天田照貴の事故物件×心霊現象なんとかし〼

ベロニカ・サザンクロス

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第2章『ケース①視線を感じる部屋』

第17話「納骨衣装ケース」ケース①視線を感じる部屋9

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足長先輩の部屋に着いた俺たちは鍵を開けて中に入る。

「うわっ!!」

まず目に入ってきたのは青白く伸びる霧のようなもの。
それは例の押し入れに向かって続いていた。
前回来た時とは、明らかに違う。
まるで冷蔵庫のように冷えた部屋…
そして聞こえてくる女の子たちのうめき声。

「アマテラスさん…」

怯える文也。
無理もない。こんな霊気が充満した部屋…普通の高校生にはきついだろう。

俺は例の押し入れの中にしゃがんで入り、押し入れの壁板をぐっと押してみる。

 ガコッ

すると簡単に押し入れの壁板は向こう側に倒れ、ちょうど板の分の広さの小部屋があった。

「ん?衣装ケース?」

暗いけれども見たことのあるプラスチックの衣装ケースが何段も積んである。

暗くて中身が見えないので、俺はスマホのライト機能を押して衣装ケースを照らす。

「ふぁっ?!」

…何段も積み重なった衣装ケースの中に入っていたもの…
それは頭の中で絶対あると…思っていたものだった。


人骨…

「やっぱりあったのね」

となりに来たシロ様がそれを見て言う。

「何があるんですか?」

「見てはいけない文也君!」

俺の代わりに犬神くんが文也君が来るのを止めてくれた。

「…人の骨だ」

「えっ…」 

はっきりと言ってあげないと多分分からないだろう。

「…衣装ケースの中に人骨が詰まっているんだ」

衣装ケースにはガムテープが貼られ、そこにはマジックで文字が書いてあった。

頭、腕、足、胸、背骨、その他

合計六個の衣装ケースが押し入れの隠し扉の中にあった。

俺は衣装ケースを足長先輩の部屋の方に移動させ、押し入れの向こう側の板を押す。

すると簡単に板は外れ、向こう側の部屋が見えた。

「……」

4号室か6号室かわかんないけど……
俺はそっち側の部屋に出る。

押し入れの向こう側にはリビングのようなものがあり、そこにはテーブル…解体台代わりの頑丈そうなテーブルが置かれ……
ノコギリや包丁、様々な刃物がテーブルの近くにあるキッチンワゴンの上にある……

壁際には大きな銀色の業務用冷蔵庫が二つ並んでいた。
足長先輩の部屋とは違い、大きな寸銅が置かれたコンロがある。
この部屋全体が…まるでキッチン。
厨房だ。


……タスケテ……

……タスケテ……

そこら中から悲鳴が聞こえる。

カタカタと冷蔵庫が鳴り、ガタガタとコンロの上の寸銅が揺れた。

「みんな助けを求めている…」

「……」

ふと、天井を見上げると…なぜ霊たちがこの部屋に縛られているのかが…すぐに分かった。

天井一面にお札が貼られていた。
よく見れば…壁や冷蔵庫の扉、玄関のドアにも…

「どうやら最近まで、この部屋には強力な結界が張られていたみたいね」

シロ様がよろめきながらやってくる。

「一体誰がこんなことを…
大谷さんが、あの人が…結界を?」

開けなくてもわかるけど…冷蔵庫の中には…きっとバラバラにされた人体が入っているだろう。
嫌でもそっちに目がいって、中身が頭の中に浮かぶ。

「おえええ……」

文也君が足長先輩の部屋の押し入れの方で吐くのが聞こえた。

「文也君、外に出ていよう」

犬神くんが文也君を外に連れ出したのか、ドアが閉まる音がした。

この部屋、人肉カレー厨房にいるのは俺とシロ様だけ。

「あんたは大丈夫なの?」

「大丈夫ってわけじゃないけど……
どうすればいいと思う?シロ様」

予想はしていたけれども、あまりにも衝撃的すぎて考えが回らない……

「さっき感じた危険な気配はもう近くにいないみたい。
とりあえず、チェーンロックをかけましょ。
警察が来たなら開ければいいし、大谷が戻ってきたら、時間稼ぎにはなるから。
文也達に戻るように言って」

「わかった。そうしよう」

俺はこの部屋の玄関に行き、内側からチェーンロックをかける。
そしてすぐに文也君達を足長先輩の部屋に入れると内側からチェーンロックをかけた。

「寒いです…」

「これを被っていて」

俺は足長先輩の部屋の布団を取り出すと、文也君にかけてやる。
季節は夏に近い。
それでも霊気のせいでまるで冷蔵庫の中にいるようだ。

「こういう時は、現場を荒らしちゃいけないんだよな」

俺は犬神くんに聞いてみる。

「もちろん。
下手に触って、指紋をつけたらいけないよ。
捜査のかく乱をするのは絶対にダメだ」

「だよな…待つしか…ないよな…」



それから俺たちはただひたすらに待った。

どのくらい待ったかは分からないけど、結構な時間待ったと思う。

ポチ助の鳴き声と共にかっちゃんが来てくれて……

俺達は自分の知っていることををかっちゃんや応援で来た警察官達に部屋の外で話して…家までパトカーで送られた。



とてもとても疲れた。



まさか、初依頼が…こんな食人事件だったなんて……


その日のうちに社長から電話があり、しばらく休んでいいと言われた。
香里ちゃんや文也君もしばらく休むらしい。

それくらい今回のことはとても重く……

俺は1週間くらい、ただ寝て起きて飯を食っての繰り返ししかできなかった。











───

深夜の病院を……
私は足音を立てないように気をつけて歩く。

「シロコ」

「はいな」

私の式神、シロコは返事をすると音を立てずに扉を開く。

「……来ましたか……ボール坊ちゃん」

気に食わない名前で呼ばれたが、私は無視して病室のベッドに横たわる老人に話しかける。

「息子さんが捕まりました」

「……そうですか……やっぱり……ボール坊ちゃんの言う通りになりましたか……」

老人は目をつぶったままこちらに顔を向けると頷くように頭を下げた。

「頼みます。
最後の依頼料は弟から受け取ってください。
……長い間、お世話になりました」

私はその言葉を聞くと老人の腕から点滴の針を外した。

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この客は先代からの客だ。
私のことを生まれた時に父親に付けられた名であるボールと呼ぶ。

長い付き合いだから気に食わないその名で呼ぶことを咎めたりはせず、きちんと金も払ってくれたから助け舟を何度も出したが…優秀な彼とは違って、彼の息子はとても愚かだった。

今回の予知夢も手下に知らせに行かせたが、無駄だった。

「さようなら」

私はそっと彼の顔を上に向けてから病室の窓をシロコに開けさせ、霊獣化したシロコに乗って……彼の息子が今いる拘置所へ向かった。

大谷グループ会長の最期の願い……

彼の息子に、救いの死を
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