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第1章 カノジョが冷たい
第2話 照れるカノジョ
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最近塩対応の彼女が俺のカーディガンを抱き締めて眠っていた。しかも、なんかすごい寝言を言いながら。
とりあえず混乱して、自分の部屋へと入る。荷物を置いて深呼吸して……
いや、やっぱ落ち着くなんてできないわ。
「も、もう1回、行ってみる、か……」
混乱したまま呟く。
マンションにしては長めの廊下を歩き、リビングのドアを開け――
「や、やだなぁ一颯くん、恥ずかしい……」
天音の夢の中で、俺は一旦なにをしてるんだろうか。
相変わらずソファで寝落ちし、カーディガンをギュッと握り込む彼女を見て、心を無にする。
そろそろ悟り開けんじゃねぇかな、と思いつつ廊下に引き返し、思い返して、写真だけ撮って戻った。写真写りのいい天音は、やっぱり可愛かった。
☆
今日の晩御飯の当番は、天音だ。で、俺は皿洗い。天音は何事もなかったかのように、支度をしている。
トントン、とリズミカルに野菜を切る天音を横目に、ゲンドウポーズ。
……カーディガンの件について、どうやって切り出そう。
最近天音は俺に冷たい。
なにかしら幻滅されたのだろうとは思うが、俺には原因が分からない。
教えてほしいのだが、なにもないって言われるし。
それで秀真に相談したところでコレだ。
たぶん、まだ好きでいてくれているのだと思う。
じゃないとあんなことしないだろうし。
「マジでどうなってんだ……」
頭を抱えると、サラダを運んできた天音が不思議そうな顔をした。
そのまま晩御飯の準備を手伝い、「いただきます」と手を合わせる。どうやらメニューは、ハンバーグらしい。
「あ、あのさ……」
レタスをつつきつつ口を開くと、天音はお箸を口に咥えたまま首を傾げた。
「あの、最近なんかすごい、冷たいような気がするんだけど……」
「またその話? 気のせいだって言ってるじゃん」
勇気を出したものの、冷たい声色で跳ね除けられる。
『気のせい』
何度言われただろう。
「いや、だって最近無視してくるときあるし、昨日なんかずっと部屋にこもってたし……」
「気のせいだよ」
同じように返されて俺は箸を置いた。
天音はご飯へと手を伸ばす。
「だから俺のこと嫌いになったのかな、て思って……」
「嫌いじゃないよ」
「思って悩んでたら……悩んでたら……」
この後話すつもりの内容が内容だから、言い淀んでいると、無言のまま天音は味噌汁を飲んだ。カッ、と音を立てて、箸を置く。そしてスッ、と立ち上がった。
「悩んでたらなに? 私、宿題しなきゃいけないんだけど」
冷たく見下ろす。その凍てつくような視線に負けじと、俺はポケットからスマホを出した。天音が眉をひそめる。
「こんなの、見ちゃったんだけど」
表示されているのは、ソファでカーディガンを抱き込む天音。その写真を見て、途端に、かァァァ、と天音の顔が赤くなる。銀髪と対照的に、耳まで真っ赤だ。
「一体どういう……」
「こ、これは……」
動揺のあまりか、天音はわたわたと手を動かそうとしてそして――
お皿を落とした。
☆
結局割れた皿を2人で掃除して、ついでに俺がご飯を食べ終えてから、ダイニングテーブルで向かい合う。天音はまだ顔を赤らめたままだ。照れているのか、余計目を合わせてくれない。
「それでさ、話を戻すと、最近冷たいような気がしてて……」
「だから気のせいだって」
「いやでも……」
この期に及んでまで出てくる『気のせい』に本気で気のせいなような気がしてくる。
「も、もしかしたらちょっと冷たかったかもしれないけど。でもそれはさ、ちょっと距離が縮まりすぎた、ていうか、縮めすぎだと思われないかなって心配になったからで……だからえっと、その、同棲始めてからどう接すればいいかちょっと分かんなくなっちゃって……」
毛先をいじいじと弄りながら天音は言った。
つまりは、距離感の問題……?
しかも本当に、冷たく接していたのは無意識だったらしい。
「だからほんとに、嫌いじゃなくて……ほんとに、そう思わせてしまったなら、ごめんなさい……」
「分かった。俺も距離感縮めすぎたかもしれない。これからゆっくり、縮めていこう」
泣きそうな声に、大きく頷く。
天音は涙を浮かべた目をバッ、と上げた。
「あ、ありがとう」
少し微笑んで天音は言う。釣られて俺も微笑むと、彼女はちょっと笑って、宿題取ってくるね、リビングでやってもいいかな……? と自室へ向かった。その背中を見送り、ついでに自分も宿題を取ってこようと部屋に向かう。
ていうかリビングちょっと寒かったよな。クーラー消そうか……いやでも天音はそうでもなさそうだしパーカーを……
いつもパーカーがかけてあるロッカーに手を伸ばして、はっと気づく。
そういやパーカー、もう1個持ってなかったっけ……?
