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第1部
第3話:口先から滴る猛毒④
しおりを挟む【side:ディア】
―――――――――
「えっ、本当に馬車じゃん! どうやって手に入れたの?」
友人のキズナとの対談を終えた翌日、私は主に馬車の事を報告した。
話を聞いた主は半信半疑みたいな様子だったが、実際に馬車を見ると大はしゃぎで近づいた。
馬車は年季が入っている中古のものなので、細かい傷が所々についているが、造りはしっかりしているので頑丈だ。よほど無茶なことをしなければ問題なく使えるだろう。
「アカツキが短期のアルバイトをしている間、私もいろいろ行動していたのです。その馬車はもう古い上に店頭に置き場がない関係上、破棄予定だったものを交渉して格安で買取できました」
「へー! こっちの馬は…」
主は大人しく手綱に繋がれてじっとしている馬を見つめた。
瞳にはキズナの能力である洗脳の魔法陣が浮かんでいるため、馬に“主が見ている時だけ目を瞑るように”と命令していた。キズナの能力は本当に優秀で、馬は本当にその場で目を瞑っていたが、
「…この馬、なんか魔法をかけてる?」
「おや、やはりバレましたか」
主は元々、強大な悪魔を封印する為に生まれた人間だ。悪魔の力の感知能力に関しては右に出る人間はまず居ない。遅かれ早かれ気付かれるとは思っていたが、馬の目を見ずとも一瞬で感知するとは素晴らしい能力だ。
「友人に動物を操れる者がいるので協力を仰ぎました。馬はちゃんと領地外の野生のものですよ。病気の事も検査済みです」
「んー? まあ各国の領地外なら野生の動物を捕食するのもペットにするのも許されているし、珍しくない事だから大丈夫かな…?」
言い訳が難しそうな事は素直に話した方が得策だと思い、友人の事を話した。
彼は今回の馬以外は人間しか洗脳した事がないが、広い目で見れば人間も動物なので嘘ではないだろう。野生の馬を選択して正解だったな。
主は魔法で操っている事を少し気にされていたが、馬は丁重に扱う、半年後には開放すると約束したら納得してくださった。
本当はキズナにも洗脳を解除出来ないが、そこは黙っておいた。
馬もどこかで購入する案も考えたが、私は馬の扱いは分からないし主もおそらく分からないだろう。
動物を躾けるのも手懐けるのも知識のない素人がやるのは危険だ。勝手に逃げられても困る。
命令を忠実に守ってくれる都合の良い馬となると、キズナの能力を利用させてもらう方が安全だと考えたのだ。その方が体格もいい良い健康な馬を選ぶことが出来たので、メリットは大きい。
餌や手綱などの器具、手入れ道具等もキズナが上手く手配してくれた。
半年は馬の世話について困る事はないだろう。
「有難うディア! これで移動がとても楽になるし、予定よりいろんなところに行けそうだ!」
あの世界を作るのにかなり労力はかかったが、友人も主も喜んでくださっているので頑張った甲斐があるというものだ。
笑顔で礼を言う主に思わずこちらも笑みが溢れた。
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