精霊徒然日記

へな

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番外編

神在祭〜花畑の約束〜4

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玉依姫が口にした言葉に、カエデは耳を疑った。

――夫候補、だと?

「鬼神のカエデが、姫様の夫候補!?」
「そんな馬鹿な」
「だが、カエデの容姿を考えると……」
「姫様は正気なのか?」

玉依姫の発言は、神楽殿にいる者達を騒がせるのには、十分な効力を持っていた。
シキですら、呆然とカエデを見ている。

「静まれ。我は本気だ。気が狂ってはおらぬ」

玉依姫の命じる口調に、再び静かになった。
その静寂で我に返ったカエデは、とっさに抗議をする。

「お待ち下さい。私のような身分の者が姫様の夫候補など、相応しくはありません。辞退いたします」

カエデの辞退する、という言葉に賛同する者や、「姫様の折角のお誘いを断るのか!」と反対する者が声を上げる。

「我に相応しいか相応しくないか。それは周囲やそなたが決めることではなく、我が決めること。辞退は許さぬ」
「……っ」

頑固な玉依姫に、カエデは内心で舌打ちをする。
「だが」、と玉依姫は続けて言う。
 
「譲歩はしてやろう。明日、11日から17日の七日間、期限をやる。神々が己の地へ帰るまでに、 そなた以上に魅力のある男を我に献上しろ。そうすれば、そなたを夫候補から外してやろう」
「……もし、見つけられなかった場合は?」

確認のため、カエデは訊く。

「その時は勿論、そなたを夫として迎える。そなたのような美しく、かつ強い男であれば、天照大神 (アマテラスオオミカミ) もさぞお喜びになられるだろうよ」

確認し、カエデはため息をつきたくなった。
 
七日間で玉依姫の気に入る男を見つけなければ、自分は彼女の夫になってしまうのだという。
 
玉依姫は高位の神であるため、無茶な要求であっても無下に断ることができない。 断れば、長門を潰される危険性もある。 そんな事態だけは避けたい。

――ここは、賭けるしかないか。

カエデは覚悟を決めた。

「…………分かりました。お引き受けします」
「決まりだ」

玉依姫は満足気に目を細める。

「では、皆の衆。邪魔をしたな。宴を続けてくれ」

そう言い残し、玉依姫は神楽殿を後にした。
残された者達は、その場からしばらく動くことができなかった。
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