ていうかカーディガン、返してもらったっけ……?
そもそも結局カーディガンの件はどうなったんだ……?
とりあえず混乱して、自分の部屋へと入る。荷物を置いて深呼吸して……
いや、やっぱ落ち着くなんてできないわ。
「も、もう1回、行ってみる、か……」
混乱したまま呟く。
マンションにしては長めの廊下を歩き、リビングのドアを開け――
「や、やだなぁ一颯くん、恥ずかしい……」
天音の夢の中で、俺は一旦なにをしてるんだろうか。
相変わらずソファで寝落ちし、カーディガンをギュッと握り込む彼女を見て、心を無にする。
そろそろ悟り開けんじゃねぇかな、と思いつつ廊下に引き返し、思い返して、写真だけ撮って戻った。写真写りのいい天音は、やっぱり可愛かった。
☆
今日の晩御飯の当番は、天音だ。で、俺は皿洗い。天音は何事もなかったかのように、支度をしている。
トントン、とリズミカルに野菜を切る天音を横目に、ゲンドウポーズ。
……カーディガンの件について、どうやって切り出そう。
最近天音は俺に冷たい。
なにかしら幻滅されたのだろうとは思うが、俺には原因が分からない。
教えてほしいのだが、なにもないって言われるし。
それで秀真に相談したところでコレだ。
たぶん、まだ好きでいてくれているのだと思う。
じゃないとあんなことしないだろうし。
「マジでどうなってんだ……」
頭を抱えると、サラダを運んできた天音が不思議そうな顔をした。
そのまま晩御飯の準備を手伝い、「いただきます」と手を合わせる。どうやらメニューは、ハンバーグらしい。
「あ、あのさ……」
レタスをつつきつつ口を開くと、天音はお箸を口に咥えたまま首を傾げた。
「あの、最近なんかすごい、冷たいような気がするんだけど……」
「またその話? 気のせいだって言ってるじゃん」
勇気を出したものの、冷たい声色で跳ね除けられる。
『気のせい』
何度言われただろう。
「いや、だって最近無視してくるときあるし、昨日なんかずっと部屋にこもってたし……」
「気のせいだよ」
同じように返されて俺は箸を置いた。
天音はご飯へと手を伸ばす。
「だから俺のこと嫌いになったのかな、て思って……」
「嫌いじゃないよ」
「思って悩んでたら……悩んでたら……」
この後話すつもりの内容が内容だから、言い淀んでいると、無言のまま天音は味噌汁を飲んだ。カッ、と音を立てて、箸を置く。そしてスッ、と立ち上がった。
「悩んでたらなに? 私、宿題しなきゃいけないんだけど」
冷たく見下ろす。その凍てつくような視線に負けじと、俺はポケットからスマホを出した。天音が眉をひそめる。
「こんなの、見ちゃったんだけど」
表示されているのは、ソファでカーディガンを抱き込む天音。その写真を見て、途端に、かァァァ、と天音の顔が赤くなる。銀髪と対照的に、耳まで真っ赤だ。
「一体どういう……」
「こ、これは……」
動揺のあまりか、天音はわたわたと手を動かそうとしてそして――
お皿を落とした。
☆
結局割れた皿を2人で掃除して、ついでに俺がご飯を食べ終えてから、ダイニングテーブルで向かい合う。天音はまだ顔を赤らめたままだ。照れているのか、余計目を合わせてくれない。
「それでさ、話を戻すと、最近冷たいような気がしてて……」
「だから気のせいだって」
「いやでも……」
この期に及んでまで出てくる『気のせい』に本気で気のせいなような気がしてくる。
「も、もしかしたらちょっと冷たかったかもしれないけど。でもそれはさ、ちょっと距離が縮まりすぎた、ていうか、縮めすぎだと思われないかなって心配になったからで……だからえっと、その、同棲始めてからどう接すればいいかちょっと分かんなくなっちゃって……」
毛先をいじいじと弄りながら天音は言った。
つまりは、距離感の問題……?
しかも本当に、冷たく接していたのは無意識だったらしい。
「だからほんとに、嫌いじゃなくて……ほんとに、そう思わせてしまったなら、ごめんなさい……」
「分かった。俺も距離感縮めすぎたかもしれない。これからゆっくり、縮めていこう」
泣きそうな声に、大きく頷く。
天音は涙を浮かべた目をバッ、と上げた。
「あ、ありがとう」
少し微笑んで天音は言う。釣られて俺も微笑むと、彼女はちょっと笑って、宿題取ってくるね、リビングでやってもいいかな……? と自室へ向かった。その背中を見送り、ついでに自分も宿題を取ってこようと部屋に向かう。
ていうかリビングちょっと寒かったよな。クーラー消そうか……いやでも天音はそうでもなさそうだしパーカーを……
いつもパーカーがかけてあるロッカーに手を伸ばして、はっと気づく。
そういやパーカー、もう1個持ってなかったっけ……?
ていうかカーディガン、返してもらったっけ……?
そもそも結局カーディガンの件はどうなったんだ……?
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