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act:毒占欲の果てに
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(さっきの台詞、稜はどんな表情で言ったのだろう。綺麗な君と顔を突き合わせて、その姿を見たかったな――)
「克巳さんの優しさに、甘えさせてもらうよ。とりあえず仕事を終わらせてから」
「仕事?」
俺の躰から飛びのくように離れると、すぐ傍にある備え付けの電話に手を伸ばした。手早くボタンを押し、どこかにコールしながら口元を綻ばせる姿は、俺のあこがれた葩御稜そのもののほほ笑みだった。
「あ、マネージャー。おはようございます、お疲れ様。突然で悪いんだけど、頼まれてくれないかな? 例の件に巻き込まれてしまって、職場を追われそうな人がいるんだ。○×銀行って言えばわかるでしょ♪ そうそう、その人。俺のこれからの、パートナーになる人だからね。どうしても守ってやりたくて」
受話器を持ちながら、こっちを見る視線。魅惑的な瞳を細め、俺をじっと見つめる稜――その眼差しに惹かれて、受話器を持っていない手を握りしめてから、手首に唇を押し当ててみた。
(君に教えられた、これの意味することは……)
俺が顔を上げると稜は耳まで赤くして、慌てて手を引っ込めながら、思いっきり戸惑う表情を見せる。その姿を拝むことができただけで、自然と笑みが零れてしまった。
まるで大輪の華に新しい蕾が出来、大きな花びらを開かせて、俺を誘っているように感じてしまう。
――間違いなく:唐紅(からくれない)の綺麗な華だろう。
「悪いけどちょっとばかり銀行にさ、圧力をかけることってできる? 確か、取引があったように記憶してるんだけど。うんうん……よろしくお願いしまーす♪」
照れる姿を誤魔化すように、はしゃぎながら言い放つと、俺に睨みを利かせてため息をつき、ゆっくりと受話器を元に戻した。
「いきなり、なにしてくれちゃってんだよ。こっちは、電話中だっていうのに!」
文句を言った稜は俺が手首に付けた痕を、嬉しそうな目でじっと見つめる。その視線はどこか懐かしそうであり、切なげでどうしても目が離せない。
「俺の職場のこと、わざわざ手を回さなくてもいいのに」
「なに言ってんのさ。本来なら俺に向かって、文句を言ってほしかったよ。お前のせいで人生がダメになった、どうしてくれるんだって……」
言いながら、またしてもぽろぽろと涙を零す。
自分のことのように心を痛める、彼の姿をどうにかしたくて、無理やり躰を引き寄せた。そして涙に濡れる顔を、胸元に押し付けてやる。
「文句なんて言わない。君のことを、勝手に好きになっただけなんだから」
「俺は……自分のことしか見えてなくてっ……自分だけが不幸だって思いこんでた。毎日おもしろおかしくテレビに流れる自分の姿に、ほとほと愛想が尽きてしまったんだ。大好きだったリコちゃんも、結局手に入らなかったしさ……ボロボロの俺にどうして克巳さんは、優しくしてくれるんだ?」
俺の背中をぎゅっと掴み、悲痛な叫び声をあげる。柔らかい黒髪を、いたわるように撫でてあげた。
「……それでも君は君だから。今は傷ついてボロボロだろうけど、君ならきっと、立ち直ることができるって信じている。稜の笑顔を、一番間近で見たいと思っているんだ。俺に向かって、笑ってくれるだろ?」
その言葉に何かを感じたのか、ゆっくりと顔を上げて窺うように黙視してから、ゆっくりと口を開いた。
「今の俺、空っぽだけど、立ち上がることができるかな?」
「じゃあお腹いっぱいになるまで、俺の愛情で満たしてあげるよ。君にとってのメリットは、なにもないかもしれないけどね」
「メリットなんて……そんなの関係ない。はじめからアナタは俺に、まっすぐな気持ちをぶつけてくれたじゃないか。貪るように奪ってるのに、どこか優しいのがわかってた。そんなアナタだから、俺は――」
……無条件に甘えてしまう――
稜は押し殺した声で呟くと俺の躰を強く抱きしめて、ひとしきり涙を流した。まるで今までの想いを洗い流すような涙になす術がなく、ただ抱きしめ返すしかできなくて。
そんな無力な自分が、本当に情けなかった。
