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第2部
第11話:千年世界の引き籠り魔女②
しおりを挟むどれだけ経ったのだろう。結構歩かされたし、なんだか色んな木の実を採らされた。
採ってきた植物はマナリーフの効果を身体に取り入れやすくするための成分だとか、錠剤にするための結合剤だとか…正直もうあまり覚えていない。とりあえず、必要な物全てそろえて縁側に戻った僕は、そのまま倒れるように前のめりになった。
「お疲れですね」
マナリーフを全て挽き終わっていたディアがお茶を持ってきてくれた。魔法でひんやり冷やしてくれたお茶が喉を通って全身にしみわたる感覚がする。どうやら僕はかなり喉が渇いていたらしい。
この家に最初に入れられた時小休憩はしていたが、今日はずっと歩きっぱなしなのだ。
そろそろ休みたい。
「休んどる場合ではないぞ童、先ほど持ってきたものを擦ってマナリーフの粉末と混ぜるのじゃ」
まだまだ休めないみたいだ…
イブリースさんはそう言うと僕の目の前にゴトンと食器のようなものを置いた。
大きなすり鉢と棒のセットだ。
今更文句も言えず、先ほど採ってきた木の実の皮を剥き、ナイフでなるべく細かく刻む。材料全てをすり鉢に入れてさらに細かくしていく。
これも疲れていないときなら案外楽しいかもしれないが木の実が思いのほか固く、身体が疲労を訴えている状態ではしんどかった。かなり細かくなるまで擦りつぶさないといけないみたいで、慣れない作業なのも相まってなかなかうまくいかない。
「私はあまり疲れていないので変わりましょうか?」
「う…ディア有難う…!」
「なんじゃディアボロス、その童には随分甘くてキモいのう」
イブリースさんはやれやれと言わんばかりに大きなため息を吐いた。
というかイブリースさん、キモいという言葉とか使うんだ…というツッコミもする元気もなく、僕はディアに任せて両手を広げて縁側に“大”の字になって寝転がった。
それからどれくらいたっただろうか。
あまり経っていないとは思うけど、ゴリゴリと材料を擦る一定のリズムを聞いていたら少しうとうとして眠っていたみたいだ。真横で、イブリースさんが擦りつぶされた薬品を見ている。
「うむ、これくらいで良いじゃろう」
僕も容器の中を覗く。
少し粘り気のある緑色の塊が出来上がっていた。粉っぽさもなく綺麗に擦れたようだ。
「これを型に詰めて乾燥させればマナの秘薬の完成じゃ。
日も暮れてきておる。これ以上時間をかけてられん。乾燥機も十分温まっておるから型に詰め次第投入していくぞ」
そういうとイブリースさんはプラスチックの小さなくぼみの付いた容器とスプーンを2本用意してくれた。先ほど休んで体力も戻ったし、すくって薬を型に詰めるくらいなら僕にも出来る。
空気が極力入らないようにゆっくり詰めていく。1cm未満のくぼみに流し込んでいくのは、それなりに集中力が必要だった。詰め終わったら即イブリースさんによって乾燥機の前に運ばれる。全ての薬を型に詰め終えると、緊張の糸が切れて一気に力が抜けた。
問題が無ければ数時間後には固まるらしい。
「うむ、とりあえず終了じゃ。2人ともお疲れ様じゃ」
全ての容器を乾燥機に設置し終えたイブリースさんはパチパチと手を叩いた。後は数時間待つだけで全て終わる。慣れない作業で疲れたが、まあいい経験になったかな。
「少し早いが夕飯の支度でもするかの。おぬしらも食べていくじゃろ?」
「えっ、良いんですか! 有難うございます」
遅めの朝食はしっかり食べたがそういえば昼食は食べていない。
お茶と茶菓子は頂いたがそれだけではお腹は膨れないのでペコペコだ。
なんの料理作ってくれるのかなぁと思っていたらイブリースさんは僕の方を向いて台所の方を指さしてきた。なんだろう、嫌な事を言われる気がする。
「童、台所を使う許可をやろう。美味い飯を期待しておるぞ」
なんかちょっとそうなる気はしてた!
してたけど、普通この流れで客にご飯作らせるとかある?
「マナの秘薬の材料提供及び製造の手伝い報酬じゃ。それが夕食なのだから安いものじゃろう」
「友のよしみで報酬なしで良いって言ってたじゃないですか!」
「おぬし、いつからわらわの友になったというのだ?」
「……」
「聞いておるか、友のおまけで着いてきた童」
「…はい、作ります」
これは何を言っても無駄だと思ったし、このまま口論を発展させても多分僕が負ける。僕はトボトボと台所に入った。
調理スペースも広めで一応ガスは通ってるみたいで作業しやすそうだ。
冷蔵庫にはいろんな種類の野菜と、肉類も少し入っていた。これはなんの肉なのだろう。鳥でも牛でもなさそうだ。
「それはウマ助86世だったものじゃ」
「その言い方嫌すぎる…」
確かに僕たちは命を頂いているが、先ほど生きている動物たちと戯れた後だとなんだか複雑な気持ちになってくる。
「先に手短につまみを作れ。ディアボロスと晩酌するのでな」
「うう…どうしてこんな目に…」
ディアの方をチラリと見ると、少し申し訳なさそうな顔をしていた。動くに動けないといった雰囲気で、多分イブリースさんに手伝わないよう釘でも刺されたのだろう。まあ普段僕がメインで料理しているし、今日もディアにはすごく助けられたので少し豪華なものでも作ろうかな。
先につまみを作れと言われたので、角切りベーコンとキノコの炒め物を作った。串で刺しているので片手で食べやすいだろう。出来立ての良い香りのする串焼きを持って行きながら、なんで僕は食べられないんだろうと思った。つまみ食いできる量を作れば良かったと若干後悔した。
二人の前に串焼きを置くとイブリースさんに『悪くない』と言われた。とりあえず気に入ってもらえたようだ。
僕自身もすごくお腹が空いていたのですぐさま台所に戻って調理を始めた。
居間ではイブリースさんとディアがお酒を片手に話し始めたようだ。
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