2 / 83
act:忍び寄る影
1
しおりを挟む
俺の大好きな幼馴染の鈴木理子ちゃんについては、探偵を雇って定期的に調査していた。現在は大手の銀行に勤めている、年上の彼氏がいるそう。
「理子ちゃん魅力的だからなぁ。彼氏がいて当然だけどさ。その彼氏よりも、俺が上だと示すのが楽しみかも!」
本日、俺が出演するテレビCMが放映される日――彼女が確実にそれを見てくれるとは限らないけれど、新製品を告知するポスターやネットで情報が流れたりしたら、イヤでも目にするに決まってる。それに合わせて、俺がリコちゃんの前に現れたことがわかるだろう。
建物の影に隠れて待ち伏せしていると、道路を挟んだ向こう側から理子ちゃんがかわいらしく走ってやって来る。
「克巳さんごめんなさい、お待たせしちゃって!」
「大丈夫だよ。俺もさっき来たばかりだし」
いつもの待ち合わせ場所に急いで駆け寄ったリコちゃんを、年上彼氏の相田克巳が、ほほ笑んで出迎えた。走って乱れた前髪を直しながら、彼氏に向かってなにか話しかけるリコちゃんの姿を、漫然と眺める。
どのタイミングでふたりの前に現れたらベストか、タイミングを計りつつ、ふたりの行方を見守った。
「あのね帰ろうとしたら、いつものお得意さんから電話があって、延々と長話されちゃった。本当にごめんなさい、克巳さん」
ふたりは並んで喋りながら、ゆっくりと歩き出した。そのあとを追いかけるように、俺も足を動かす。
「仕事ならしょうがないよ」
彼氏は苦笑いを浮かべて腕を差し出すと、理子ちゃんは喜んでそれを抱き寄せて、自分の腕を絡めた。
探偵の調べでは、ふたりは付き合って二ヶ月くらい。付き合いたてのリコちゃんが、彼氏に夢中なのはしょうがない。夢中だからこそ、このふたりを別れさせる方法は、見るに堪えない彼氏の姿をリコちゃんが目の当たりにすれば、確実に熱が冷めること間違いなし!
「実は理子さんの誕生日、プレゼントはなにがいいかなって悩んでいるんだ。会社では、ピアスをつけていても大丈夫?」
(そういえば理子ちゃんの誕生日、来月だったっけ。ピアスなんていう小さなものじゃなくて、もっと派手なプレゼントを考えなくちゃ!)
「はい。華美なモノでなければ、大丈夫です」
「理子さんはショートカットで、いつも耳を出しているから、ピアスがとても似合うだろうなと思ってね。それじゃあ、華美じゃないものから選んでみるよ。楽しみにしてて」
「はい、楽しみにしてますね」
恋人らしい会話が続くのを、無関心を装い聞き流す。ここで俺がイライラして登場したら、これまで計画したことが台無しになると判断した。
「付き合ってすぐに、指輪は重いかなと思ったんだ。もう少ししたら、プレゼントするから」
「えっ!?」
「理子さん、どことなく物欲しそうな顔をしていたから、そうなのかなぁと思ったんだけど。違っていただろうか?」
(だったら芸能人の俺が、最高級の大きなダイヤモンド付きの指輪をプレゼントしてあげるよ)
「やだ……そんなに顔に出てました? 私ったら、ごめんなさい」
「いやいや。そういう奥ゆかしいトコも、結構かわいいなぁと思ったんだ。安心して」
俺の考えを知らずに、彼氏はリコちゃんの頭を優しく撫でる。
「指輪は、一緒に買いに行こうか」
「はいっ!」
会話がひと際盛り上がった、この瞬間を狙い澄ました。
「リコちゃん、み~つけたっ!」
演技派俳優のように、抑揚のかかったセリフを背後から告げると、俺の声に反応したふたりが息を合わせて振り返る。
格好よく登場したのを示すように、口元に艶っぽい笑みを浮かべて、かけていたサングラスを外したら、理子ちゃんの頬に赤みがさした。
(ふふっ、リコちゃんってば俺に見惚れてる。彼氏さんごめんね~)
「アナタいったい、誰ですか?」
頬を赤く染めつつ、猜疑心を含んだ眼差しで俺を見たリコちゃんは、抱きついている彼氏の腕に寄り添うように体を隠した。
「はじめましてじゃないんだけどね。そーだな、リコちゃんの許婚って、自己紹介しておこうか」
呆然としているリコちゃんの左手を無理やり引っ張って掴み、手首に痕の残るキスを落とした。