「……克巳さんに、今すぐ抱いてほしい――」
泣きじゃくりながら無理なことを言い出す彼に、困惑の表情を浮かべるしかない。
「克巳さんの優しさに、甘えさせてもらうよ。とりあえず仕事を終わらせてから」
「仕事?」
俺の躰から飛びのくように離れると、すぐ傍にある備え付けの電話に手を伸ばした。手早くボタンを押し、どこかにコールしながら口元を綻ばせる姿は、俺のあこがれた葩御稜そのもののほほ笑みだった。
「あ、マネージャー。おはようございます、お疲れ様。突然で悪いんだけど、頼まれてくれないかな? 例の件に巻き込まれてしまって、職場を追われそうな人がいるんだ。○×銀行って言えばわかるでしょ♪ そうそう、その人。俺のこれからの、パートナーになる人だからね。どうしても守ってやりたくて」
受話器を持ちながら、こっちを見る視線。魅惑的な瞳を細め、俺をじっと見つめる稜――その眼差しに惹かれて、受話器を持っていない手を握りしめてから、手首に唇を押し当ててみた。
(君に教えられた、これの意味することは……)
俺が顔を上げると稜は耳まで赤くして、慌てて手を引っ込めながら、思いっきり戸惑う表情を見せる。その姿を拝むことができただけで、自然と笑みが零れてしまった。
まるで大輪の華に新しい蕾が出来、大きな花びらを開かせて、俺を誘っているように感じてしまう。
――間違いなく:唐紅(からくれない)の綺麗な華だろう。
「悪いけどちょっとばかり銀行にさ、圧力をかけることってできる? 確か、取引があったように記憶してるんだけど。うんうん……よろしくお願いしまーす♪」
照れる姿を誤魔化すように、はしゃぎながら言い放つと、俺に睨みを利かせてため息をつき、ゆっくりと受話器を元に戻した。
「いきなり、なにしてくれちゃってんだよ。こっちは、電話中だっていうのに!」
文句を言った稜は俺が手首に付けた痕を、嬉しそうな目でじっと見つめる。その視線はどこか懐かしそうであり、切なげでどうしても目が離せない。
「俺の職場のこと、わざわざ手を回さなくてもいいのに」
「なに言ってんのさ。本来なら俺に向かって、文句を言ってほしかったよ。お前のせいで人生がダメになった、どうしてくれるんだって……」
言いながら、またしてもぽろぽろと涙を零す。
自分のことのように心を痛める、彼の姿をどうにかしたくて、無理やり躰を引き寄せた。そして涙に濡れる顔を、胸元に押し付けてやる。
「文句なんて言わない。君のことを、勝手に好きになっただけなんだから」
「俺は……自分のことしか見えてなくてっ……自分だけが不幸だって思いこんでた。毎日おもしろおかしくテレビに流れる自分の姿に、ほとほと愛想が尽きてしまったんだ。大好きだったリコちゃんも、結局手に入らなかったしさ……ボロボロの俺にどうして克巳さんは、優しくしてくれるんだ?」
俺の背中をぎゅっと掴み、悲痛な叫び声をあげる。柔らかい黒髪を、いたわるように撫でてあげた。
「……それでも君は君だから。今は傷ついてボロボロだろうけど、君ならきっと、立ち直ることができるって信じている。稜の笑顔を、一番間近で見たいと思っているんだ。俺に向かって、笑ってくれるだろ?」
その言葉に何かを感じたのか、ゆっくりと顔を上げて窺うように黙視してから、ゆっくりと口を開いた。
「今の俺、空っぽだけど、立ち上がることができるかな?」
「じゃあお腹いっぱいになるまで、俺の愛情で満たしてあげるよ。君にとってのメリットは、なにもないかもしれないけどね」
「メリットなんて……そんなの関係ない。はじめからアナタは俺に、まっすぐな気持ちをぶつけてくれたじゃないか。貪るように奪ってるのに、どこか優しいのがわかってた。そんなアナタだから、俺は――」
……無条件に甘えてしまう――
稜は押し殺した声で呟くと俺の躰を強く抱きしめて、ひとしきり涙を流した。まるで今までの想いを洗い流すような涙になす術がなく、ただ抱きしめ返すしかできなくて。
そんな無力な自分が、本当に情けなかった。
「……克巳さんに、今すぐ抱いてほしい――」
泣きじゃくりながら無理なことを言い出す彼に、困惑の表情を浮かべるしかない。
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