝罪したその日の夕方と次の日のワイドショーは、そろってその映像をもとに放映された。
今回の騒ぎで迷惑をかけたこともあり、選挙日まで遊説など外出をせずに事務所で謹慎していたので、こうして全国規模で流されるのは、本当にありがたみを感じた。
たとえテレビの内容が自分を叩くことであっても、必然的に多くの有権者の目に入る――それにより選挙の結果がどうなるかはわからないけれど、ワクワクしながら投票日になるのを待った。
(――あと数時間後には、今回のことを含めた審判がくだされるんだな……)
そんなことを考えつつ、事務所の片隅で克巳さんが二階堂と向かい合って、熱心になにかを喋っている言葉に耳を傾けた。
「二階堂、各局それぞれの番組をチェックしてみたのだが、反応はハーフハーフといった感じに見えた」
「そうですか? 僕はむしろ、稜さんを賛辞しているところが多かったように思えましたけど。潔く自分の非を認めて頭を下げることは、容易じゃないですからね」
選挙結果を待っている最中になされるふたりの会話を聞いて、思わず口元が緩んでしまった。選挙戦後半になってからは、今のように顔を突き合わせて、話し込んでいる姿がよく目に留まった。
以前なら喧嘩腰で話をすることが多かったのに、ハプニングが起こるたびに、いつの間にかふたりの距離が縮まったらしい関係が、いいコンビだなと実感させられた。
それは、俺が妬いてしまうくらいに――。
彼らの会話にずっと耳を傾けていたいのは山々なれど、つけっぱなしにしているバラエティー番組の隅に映し出されるであろう、開票速報の音も同時に探していた。
画面の中でわいわい楽しそうに騒いでいるお笑い芸人のギャグを見ても、頭の中にまったく入ってこない。開票速報の結果が知りたくて、うずうずしながら膝に置いてる両手を握りしめたときだった。
「秘書さん、あの……」
「どうした、二階堂?」
先ほどよりも低音で覇気のない二階堂の声に反応して、克巳さんが優しく話しかけた。
それまでとは違う雰囲気を感じて、視線をふたりにロックオンすると、メガネのフレームを押し上げた二階堂が、克巳さんの顔をじっと見つめていた。
「陵さんを奪ってみせますと言いましたが、おふたりの絆の強さを見せつけられたせいか、それが無理そうだなと思いまして」
「このまま、諦めるということだろうか?」
一重まぶたの瞳をちょっとだけ細めて訊ねた克巳さんの態度は、俺から見てもどこか挑戦的な感じに映った。
「そうですね、諦めざるを得ないと言ったところですので」
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