「理子ちゃん魅力的だからなぁ。彼氏がいて当然だけどさ。その彼氏よりも、俺が上だと示すのが楽しみかも!」
本日、俺が出演するテレビCMが放映される日――彼女が確実にそれを見てくれるとは限らないけれど、新製品を告知するポスターやネットで情報が流れたりしたら、イヤでも目にするに決まってる。それに合わせて、俺がリコちゃんの前に現れたことがわかるだろう。
建物の影に隠れて待ち伏せしていると、道路を挟んだ向こう側から理子ちゃんがかわいらしく走ってやって来る。
「克巳さんごめんなさい、お待たせしちゃって!」
「大丈夫だよ。俺もさっき来たばかりだし」
いつもの待ち合わせ場所に急いで駆け寄ったリコちゃんを、年上彼氏の相田克巳が、ほほ笑んで出迎えた。走って乱れた前髪を直しながら、彼氏に向かってなにか話しかけるリコちゃんの姿を、漫然と眺める。
どのタイミングでふたりの前に現れたらベストか、タイミングを計りつつ、ふたりの行方を見守った。
「あのね帰ろうとしたら、いつものお得意さんから電話があって、延々と長話されちゃった。本当にごめんなさい、克巳さん」
ふたりは並んで喋りながら、ゆっくりと歩き出した。そのあとを追いかけるように、俺も足を動かす。
「仕事ならしょうがないよ」
彼氏は苦笑いを浮かべて腕を差し出すと、理子ちゃんは喜んでそれを抱き寄せて、自分の腕を絡めた。
探偵の調べでは、ふたりは付き合って二ヶ月くらい。付き合いたてのリコちゃんが、彼氏に夢中なのはしょうがない。夢中だからこそ、このふたりを別れさせる方法は、見るに堪えない彼氏の姿をリコちゃんが目の当たりにすれば、確実に熱が冷めること間違いなし!
「実は理子さんの誕生日、プレゼントはなにがいいかなって悩んでいるんだ。会社では、ピアスをつけていても大丈夫?」
(そういえば理子ちゃんの誕生日、来月だったっけ。ピアスなんていう小さなものじゃなくて、もっと派手なプレゼントを考えなくちゃ!)
「はい。華美なモノでなければ、大丈夫です」
「理子さんはショートカットで、いつも耳を出しているから、ピアスがとても似合うだろうなと思ってね。それじゃあ、華美じゃないものから選んでみるよ。楽しみにしてて」
「はい、楽しみにしてますね」
恋人らしい会話が続くのを、無関心を装い聞き流す。ここで俺がイライラして登場したら、これまで計画したことが台無しになると判断した。
「付き合ってすぐに、指輪は重いかなと思ったんだ。もう少ししたら、プレゼントするから」
「えっ!?」
「理子さん、どことなく物欲しそうな顔をしていたから、そうなのかなぁと思ったんだけど。違っていただろうか?」
(だったら芸能人の俺が、最高級の大きなダイヤモンド付きの指輪をプレゼントしてあげるよ)
「やだ……そんなに顔に出てました? 私ったら、ごめんなさい」
「いやいや。そういう奥ゆかしいトコも、結構かわいいなぁと思ったんだ。安心して」
俺の考えを知らずに、彼氏はリコちゃんの頭を優しく撫でる。
「指輪は、一緒に買いに行こうか」
「はいっ!」
会話がひと際盛り上がった、この瞬間を狙い澄ました。
「リコちゃん、み~つけたっ!」
演技派俳優のように、抑揚のかかったセリフを背後から告げると、俺の声に反応したふたりが息を合わせて振り返る。
格好よく登場したのを示すように、口元に艶っぽい笑みを浮かべて、かけていたサングラスを外したら、理子ちゃんの頬に赤みがさした。
(ふふっ、リコちゃんってば俺に見惚れてる。彼氏さんごめんね~)
「アナタいったい、誰ですか?」
頬を赤く染めつつ、猜疑心を含んだ眼差しで俺を見たリコちゃんは、抱きついている彼氏の腕に寄り添うように体を隠した。
「はじめましてじゃないんだけどね。そーだな、リコちゃんの許婚って、自己紹介しておこうか」
呆然としているリコちゃんの左手を無理やり引っ張って掴み、手首に痕の残るキスを落とした。
2
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる