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しおりを挟む「ちょっと煙草を買ってくる。留守番を頼んだぞ」
その夜、懐手に財布を忍ばせた旦那様は、下駄を履いて足早に出ていかれました。
あらかじめ口裏を合わせていた私と坊ちゃんは、旦那様に気づかれぬように、しばらく間を置いてからあとを追っていきました。
宵の口に提灯をぶら下げて、田んぼのあぜ道を歩いていきます。まだ秋の入りで日は長かったですけれども、すすきをそよがす冷たい風が吹いておりました。
どこからか聞こえる太鼓の音に誘われて、あちこちからぼんやりとした灯りが集まってきます。鳥居をくぐって石段をのぼっていくと、夜とは思えぬ賑やかな光景が広がっていました。
念のために断っておきますと、天狗祭りというのは、古くは平安鎌倉の時代から続いている恒例の伝統行事でございます。
神社の境内にやぐらが立ち、ふんどし姿に半被をまとった男衆が、音頭に合わせて神輿をかつぎます。女子供からお年寄りまで、たくさん見物に来ておりました。
灯籠が並んだ石敷きの参道沿いには、金魚すくいやらヨーヨーといった馴染みの出店が並んでいます。とくに男の子は射的が好きで、順番待ちの行列ができていました。
なにせ地元の小さなお祭りですから、周囲は見知った顔ぶればかり。私は巾着袋の小銭を数えて、坊ちゃんに狐のお面を買ってあげました。
ばったり知り合いと出くわしたら、あとで旦那様へ告げ口されるのではないかと気が気でなかったのです。
そうして、いよいよ宴もたけなわになったころでございます。
「あれは、旦那様……?」
右も左もわからぬ人混みの中、ゆるりと着流しに腕組みをした旦那様の姿を見かけました。誰かを探すようにきょろきょろと周りを見回したあと、吸いさしの煙草を踏みにじって去っていきます。
気になってあとをつけてみると、そこは社殿の裏手に広がる森の中でした。
「……和子さん、よそうよ」
坊ちゃんは、不気味な雰囲気に二の足を踏んで何度も食い下がります。けれどもここまで来たからには、旦那様の行き先を突き止めずにはいられません。
私は、気配を忍ばせつつおそるおそる茂みをかき分けて、藪の中へ入っていきました。
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