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意外なこと
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大樹の部屋を大樹の後に続いて入る。8畳程のフローリングの部屋に通され、待っているとバスタオルを渡された。髪の毛をタオルで拭いて濡れた上着を脱いでハンガーに掛けさせて貰う。そしてほっと一息をつく。この前は大樹の看病でばたばたしていたからゆっくり見ることが出来なかった部屋の中を見渡した。
ベッド、テレビ、備え付けのクローゼットと本棚、机とローテーブル、必要最低限のものしかない部屋はやっぱり大学時代の質の良い物で揃えた家具とは違う物だった。でも部屋自体は比較的綺麗に保たれている。
たいした物は出せないと言いながらペットボトルのお茶を入れたコップを渡してくれる。お礼を言ってお茶を飲みつつまずは今の大樹の情報収集だと意気込んだ。
「染谷さんのお部屋って綺麗に片付いてますね。片付けに慣れてる感じで。一人暮らし長いんですか?」
「まあな」
「彼女さんはいらっしゃるんですか?」
「女が入ってくるような部屋だと思うか?それに俺はゲイだから入ってくるとしても男だな。まあ、相手がいるわけでもないが…」
俺は大樹がバイでなくゲイだと言い切ったことに少なからず驚きを隠せなかった。だって学生時代は…
「驚いたか?今時珍しくはないと思うがな。男だからと見境なく襲ったりしないが心配か?」
俺が驚いたことを別の意味に捉えたらしい大樹は皮肉げな顔をした。
「いいえ、驚いたりしていないし、心配もしていませんよ!」
慌てて誤解を解こうとする。
「ああそう」
大樹は興味なさそうに一言発すると黙ってしまった。でも大樹には現在恋人はいないらしい。これはいい情報だ。
「お仕事って何かされてるんですか?」
「根掘り葉掘り聞くな、あんたは」
「色々知りたいんです、あなたのことを」
「あれだよ、あれ。あんたのお陰で途中で放ったらかしだ」
大樹が指を指した先には開いたままのPCがあった。
在宅の仕事なのかなと思い何気なく見る。すると意外なものが目に入ってきた。
「えっ?プログラミングしてるんですか?何これ?…pythonじゃないですか!アプリでも作ってるんですか?凄い!ここ3.4年でしょ、pythonって。俺JAVA系なら出来るんだけど…V.Bとか…いやドットネットも行けるかな」
大樹、昔はあんまり興味なさそうだったのに。
俺自身他にもやりたいことがあってちょっと離れていたこともあり久々に見た最新のプログラムと大樹がプログラミングしていたことに興奮してはしゃいでしまった。
「名東大学だって言ってな。理工学部にでも入ってるのか?」
「1回しか言ってないのに覚えてくれてたんですか?」
なんだか嬉しい。
「いや、俺は教育学部ですよ。だけどプログラムには昔から興味はあって…。いいなーpython、ちょっと構文見ていいですか?」
「オブジェクト思考…概念さえあれば日本語を知っている状態で方言を覚えるのと同じようなものだ、構文くらいすぐ覚えられるだろう」
「ふふ、そうですね」
「…なんかあんたはイメージが定まらないな。黙っていれば女がわらわら寄ってきそうなのに中身はお節介な近所のおばさんか子どものようだ」
「お節介!子ども!!ひどい!!それに女の子わらわら寄ってきませんよ!男子校だったし。時々知らない他校の女の子が駅で待っていて告白してくれるくらいで…」
「バイトにしてもそうだ。その顔で個人宅に一人で配達に行ったら面倒なことにならないか?」
「俺を指名してくれるお客さんとか、SNSやってるんだったら繋がりたいって言ってくる人はいたけど…それくらいですよ」
「もう少し自覚した方がいいぞ、自分が悪くない顔だってことを」
「え、わかってますよ、結構かっこいいでしょ?」
大樹はわかってないなこいつって顔をしてる。なんだか納得いかない。
でもこんな風に大樹と何気ない話を出来たのは心から嬉しかった。前世の俺はこんなにベラベラしゃべってはいなかったし、自分の気持ちをあまり表に出せないタイプだった。だけどふたりきりのとき、他愛もない会話をしたり、特に何も話さなくても一緒にいるだけで満たされるそういう心地よさを感じていたことを思い出した。
「バイトは内勤にしてもらうなり考えた方がいいかもしれないぞ。配達に拘る理由でもなければ」
ピザ屋のバイトにしたのは前世でやっていたから慣れているかなと思って、配達に関しては、前世ではインストアだったから今回はちょっとデリバリーもやってみたいという感じでたいした理由はない。心配はいらないと思うけど「そうですね」と言っておいた。
後、気になっていたんだがと大樹。
「さっきから頻繁にバイブ音が聞こえてくるが、何か連絡が来てるんじゃないか?反応しなくて平気か?」
「うーん、多分バイトの先輩だと思うんでいいかなって思って」
「仕事ではない?」
「はい、関係ないと思います。LINE交換してから最初はそうでもなかったんです、でも段々こっちが返信しなくてもどんどん送ってくるようになって…いちいち返信するのも大変だし、夜にスタンプでも送っておこうかなって思ってます」
「…バイト先自体変えた方が良くないか?」
何言ってるんですか、やっと慣れてきたところですけど…。
ベッド、テレビ、備え付けのクローゼットと本棚、机とローテーブル、必要最低限のものしかない部屋はやっぱり大学時代の質の良い物で揃えた家具とは違う物だった。でも部屋自体は比較的綺麗に保たれている。
たいした物は出せないと言いながらペットボトルのお茶を入れたコップを渡してくれる。お礼を言ってお茶を飲みつつまずは今の大樹の情報収集だと意気込んだ。
「染谷さんのお部屋って綺麗に片付いてますね。片付けに慣れてる感じで。一人暮らし長いんですか?」
「まあな」
「彼女さんはいらっしゃるんですか?」
「女が入ってくるような部屋だと思うか?それに俺はゲイだから入ってくるとしても男だな。まあ、相手がいるわけでもないが…」
俺は大樹がバイでなくゲイだと言い切ったことに少なからず驚きを隠せなかった。だって学生時代は…
「驚いたか?今時珍しくはないと思うがな。男だからと見境なく襲ったりしないが心配か?」
俺が驚いたことを別の意味に捉えたらしい大樹は皮肉げな顔をした。
「いいえ、驚いたりしていないし、心配もしていませんよ!」
慌てて誤解を解こうとする。
「ああそう」
大樹は興味なさそうに一言発すると黙ってしまった。でも大樹には現在恋人はいないらしい。これはいい情報だ。
「お仕事って何かされてるんですか?」
「根掘り葉掘り聞くな、あんたは」
「色々知りたいんです、あなたのことを」
「あれだよ、あれ。あんたのお陰で途中で放ったらかしだ」
大樹が指を指した先には開いたままのPCがあった。
在宅の仕事なのかなと思い何気なく見る。すると意外なものが目に入ってきた。
「えっ?プログラミングしてるんですか?何これ?…pythonじゃないですか!アプリでも作ってるんですか?凄い!ここ3.4年でしょ、pythonって。俺JAVA系なら出来るんだけど…V.Bとか…いやドットネットも行けるかな」
大樹、昔はあんまり興味なさそうだったのに。
俺自身他にもやりたいことがあってちょっと離れていたこともあり久々に見た最新のプログラムと大樹がプログラミングしていたことに興奮してはしゃいでしまった。
「名東大学だって言ってな。理工学部にでも入ってるのか?」
「1回しか言ってないのに覚えてくれてたんですか?」
なんだか嬉しい。
「いや、俺は教育学部ですよ。だけどプログラムには昔から興味はあって…。いいなーpython、ちょっと構文見ていいですか?」
「オブジェクト思考…概念さえあれば日本語を知っている状態で方言を覚えるのと同じようなものだ、構文くらいすぐ覚えられるだろう」
「ふふ、そうですね」
「…なんかあんたはイメージが定まらないな。黙っていれば女がわらわら寄ってきそうなのに中身はお節介な近所のおばさんか子どものようだ」
「お節介!子ども!!ひどい!!それに女の子わらわら寄ってきませんよ!男子校だったし。時々知らない他校の女の子が駅で待っていて告白してくれるくらいで…」
「バイトにしてもそうだ。その顔で個人宅に一人で配達に行ったら面倒なことにならないか?」
「俺を指名してくれるお客さんとか、SNSやってるんだったら繋がりたいって言ってくる人はいたけど…それくらいですよ」
「もう少し自覚した方がいいぞ、自分が悪くない顔だってことを」
「え、わかってますよ、結構かっこいいでしょ?」
大樹はわかってないなこいつって顔をしてる。なんだか納得いかない。
でもこんな風に大樹と何気ない話を出来たのは心から嬉しかった。前世の俺はこんなにベラベラしゃべってはいなかったし、自分の気持ちをあまり表に出せないタイプだった。だけどふたりきりのとき、他愛もない会話をしたり、特に何も話さなくても一緒にいるだけで満たされるそういう心地よさを感じていたことを思い出した。
「バイトは内勤にしてもらうなり考えた方がいいかもしれないぞ。配達に拘る理由でもなければ」
ピザ屋のバイトにしたのは前世でやっていたから慣れているかなと思って、配達に関しては、前世ではインストアだったから今回はちょっとデリバリーもやってみたいという感じでたいした理由はない。心配はいらないと思うけど「そうですね」と言っておいた。
後、気になっていたんだがと大樹。
「さっきから頻繁にバイブ音が聞こえてくるが、何か連絡が来てるんじゃないか?反応しなくて平気か?」
「うーん、多分バイトの先輩だと思うんでいいかなって思って」
「仕事ではない?」
「はい、関係ないと思います。LINE交換してから最初はそうでもなかったんです、でも段々こっちが返信しなくてもどんどん送ってくるようになって…いちいち返信するのも大変だし、夜にスタンプでも送っておこうかなって思ってます」
「…バイト先自体変えた方が良くないか?」
何言ってるんですか、やっと慣れてきたところですけど…。
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